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バタフライマン 第17話 大鴉、堕ちる。
レイブンはついにブルーシャーク以外の部下を全て失った。もはや玉座にふんぞり返っている場合ではなかった。
「吾輩は行くぞ。」
レイブンは立ち上がった。
「ご武運を祈っております。レイブン様。」
ブルーシャークは一言そう言った。彼女はレイブンの勝利を確信していた。彼を神格化していたからだ。彼の絶対的な強さの前には「繭」の戦士もかなうはずがない。それが彼女の揺らぐことのない確信だった。
(まずは貴様から
バタフライマン 第11話 悲しみの海の闘士
南の海に浮かぶマルテルーズ島にジョゼという漁村があった。藁でできた家が立ち並び、島民のほとんどが漁業に従事している。ここにヒアワサ・ペズという青年がいた。ヒアワサは村でも評判の銛の名手で、その腕前は百発百中であった。今日も彼は魚籠の中にどっさりと入ったブダイやハタを得意げに持って海から帰って来た。桟橋に上がると、筋肉質な坊主頭の男が笑顔でヒアワサに話しかけた。
「今日も大漁だな。ヒアワサ。」
「
バタフライマン 第10話 先代蝶戦士の初陣
メタモル・シティが新都市計画によって開発される何十年も前、この地はアケビという農村であった。畑と農家が点在する何の変哲もない穏やかな村で、店と言えば個人経営の商店のみ。その中心の一際立派な西洋風の屋敷が、カラスマ家であった。そこで暮らしていたのが。若き日のカラスマ・キイチである。彼の父にしてミドリの祖父、カラスマ・カヅキは大変尊敬を集めていた人格者であり、地主にして莫大な資産を持ちながらそれを私利
もっとみるバタフライマン 第9話 死の砂嵐
果てしなく続く砂の大地―ナティフ砂漠にある小さな街、アトラク。ここに不気味な影が忍び寄っていた。カンドゥーラを纏い、手には錫杖を持った色黒で長身の男。分厚い唇の間からは整った大きな歯が見えており、葉巻の端をくちゃくちゃと噛んでいた。男はアトラクの街を見据えると、錫杖で地面を突いた。すると地面の砂がごうごうと音を立てて巻き上がった。砂は空に向かって高く舞い、巨大な砂の竜巻となった。
「行け。」
砂
バタフライマン 第7話 密林の殺人鬼
「ウチらもう抜けるわ。アンタみたいなクソ無能カラスに付き合ってらんないから。」
「あとは俺たちの好きにさせてもらうぜ。」
レイブンの巣では、度重なる同僚の敗北に嫌気がさしたフィドラーとグラスホッパーが群れを出ようとしていた。
「愚か者どもめ。吾輩の傘下から抜けて後悔しても知らぬぞ。」
「じゃあな!もうてめぇの世話になんかならねぇぞ。」
「せいぜいそのカマボコババアとでもいちゃついてれば?」
「な
バタフライマン 第6話 三戦士集結
メタモル・シティ各地の男性のもとに手紙が届いた。蛇革模様の封筒に包まれた手紙の内容はこのようなものだった。
「あなたをずっとお慕いしていた者です。今夜7時、この手紙を持って〇〇ビルの屋上に来てください。待っています♡。」
これを見た男たちは全員なぜかこのいかがわしい手紙を信用してしまった。その手紙には男たちを魅了するものがあったのだ。そして彼らは手紙の文面通りビルの屋上に集まった。彼らは皆困惑
バタフライマン 第2話 吸血魔
メタモル・シティの高層ビルの屋上で、望遠鏡で階下の道行く人を見ている怪しい男がいた。男は長身痩躯で顔面蒼白、白黒の縞のタキシードを纏っていた。
「私の目にかなう者は中々いませんねぇ。この私が血を頂くに相応しい、美しい容姿を持つ者は‥」
ふと、男の目に、会社の屋上で一人くつろいでいる整った顔の男性が入った。
「おやおや、これはこれは・・」
男の目が複眼に変わる。
「では、頂くとしましょう。」