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道案内

ある朝、勤務先に向かう途中、交差点待ちをしていると、腰の曲がったおばあさんから声をかけられました。

おばあさん:あのー、映画館はどこでしょう?                 私:どちらの映画館ですか?       おばあさん:それが忘れちゃって…『東京家族』を観たいんだけど…        私:この辺りですと、バルト9、武蔵野館、ピカデリー…              おばあさん:ピカデリーって言ってたわね!

検索したら、この映画が公開されてたのは7年も前ですね。

その頃、私は新宿勤務でした。『ホテリエ時代の記憶~パワハラ編~』の後、転職したのでした。

ピカデリーなら知っていましたし、出勤時刻までに余裕があった事もあって、私は映画館まで案内させて頂きました。「あなた、忙しいんじゃないの?」とおばあさんは心配して下さいましたが「大丈夫です。」と答え、無事にチケットを購入する列までお連れしました。(ついでに映画も観たかったです。)

こうして何とか役目は果たせたのですが、1つ不安がありました。そのおばあさん、杖こそついていませんでしたが、相当腰が曲がっていて、ヨタヨタと歩く姿に『1人で大丈夫かな?』と思ったのです。

平日の早朝だったと思いますが、仮にご家族や、心配してくれる人がいらっしゃったとしても、時間帯的に付き添いは難しかったかも知れません。『自分の将来の姿かも…』なんて考えたら、感謝された事より、将来への不安の方が大きくなってしまい、勤務先までの道中、複雑な思いが交錯していました。

映画鑑賞後、新宿の雑踏の中を、無事に帰宅出来た事を祈るばかりです。



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