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取得は任意なのに、マイナ保険証利用促進に887億円の補正予算!?

武見厚生労働大臣は4月9日の会見で、5月から7月までの3か月間を集中的にマイナ保険証の利用促進を図る期間とし、利用者を増やした医療機関に対して最大で20万円を支給する方針を明らかにしました。医療機関への支援だけで、令和5年度補正予算として217億円を計上しています。マイナ保険証の利用促進に向けて計上されたその他の予算についても、資料を掘り起こしました。


マイナ保険証の利用促進

会見の概要は、下記のページで見られます。

武見大臣会見概要
(令和6年4月9日(火)9:23~9:40 省内会見室)

大臣:
 まず「マイナ保険証利用促進集中取組月間」についてご説明します。ご承知のとおり、本年12月2日に健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行します。こうした中、直近3月のマイナ保険証の利用件数は1,010万件と、初めて1,000万件を超え、利用率は5.47%と、引き続き増加傾向となっています。より一層の利用促進が課題となっています。このため、今月25日に開催される日本健康会議において、医療機関・保険者・経済界の代表が集い、経済産業大臣とデジタル大臣に加え私も出席し、「マイナ保険証利用促進宣言」を行い、これを皮切りに本年5月から7月までを「マイナ保険証利用促進集中取組月間」として、医療DXのパスポートとなるマイナ保険証の利用促進に全力をあげて取り組みます。集中取組月間においては、医療機関等におけるマイナ保険証利用促進のための支援金について、この期間における利用人数の増加に応じて最大10万円、病院は20万円を支給する一時金へと見直すとともに、医療機関・薬局に対し、この一時金の条件として「医療機関等の窓口における新たな共通ポスターの掲示」や「来院患者への声掛けとマイナ保険証の利用を求める新たなチラシの来院患者への配布」などを呼びかけます。また、新聞広告やテレビのCMなどあらゆるメディアを動員して、集中的な広報を展開していきます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00685.html

一時金の詳細は、下記のページで公開されています。


【資料1】マイナ保険証の利用促進等について


https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001243199.pdf


https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001243199.pdf

上記に出てくる「日本健康会議」は、経済産業省と共同で 「健康経営優良法人」というのを認定しているようです。

「健康経営優良法人」に認定されると、「健康経営優良法人」ロゴマークの使用が可能となるほか、自治体や金融機関においてさまざまなインセンティブ(補助金や企業活力強化貸付)が受けられるそうです。

「令和3年度 健康経営事例集」(全国健康保険協会滋賀支部)を見ると、こんな取り組みも紹介されていました。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shiga/kenkou/r3kenkoukeiei.pdf

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shiga/kenkou/r3kenkoukeiei.pdf


ライブ配信があるようです。

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001243199.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001243199.pdf

7月までは医療機関で「マイナ保険証はお持ちですか?」と、ポイントカードのようにいちいち聞かれることになるのでしょう。

このチラシでは、利用しないといけないような印象です。チラシには「12月2日時点で有効な保険証は最大1年間有効です」と書かれていますが、とても小さい文字。これについては、下記の記事で取り上げました。


https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001243199.pdf

マイナ保険証利用促進のための医療機関への支援、令和5年度補正予算は217億円!マイナンバーカード取得は任意なのに、こんなにお金を使っています。

マイナ保険証関連全体で、877億円もの予算が計上されていました。

【資料4】令和5年度補正予算案(保険局関係)の主な事項について

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001172605.pdf

これについては、全国保険医団体連合会も記事にしていました。
「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けたシステム改修等経費」で367億計上していることについて、記事から一部引用します。

「資格情報のお知らせ等の送付」は、加入者へ資格情報のお知らせ等を送付する郵券代を含んだ必要です。資格情報のお知らせはマイナ保険証保有者(7000万人)に送付する経費となります。マイナトラブルを防ぐためにマイナ保険証保有者にわざわざ健康保険証と同内容の券面をもう1枚持たせることになりました。健康保険証があれば不要なコストであり、資格情報のお知らせは毎年送付する保険者もあるため補正予算の1回限りで済むのか大いに疑問が残ります。

以前の記事でも取り上げましたが、マイナ保険証には被保険者等記号・番号・枝番、保険者番号・保険者名、適用開始年月日(国民健康保険)、発効期日(後期高齢者医療制度)、資格取得年月日(被用者保険)、交付年月日などが書かれていないので、「資格情報のお知らせ」が必要になるのです。


https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001137913.pdf

健康保険証なら不要だったこの紙を送る費用も必要になるということです。この紙が必要なら、「一体化」と言えるのでしょうか。


デジタル庁のQ&Aには、マイナ保険証の取得について下記のように書かれています。


Q3 マイナンバーカードと健康保険証を一体化し、紙の健康保険証を2024年秋めどに廃止すると聞きました。マイナンバーカードの取得は任意だと思っていましたが、必ず作らなければいけないのでしょうか。施設に入所している高齢者などマイナンバーカードを取得できない者は保険診療を受けることができなくなるのですか。

A3
マイナンバーカードは、国民の申請に基づき交付されるものであり、この点を変更するものではありません。また、今までと変わりなく保険診療を受けることができます。
従来の保険証ではなく、マイナンバーカード1枚で受診していただくことで、これまでできなかった、診療記録などをその場で引き出すことができるようになり、データに基づいたより良い医療を受けられるようになります。
このため、デジタル庁・総務省中心に、全力をあげて、施設に入所している方なども含め、すべての方々がマイナンバーカードを持ちうるように努めてまいります。

https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/faq-insurance-card

「国民の申請に基づき交付されるもの」だと言っているのに、「すべての方々がマイナンバーカードを持ちうるように努めてまいります」というおかしな回答です。

なぜこれほどのお金を費やして、強引に切り替えようとするのでしょうか。

<参考>

令和5年8月8日
デジタル庁 「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」最終とりまとめ