小山吉明

はじめまして。中学校の体育教師を39年勤めて退職しました。失敗したことたくさん、そして…

小山吉明

はじめまして。中学校の体育教師を39年勤めて退職しました。失敗したことたくさん、そして苦労して嬉しかったこともたくさんありました。体育教師を志す若い人たちに今考えていることを発信していきたいと思います。

マガジン

  • 『体育教師を志す若者たちへ』

    39年間の体育教師生活を終えました。部活動の地域移行が始まり、部活動指導は教師の仕事ではなくなる時代に入りつつあります。体育教師を志す若者たちへ、体育の授業で勝負する体育教師になるために、その苦労とそこから得る喜びについてまとめました。

最近の記事

『体育教師を志す若者たちへ』後記編14 奈良教育大附属小問題に関連して

 昨年度末、奈良教育大学附属小学校で学習指導要領通りの教育が行われていないという理由で、何名もの教員が「処分」、「出向」させられるという問題が起こりました。この件に関して、私たち教職員は学習指導要領通りに忠実に授業を進めなければならないのかという点について考えてみたいと思います。報道によれば、問題とされた事項のひとつに「毛筆」の指導があったとのこと。附属小では準備や片付けがしやすい筆ペンを使用していたとのことです。こんなことまで問題にされて、「不適切」とか「処分」となるのであ

    • 『体育教師を志す若者たちへ』後記編13 パリ五輪教育を問う

       今年はもう2024パリ五輪の年です。2020東京大会の時にあれほど五輪教育が叫ばれ、様々な取り組みもがなされましたが、今年のパリ大会に向けて日本国内の各学校における五輪教育はどうなっているでしょうか。2020東京大会はコロナ禍で多くの国民が反対する中で競技会だけを強行してテレビ放送するという五輪運動のない最悪の大会になってしまいました。     各競技やボランティアの活動などの一場面では五輪ならではの微笑ましい光景や人権擁護の発信はあったものの、テレビでしか見られない多くの

      • 『体育教師を志す若者たちへ』後記編12 水泳は「学校の先生には教えられない」?

         水泳授業の民間委託が急速に進められつつありますが、ネットニュースを見ていたら埼玉県の坂戸市が来年度から全ての小中学校の水泳授業を市内のスイミング事業者に全面的に委託すると発表したとのこと(2月19日付)。このニュースに目を通して驚いたのは、坂戸市の石川清市長が「(水泳は命に関わるが)学校の先生には教えられない。一年中できるようにして、子どもの命を守るために始める」と述べたというのです。「学校の先生には命に関わる水泳は教えられない」と公然と言われてしまいました。これを学校の先

        • 『体育教師を志す若者たちへ』後記編11        バレーボールの教材価値再考

          「ミスを怒っていたら、バレーボールの指導者にはなれない」  日本バレーボール協会の川合俊一会長が最近興味深い発言をしています。指導者による体罰など、不祥事が続く現在のバレーボール界。「指導ですか?暴力ですか?」のキャッチフレーズで日本バレーボール協会は今年の3月、「暴力撤廃アクション」をスタートさせました。その中で、暴力と指導の間にあり、明らかな暴力や暴言でない言動を「未暴力」と位置付けました。未暴力は、何かのきっかけで明らかな暴力に変化してしまう可能性もあるとしています。

        『体育教師を志す若者たちへ』後記編14 奈良教育大附属小問題に関連して

        • 『体育教師を志す若者たちへ』後記編13 パリ五輪教育を問う

        • 『体育教師を志す若者たちへ』後記編12 水泳は「学校の先生には教えられない」?

        • 『体育教師を志す若者たちへ』後記編11        バレーボールの教材価値再考

        マガジン

        • 『体育教師を志す若者たちへ』
          30本

        記事

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編 10   学校プールの管理は誰がするのか?  

           今年の5月、川崎市の市立小学校で、プールに水を入れる際に教員が誤って水を6日間にわたって出しっぱなしにしてしまい、気づくまでにプール6杯分の水を無駄に流してしまったというニュースがありました。問題なのは川崎市では教員に過失があったとして、損害額190万円のうち95万円程度を校長と教員に負担させたというのです。これに対して川崎市民から、そこまで教員に負担させるのは現在の教員の労働の過酷さや「なり手不足」から考えても問題だと抗議が殺到し、賠償請求の取り下げを求めるオンライン署名

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編 10   学校プールの管理は誰がするのか?  

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編9    5.25事件から考える教師の仕事-②

           前回は今年5月25日に長野県中野市で起きた殺人事件から、こうした事件を防ぐ一助になるのではないかと考えられる教員の仕事、特に人間関係作りについて述べました。私が7月に教員養成大学の特別講義に呼ばれて学生たちに話した内容で、今回はその続きになります。今回の内容は、この事件のことを特別講義で取り上げる前に、ある学生さんからいただいていた質問の回答です。ちょうどその回答は今回のような事件を防いでひとりひとりが豊かな人生を送っていく上でも重要になると考えています。  その学生さん

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編9    5.25事件から考える教師の仕事-②

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編8    5.25事件から考える教師の仕事   

           『体育教師を志す若者たちへ』を教員養成大学の授業でとりあげてくれた私の研究仲間から、学生の質問に答える内容を含めて特別講義をしてほしいと依頼があり、7月下旬に行ってきました。  90分の講義で何を話すべきか? 私がまず考えたことは、私の住む長野市の隣の中野市で今年起きた凄惨な事件について触れなければならないだろうということでした。事件が起きたのは5月25日。31歳の若者がウォーキングで家の前を通りかかった女性2人をナイフで殺害し、かけつけた警察官2人も猟銃で撃ち殺してしまっ

