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長崎に投下された原爆と深くつながる街…映画「リッチランド」

米西部ワシントン州にひろがる大自然の中で、第二次世界大戦末期、長崎に投下された原爆の原料、プルトニウムが作られた。そこで働く人々のために作られた街、リッチランド。地名は、何か示唆的でもある。

アイリーン・ルスティック監督のドキュメンタリー作品は、1943年から1987年まで稼働した核燃料生産拠点「ハンフォード・サイト」に働く人々のために作られた街、リッチランドが舞台。そこに暮らす人々とアメリカの核開発の関わりの歴史を丹念につづった「叙事詩的な」作品だ。

リッチランドにある高校のアメフトチームのトレードマークが、今もなお、核爆発のキノコ雲だという点に驚く。この街で暮らす人々の核兵器開発への評価の一面が表れているが、市民の中にも否定的な考えを持つ人々もいる。

高校生たちは、そのトレードマークの是非について悩み、議論をたたかわせる。住民は今も核廃棄物による放射能汚染の不安を抱えながら生活し、実際に健康被害で亡くなった方の遺族も登場する。

映画「オッペンハイマー」の公開で、米国の核開発・核使用の是非についの議論が改めて提起されている。米国民が、自国の核兵器開発とどのように向き合ってきたのか。その実態を知るためのひとつの材料を提供しているのがこの作品だ。

被爆者三世だという日本人アーティストの川野ゆきよさん(広島市)出身も、原子爆弾をモチーフにした自身製作オブジェとともに登場し、思いを語っている。

作品は、7月6日から東京の「シアター・イメージフォーラム」で公開される。


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