ミスター・ウィルソン
ある晩、町の博物館で展示されていた貴重な宝石が盗まれました。
この宝石は美しさと歴史的な価値で知られ、多くの人々がそれを見に訪れていました。
盗難事件が明らかになると、博物館の従業員たちは大騒ぎ。
警察も駆けつけ、博物館は一夜にして犯罪現場に変わりました。
翌日には、マスコミのカメラクルーと好奇心旺盛な野次馬も博物館に集まり、大騒ぎになりました。
警察は防犯カメラの映像や証言を集めましたが、犯人の手がかりは見当たりません。
何より野次馬が多すぎて、捜査がなかなか進まなかったのです。
……その日の午後。
事件はさらに驚きの展開を迎えます。
博物館の管理人であるミスター・ウィルソンが現れ、宝石が実は贋作だったことを告げたのです。
彼は本物の宝石を秘密裏に保管し、贋作を展示していたのです。
「これで一件落着ですね」とミスター・ウィルソンは言いました。
「本物は無事だったのたから、もう犯人を探す必要はないでしょう?」
しかし、従業員や警察官、そして野次馬たちは一斉に突っ込みました。
「そんなわけねーよ!」と。
ですがミスター・ウィルソンも引きがりません。
「私が終わりだと言ったら終わりです。なぜなら被害者は私だからです」
そう言って事件を終わらせようとします。
怪しい……。
そう思ったのか、警察も引きがりません。
「あなたが何を言っても終わりませんよ。なぜなら被害者は博物館。公立の建物です。あなたの私物ではありませんから」
その言葉に怒り出すミスター・ウィルソン。
「終わりだと言ったら終わりだ!」
と、ついには暴れ出します。
あまりの剣幕に警察は彼を取り押さえ、公務執行妨害で連行していきました。
そして……。
事件の真相が明らかになります。
この盗難事件はミスター・ウィルソンの自作自演だったのです。
「従業員の意識改革をしたかった」
ミスター・ウィルソンはそう告白しました。
本物を盗んだら罪になる、だから贋作を盗もうと思ったそうです。
ですが、贋作でも盗難は盗難。
ミスター・ウィルソンは博物館を解雇されましたとさ。
おしまい。
〈了〉
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