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カフェバグダッド年代記④-映画、音楽テーマに自分も楽しみながら

しばらく間があいてしまったが、カフェバグダッド・イベントの第4弾以降を振り返る。時期でいうと、2005年のことだ。
個人的にも映画が好きなので、中東の映画も積極的にとりあげた。この年の4月、東京で国際交流基金の主催で、アラブ映画祭が開かれる。2003年のイラク戦争が日本でも大ニュースとして伝えられたことで、文化的側面からイラクを含めたアラブ圏を理解しようという機運が高まっていたことが開催の背景だろう。
カフェバグダッドは民間団体だったが、アラブ映画祭開催に先立つ2月に、「イラン映画と詩の蜜月」と題して、イラン文学研究者の鈴木珠里さんを招いたトークイベントを開催した。

イベントのチラシ

鈴木さんは、イランの夭折の女性詩人・フォルーグ・ファッロフザードを研究しており、この詩人がキアロスタミやマフマルバフとったイラン映画の巨匠に与えた影響を、作中に使われた詩などを紹介しながら解説した。今でも印象に残っているのは、参加者がとても真剣に聞き入り、メモを一所懸命とっていたこと。日本のイラン映画ファンの層の厚さとレベルの高さを実感したものだった。
第5弾では、「師岡カリーマのアラブ音楽入門」と題して、文筆家の師岡カリーマさんを招いたトークを行った。この回から、渋谷区にある国際協力事業団の会議室を会場を変更した。それまでは、イラン料理店で水たばこや料理も提供するスタイルのイベントだった。なぜ、普通の会議室に変えたか、理由は、もうよく覚えていないが、水たばこを出したりするのが結構大変だったことは確かで、トークに力を傾注しようとしたのかも知れない。
カリーマさんには、イラクのスーパースター歌手、カーゼム・サーヘルの人間像と、歌詞の分析をしていただいた。まさに、「カフェバグダッド」のトークにぴたっとはまる内容だったと今でも思う。日本で育ち、エジプトの大学を卒業。日本とアラブという2つの文化背景を持つカリーマさんだからこそ可能なトークだったと思う。ちなみに、カリーマさんは、カーゼムの大ファンでもある。

イベントのチラシ

8月には、ついにアラブ映画をテーマにしたトークが実現する。アラブ映画研究者の佐野光子さんに登壇していただいた。佐野さんは、国際交流基金のアラブ映画祭の前に、「リアル/アラブ映画祭」というアラブ映画を上映する映画祭を仲間とともに開催した方だった。東京のアテネ・フランセ文化センターを会場にしたこの映画祭、エジプト映画「テロリズムとケバブ」など、笑いとシリアスが交錯した作品を上映するなど、かなりトンがった映画祭だった。そんな映画祭を国際交流基金に先駆けて行った佐野さんたちの行動力には舌をまいた。トークでは、アラブ映画についての佐野さんの豊富な知識を動員してもらい、縦横に語っていただいた。

イベントで話す佐野光子さん(左)

佐野さんは、今年も3月17、18日に東京で開催される「イスラーム映画祭」では、ティーチ・インの常連になっていて、「アラブ映画とえば佐野さん」という評価が定着している。このイベントに出てもらった後も、ことあるごとに、映画について教えを乞うてきた。佐野さんが、ベイルートの大学に所属して映画を研究していた時は、イランからレバノンを訪ねたこともあった。それがあって、こうして今も中東映画レビューを書くことができている、と改めて感じる。
(サムネイルの画像は、レバノンのスーパーアイドル、ナンシー・アジュラムにインタビューする師岡カリーマさん。これについてはまた次回に)

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