本当に半地下はまだマシなのか?韓国から新たな若き才能が登場『ビニールハウス』【映画レビュー】
★★★★☆
鑑賞日:3月20日
劇 場:伏見ミリオン座
監 督:イ・ソルヒ
出 演:キム・ソヒョン
「半地下はまだマシ」
そんな身も蓋もないキャッチコピーが付いた映画が韓国から現れた。
実際にそうも思えてしまうくらいに、この映画の主人公ムンジョンは元から厳しい暮らしを強いられた上、更に酷い状況にどんどんと追いやれていく。
家はビニールハウス。農業で使われている、あのビニールハウスである。
息子は少年院。
母親は入院中。
盲目の夫と認知症の妻の老夫婦の介護の仕事で生計を立てている。
夫は目は見えはしないものの常識的で優しい人物である。
一方、妻は認知症の症状が酷くムンジョンに対し暴力的な言動や振る舞いをみせる。
肉体関係を持つ男もいる。
この男がメンタルケアのセミナーで出会う少女とも絡みがあり厄介である。
ムンジョンの唯一の希望は、お金を貯めて引っ越しをして、息子が少年院を出所したら一緒に暮らすこと。
しかし、あることをきっかけにムンジョンの人生は転がり落ちるように絶望的な状況に追い込まれていく。
以下、ネタバレあり
まず、介護をしている老夫婦の妻が洗面所で暴れた末、後頭部を打ち付け死亡。
ここでムンジョンが警察に電話するか救急車を呼べば、さほど問題にならずに済んだのだが、息子との生活を夢見るあまり留まる。遺体を布団でグルグル巻きにして、例のビニールハウスに隠す。
老夫婦の夫が目が見えないことをいいことに、よりによって実母を死んだ妻の代わりに住まわすことに。この辺りから、文字通り目も当てられない展開に陥っていく。
終盤、決定的なことが3つも立て続けに起こる。
どれもが、そこまでしなくてもと思うが、そうせざるをえない状況まで追い詰められてしまった故の末路である。
映像としては最後まで見せない。
とんでもない切れ味でスパッと終わらせる。
特にエンディングのキレッキレ具合いは凄まじいものがある。
驚くべきことに、この映画の監督・脚本・編集を手掛けたイ・ソルヒは若干29歳。これが初の長編作品だ。
よくもまあ、こんなヘビーな題材を見事に仕上げられたものだ。
韓国からまたしても注目すべき才能が現れた。
イ・ソルヒ監督、次回作も追っていきたい。
(text by President TRM)
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