【少しネタバレあり】愚かなるものたちよ、私は成長する『哀れなるものたち 』【映画レビュー】
★★★★☆
鑑賞日:2月1日
劇 場:109シネマズ名古屋 シアター3
監 督:ヨルゴス・ランティモス
出 演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、 ウィレム・デフォー
監督ヨルゴス・ランティモス
ギリシャ出身
監督作は、
『ロブスター』
『聖なる鹿殺し』
『女王陛下のお気に入り』
ストレンジでアクの強い作風で知られる監督である。
本作は原作があるとは言え、非常にランティモスらしい一作に仕上がっている。
自殺した主人公は、お腹の中の子供の脳を移植され蘇生する。
見た目は大人、中身は子供。
つまり、逆コナン状態である。
中身は子供なので欲望のままに行動する。
家の皿を割り、不味い食べ物は吐き出し、感じたことをそのまま口にする。
この辺りまでは、まだかわいい方でコメディとして面白い。
ただ、もう少し成長をすると・・・
そう、この映画はR18+と年齢制限がかかっている。
見た人には分かるがエマ・ストーンによる性的シーンがかなり多いのだ。
一文無しになった末に、実際にベラが働くのはパリの娼婦の館である。
この館で男の愚かな願望が描かれるシーンの連続は失笑からの、同じ男性として物悲しいものがある。
ベラはどんどん成長していく。
旅で出会う人達が彼女を成長をさせていく。
船の貴婦人、娼婦の館の主と同僚、夫となるマックス。
ベラが成長をすると都合の悪い人間もいる。
その筆頭がベラを旅に連れだした張本人、弁護士のダンカン(マーク・ラファロ)である。
ベラを性的に搾取し続け、トロフィーワイフ的に周囲に自慢をする。
レストランでは、適当な3つの言葉だけ喋っていればいい、とここでも制限をする。
美しいが中身がない人間であることを強いる。
ベラが読んでいた本を、海に放り捨てるシーンは象徴的だ。(2冊も!)
自宅に閉じ込められ行動を制限された女性が、外に飛び出し世界を知ることにより、知見を得て成長し自己を確立していく。
そう考えると、プロットが近い映画として『塔の上のラプンツェル』を挙げてもいいのではないか。
自由を制限し、いいように搾取してきた人間達への復讐の物語でもある。
オチはいかにもランティモスらしいユーモアが効いたものであるが、前世からの2世代間の復讐と考えるならここまでやってもいい。
医者になるという希望を持ったベラにとっても実践的な一歩であった。
それにしても、このかなりキワキワな作品がアカデミー賞に11部門もノミネートさているのは凄い。
普段あまり映画を見ない人が評判を聞いて足を運んでみたら、絶句するのではないか。
アート性とアクの強さを残しながら、大きく開かれた作品を完成させたヨルゴス・ランティモス。やはり只者ではない。
(text by President TRM)
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