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1月の詩

1月1日。
一年で最初の日。

オーストリアの詩人ライナー・マリア・リルケはこう書きました。


さあ、新しい年を歓迎しよう

新しいものにあふれた年を


そう、今日を始まりとして、私たちの目の前には限りない新しさが広がっています。

365回のきらめく朝と星月夜があり、
希望に満ちた52週が、
可能性でいっぱいの12か月があります。

素晴らしい季と、
豊かな年を誰もが受け取れます。


◇◇◇


壮絶な少女時代を生き抜き、後に全米の人々の精神的支えとなったカウンセラーで作家のメロディー・ビーティーも書いています。


The New Year stands before us, like a chapter in a book, waiting to be written.

新しい年が、まるで新たな本の一章のように、私たちの手によって書かれるのを待っている。


ビーティーよりも半世紀前に英国で生まれた詩人のエディス・ラブジョイ・ピアスもまた、まるでそれを補完するかのような文章を残しています。


We will open the book. Its pages are blank. We are going to put words on them ourselves. The book is called Opportunity, and its first chapter is New Year’s Day.

私たちは一冊の本を開く。
けれどどのページも白紙で何も書かれていない。
そこに言葉を書き込んでいくのは私たち自身。
その本は『機会』と呼ばれ、第一章は〈元日〉となっている。


◇◇◇


たとえ昨年がどれほどふるわなくとも、気に病む必要はありません。
新しい年の始まりと共に、私たちも新しいスタートを切れます。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが言うように。


できること、あるいはできると夢見ていることがあるならば、今すぐ始めよ。

向こう見ずは天才であり、力であり、魔法だからだ。
さあ、今すぐ立ちあがって始めよ。


◇◇◇


もちろん、新しい年への意気込みが盛んなのは結構だけれど、もう少しなんとはなしに、ゆったりと新年を迎えたい。
そう思われる方には、適度に肩の力の抜けた、石川啄木のこんなふたつの短歌はいかがでしょう。


年明けてゆるめる心!

うつとりと
し方をすべて忘れしごとし。


なんとなく、

今年はよい事あるごとし。 
元日の朝、晴れて風無し。


この柔らかく穏やかな明るさも、年始にふさわしいものでしょう。


◇◇◇


そして、啄木よりも少し後、大正時代に生きた金子みすゞの、年はじめの景色を描いた優しい詩も、忘れずにご紹介しておきたいと思います。


『夢売り』

年のはじめに
夢売りは、
よい初夢を
売りにくる。

たからの船に
山のよう、
よい初夢を
積んでくる。

そしてやさしい
夢売りは、
夢の買えない
うら町の、
さびしい子
ところへも、
だまって夢を
おいてゆく。


◇◇◇


自分一人だけが良ければいい、という時代はとうに過ぎ、今年こそは、誰を蹴落とすでも追い詰めるでもなく、皆がそれぞれの場所でそれぞれの幸福を掴めるよう、そう心から願ってやみません。

どうぞ、この一年がとびきり素晴らしい年となりますように。


◇◇◇


わたしのすきなひとがしあわせであるといい 
わたしをすきなひとがしあわせであるといい 
わたしのきらいなひとがしあわせであるといい
わたしをきらいなひとがしあわせであるといい 

きれいごとのはんぶんくらいが 
そっくりそのまま 
しんじつであるといい

『ひとさらい』より
笹井宏之



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