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閉鎖的な公職選挙法

総論 公職選挙法は、選挙運動についての規定をしている。選挙運動について詳細で厳格な禁止事項を設けていることで有名であり、「べからず法」と揶揄されることもある。様々な選挙運動の禁止は、基本的に選挙活動全般を禁止し、部分的に許容する内容を規定するという枠組み(包括的禁止・限定的解除)で行われている。選挙運動は表現の自由(憲法21条)や参政権(憲法15条)などの基本的人権に関わる活動であるが、それが基本的に禁止される形式は、他の法律では全く見られないものである。全ての法律は原則とし

    • 小選挙区比例代表制

      法律等の状況 選挙制度には、多様な方法が存在する。そして、選挙制度の在り方は政治体制の在り方を形成する大きな要因である。「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人だ」という言葉があるように、国会議員は選挙で当選することを生業としているので、選挙に標準を合わせて政治活動を行うことになる(1)。そうなれば、選挙の無い期間での振舞いも選挙を意識したものとなり、それが結果として制度の運用や政治体制の形式を決定するのだ。そのため、選挙制度について注目するのであれば、広く

      • 自由権規約第一選択議定書

        法律等の状況 自由権規約第一選択議定書について説明するため、まずは国連加盟国間で作成・締結された関連規約について概観したい。  そもそも、個々人の権利は、それまでは西洋の国内でのみ通用する概念であったが、戦後の国際情勢において、人権という概念が重要視されるようになった。第二次大戦時のナチスドイツによる虐殺など、特定の国家による非人道的行為が注目されたことから、他国での人権についても、国際政治の課題として扱うべきとする志向が強まったことが契機である(1)。そして、国連憲章や世界

        • 政治資金について

          法律等の状況 政党の政治資金に関わる法律には、政党助成法と政治資金規正法の二つがある。政党助成法は、政党の要件に当てはまる団体に対して、(直近の選挙にて獲得した票数×250)円を助成することを定めるものだ。  政治資金規正法とは、各政治家や政党などの政治献金の量的・質的制限を加えること、政治資金の調達経路を公開することなどにより、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われる(政治資金規正法1条)」ようにする法律である。ここでは、政治資金の量的・質的制限、政治献金の公開とい

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          最高裁判事の内閣による任命

          法律等の状況 最高裁判所は、長官1名および裁判官14名により構成される。長官は内閣により指名され、それに基づいて天皇が任命を行う(憲法6条2項)。裁判官は内閣により任命され、天皇がそれを認証する(憲法79条1項)。つまり、長官と裁判官の合計15名の人事は内閣によって決められている。内閣による人事が行われたのちに、衆議院選挙と同時の最高裁裁判官国民審査が行われるのである。なお、その他の裁判所に関するルールは、国会が制定した裁判所法と最高裁が制定した規則に定められている。  内

          最高裁判事の内閣による任命

          国対政治

          法律等の状況 国対政治とは、与野党の国会対策委員長が密室において国会審議の日程などを中心に駆け引きを行う国会のあり方を指す。国対政治は、1970年代に上述の事前審査制や党議拘束が確立し、日程が法案審議における中心的な関心になると同時に、形成されてきたものである(1)。国会審議の日程等は、形式的には議事運営委員会で与野党が議論することで決められることとなっている。しかし、実質的な議論の場が徐々に国対委員長会談に移動した経緯がある。国会対策委員長は、各党にある国会対策委員会の委員

          国対政治

          事前審査制と党議拘束

          法律等の状況 議会における日本政治特有の規則として、事前審査制と党議拘束がある。事前審査制とは、与党である自民党内において、各省庁が作成した閣法を審議するプロセスを指す。省庁ごとに対応した部会から党議拘束がかけられる総務会まで、いくつもの審議段階がある。この事前審査制は法令で定められた審議プロセスではないため、内容を公開する義務のない密室となっている。党議拘束とは、各党の党則により定められ、与党内での閣法の法案審議が終わったのち、賛成・反対といった国会での投票行動を拘束するも

          事前審査制と党議拘束