【会期変更】緊急事態宣言発令のため4/25(日)〜5/11(火)の間、展覧会を中断し、会期を5/29(土)まで延長します。
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『山水郷のデザイン - 自立共生のためのナラティブ』を開催します。会場は丸の内仲通りにあるGOOD DESIGN Marunouchi

山水郷って聞き慣れない言葉ですよね。山水郷とは山水の恵み豊かな地域のこと。さんすいごうと読みます。実は、この言葉、私とともに本展ディレクターを務めた、井上岳一さんによる造語です。井上さんが一昨年に上梓した『日本列島回復論―この国で生き続けるために―』(新潮選書)のなかで提唱した言葉です。

井上さんは、この本で日本の明治以来の中央集権体制の限界を論じ、山水郷にこそ日本の未来の切り拓く鍵があると論じています。それが机上の空論なのか、本当にそうなのか、じゃあ実際どんなことをすれば日本の未来を切り拓くことができるのか──、それらを検証し山水郷の可能性を世に問うてみようというのが本展の主旨です。

本展では３つの地域を取り上げます。岡山県西粟倉村、長崎県雲仙市小浜温泉、福井県鯖江市。

西粟倉は、森林活用のトップランナーとして知られる村です。百年の森構想を掲げ、森林を中心とした新たな循環型経済の仕組みづくりをめざす村に移住者が集い、いまや移住者のための空き家が足りないほどといいます。循環型経済を回す基盤となるのが「開かれたコモン」。西粟倉･森の学校の牧大介さんがその思想と実践を語ってくれています。

鯖江は、全国一のメガネ産地であり、そのほか近辺に越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼・繊維の７産地が集積するものづくりの町です。鯖江の伝統的な産業に新しい息吹を吹き込んだのがTSUGIの新山直広さん。ものづくりの現場を公開するイベントRENEWなどを仕掛けた新山さんに刺激され、デザイナーやクリエイターだけでなく、この町でなんかやれるぞと、さまざまな若者が移住してきています。

そうした若者が新山さんは地元の人でもなくデザイナーでもなく職人でもない人ということで「じゃない人」と呼びます。鯖江のコーナーではその「じゃない人」にフォーカスします。

小浜は、昨年急逝されたデザイナー城谷耕生さんがイタリアから帰国後暮らした町です。城谷さんを慕って、多くの若者が小浜に移住してきました。また、もともと温泉地ということもあり、外から来た人に寛容な土地柄で、水と地熱の恵みに魅せられてこの地に来た人たちもいます。そうした人も城谷さんに接して、その人柄と仕事の姿勢に惹かれていったといいます。

城谷さんは常に、デザインするものの背景・機能・形を徹底的に掘り下げて本質に迫るという姿勢を貫きました。備わるべき根源的な機能とは何か。なにゆえその形に至りつくのか。そもそもそれは私たちの社会にとって必要なものなのか。そんなことを深く考えずに出来たモノが溢れるこの世の中で、城谷さんの姿勢はとても貴重なものでした。城谷さんの思想を受け継ぐ人たちを取材しました。

「おしゃべりな展覧会」「読ませる展覧会」をめざしました。本も作りましたし、映像も撮りました。で、展示はちょっと混沌としています。その混沌こそ地方で自立的かつ創造的に生きる力だと思っています。城谷さんのモノの本質を究めるデザインもあれば、メガネの工程紹介もあるし、シェアハウスの壁に貼られていた書き初めもあるし、森の再生の一端を担う生きたウナギもいます。

東京など大都会だけに多様性があるわけではありません。取材に行くと、ええっ、こんな生き方があるのかって、バイタリティあふれる人が自立・自律して創造的に暮らしていました。分業化が進みすぎた東京より、コンヴィヴィアリティ（自立共生）のクリエイティブには地方のほうが適しているものかもしれません。全体性のある「生」が見えるのです。泥臭く、でも理想を追って、生きてるなって感じがする。その物語（ナラティブ）を語り倒すのが本展です。面白い展覧会です。ぜひお越しください！

展示デザイン・映像制作はミングルデザイン。すばらしい仕事をしてくれました。壁面に現場で木炭で直に描いた小柳景義さんの人物画も大迫力で、他にはない展示デザインになっています。

本展の関連企画で昨年5月から始めた「山水郷チャンネル」で、キーパーソンのインタビューを聞くことができます。

【小浜】

城谷耕生①https://youtu.be/b3AHsj-ukUQ

城谷耕生②　https://youtu.be/38B7ar9GtJw

山東晃太　https://youtu.be/pzN1t8CKEAU

【西粟倉】

牧大介　https://youtu.be/hDx5XfIzoH0　

【鯖江】

新山直広①　https://youtu.be/kIyRb8JZD0M

新山直広②　https://youtu.be/PFYyviiBs88