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編8    5.25事件から考える教師の仕事   

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編7   部活動の地域移行を考える⑥

           前回はスポーツ庁の「学校部活動及び新たな地域クラブ活動のあり方に関する総合的なガイドライン」について、長野県のこれまでの経過を踏まえて考察を進めました。ガイドラインでは部活動に代わる「新たな地域クラブ」として多様なものが想定されていますが、最後に示されている「市区町村が運営団体となることも想定される」が特に重要であり、長野県内では飯島町、および千曲市・坂城町で地教委に事務局を置く先進的事例が出てきていることを見てきました。  一方で長野市のようにたくさんの中学校を抱えている

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編7   部活動の地域移行を考える⑥

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編6     部活動の地域移行を考える⑤

           前回は昨年12月に出された「学校部活動及び新たな地域クラブ活動のあり方に関する総合的なガイドライン」に示されている「新たな地域クラブ活動」の「運営団体・実施主体」に注目しました。その項をここでもう一度確認します。 「市区町村は、関係者の協力を得て、地域クラブ活動の運営団体・実施主体の整備充実を支援する。その際、運営団体・実施主体は、総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団、体育・スポーツ協会、競技団体、クラブチーム、プロスポーツチーム、民間事業者、フィットネスジム、大学な

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編6     部活動の地域移行を考える⑤

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編5    部活動の地域移行を考える④

           前回は部活動の地域移行に関わって、「戦後の日本、および長野県の地域スポーツ振興の歩み」について、「(4)2002年頃 総合型地域スポーツクラブ設立の動き(学校五日制開始)、(5)2021年 東京オリンピック、パラリンピック」まで書きました。今回は「(6)2023年~ 今回の部活動地域移行開始の取り組み、(7)2028年 2巡目の長野国体」になりますが、それらをどうとらえるか、そして地域移行を円滑に進めるために、スポーツ庁のガイドラインをどう読み解くかについて考えていきます。

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編5    部活動の地域移行を考える④

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編4    部活動の地域移行を考える③

           前回は部活動の地域移行に関わって、「戦後の日本、および長野県の地域スポーツ振興の歩み」について、「(3)1998年長野冬季五輪」まで書きました。今回は以下の(4)以降です。 (4)2002年頃 総合型地域スポーツクラブ設立の動き                      (学校五日制開始) (5)2021年 東京オリンピック、パラリンピック   (6)2023年~ 今回の部活動地域移行開始の取り組み  (7)2028年 2巡目の長野国体  (4)2002年頃       

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編4    部活動の地域移行を考える③

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編3    部活動の地域移行を考える②

           前回から、4月に長野県のT町で開催された部活動の地域移行を考える学習会で私が講演した内容を書き始めました。  話の内容の柱は以下の通りです。  1、現在の部活動は教師の仕事ではないということの確認  2、戦後の日本、および長野県の地域スポーツ振興の歩み  3,昨年12月にスポーツ庁から出された「学校部活動及び新たな地域ク     ラブ活動のあり方に関する総合的なガイドライン」をどう読み解くか  4,長野県の先進的事例に学ぶ  5,T町ではどう進めるべきか  前回は1につい

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編3    部活動の地域移行を考える②

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編2    部活動の地域移行を考える①

          部活動の地域移行をどうとらえ、どう進めたらよいか  部活動の地域移行が試行錯誤の状態で全国各地で始まりました。体育教師、あるいは体育教師を志す若者たちの中には、学校で部活動をさせたい、地域に移行させるのは指導者も不足しているし不安、そして生徒や保護者たちも学校での部活動を望んでいる人は多いのではないかと思います。そんなことから地域移行に疑問を抱いているのではないかと思います。  先日長野県T町に住むの研究仲間の友人から、部活動の地域移行について学習会を開くから話をしてほしい

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編2    部活動の地域移行を考える①

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編1        教師を志す礎 

           前回で私の著作『体育教師を志す若者たちへ』の全文紹介が終わりました。これからは「後記編」として、これまで書き切れなかったことや最近の話題について書いていこうと思います。  今回お話するのは、当初『体育教師を志す若者たちへ』の冒頭に書こうと思っていた内容で、私が体育教師を志すようになったきっかけについてです。現在教職に就かれている先生方全てがそれぞれ様々な深い思いを持って教職を志してきたはずで、そのことを考えると冒頭から私個人のことを書くのもどうかという思いに至り、機会があ

          『体育教師を志す若者たちへ』後記編1        教師を志す礎 

          『体育教師を志す若者たちへ』 あとがき

             在職中、校内の部活動係主任として、様々な部活動改革をしてきました。冒頭の写真は保健室前に掲示してある部毎の毎週の休養日表です。毎週更新していきます。どの部も週に2日間は休養日を設定するものとし、顧問が休養日にする日の所にマグネットシールを貼ります。私が毎週それをチェックします。  学校の部活動としての活動は、原則土日のどちらか1日は休養日にすることになっていますが、部によっては殆どの生徒が社会体育クラブにも所属していて、合わせて両日の活動となってしまう週があります。そ

          『体育教師を志す若者たちへ』 あとがき

          『体育教師を志す若者たちへ』 第7章   部活動と生徒会 (最終章)

           この学校に赴任したとき、かつてのプールの跡地(陽当たりが悪く、校内の別の場所へに移転したとのこと)がテニスコートになっていましたが、テニス部はないので草が茂る空き地でした。そこを整備し、いくつかのスポーツ遊びができる場所にしました。フェンスには手作りのバスケットゴールを設置しました。主に体育委員会が企画する活動に使います。    それでは今回は最終章の第7章になります。 第7章 部活動と生徒会◇部活動と生徒会活動の共通点  「部活動と生徒会」このタイトルに違和感を覚える人

          『体育教師を志す若者たちへ』 第7章   部活動と生徒会 (最終章)