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キャニコム、アメリカへ⑤

目標である1億円に全く到達せず、途方に暮れていた。赤字の金額だけはどんどん膨れていき、いつの間にか2億円を超える債務を抱えている会社になっていた。全く金がない。どうすればいいのか?

アメリカに来て早2年以上経過し、関税回避のため製品を荷箱とフレームと分け、船も分け、現地で自分が組み立てる日々は続いていた。この時期は色々とつまらない事を考える。

仕入れ価格を下げれば、関税金額も減るのでは?コストをどうするのか?書類はどうすればいいのか?という良からぬことを考え出す。

しかし「移転価格」という問題が生じる。全くもって、余計な事を考えるとちゃんと法規制というものがある。なのでまっとうな商売しかできない。そんな中、小型運搬車の新型「伝導よしみ」が国内で発売することになった。これは運搬作業と電源が取れるジェネレーターを組み合わせた機械である。

これをアメリカに持っていこう。

このエンジンは富士重工業社(現:スバル)の特別仕様エンジンだった。米国に持っていくことに関して難色を示していましたが、クリアをするための準備と交渉で了承を得た。何とかもう1機種増やすことができたのもよかった。持っていく先は実は決めていた。トウモロコシ畑だ。コーンベルトといわれる、コロラド州、カンサス州、ネブラスカ州の大型灌漑農法(Irrigation system)を採用している会社に持ち込みたいと考えていた。Center Pivotという機械は大きく円周を描き一週間に1周というスピードでトウモロコシ畑のスプリンクラーとして使われているものだ。これに使用されるタイヤは1つ80㎏~100㎏、駆動させるモーターも80㎏前後。この機械のネックは突然パンクしたり、動かなくなったりする。そして故障した場合はすべて手作業でトウモロコシ畑に入って修理、交換をしなければならない。

この交換部品を運ぶ機械に使えるのでは?という安易な考えでしたが、それが意外にも販売への好転になるきっかけとなった。下手な動画編集とプレゼンと拙い英語、副社長のフォローで商談が進んだ。そして当時の年間の販売台数が70台程度なのに、この伝導よしみは初回オーダーが50台だった。毎週自分の組立が1週間に3台しか組上がらないので大丈夫なのか?それとも関税を払って、価格に転嫁して販売すべきなのか?

価格が高くても購入したい。

それほど、トウモロコシ畑の管理は手間と労力がかかったのだ。どうしても購入したいという話が舞い込んできた。年間70台の会社がワンオーダー50台という注文に驚きと納期、納品どうしようと不安でしかなかった。

このきっかけは日本にいる社員に何か火をつけた形になった。

やればできる、費用が掛かっても回収ができるのではないのか?もしかしたらアメリカで製品を開発すれば売れるのではないのか?とキャニコムにとっても大きな自信になったきっかけになった。これを境にアメリカでの製品の開発がゆっくりですが進んでいくことになります。

ただ、、大きな障壁の関税25%、すでに累積赤字2億円がまた更に増えてしまうことになり、倒産の危機に瀕することになるのはもう少し先の話になります。

借金は何とかなるということは絶対にない。ずっと苦しめることになる。関税と借金はついて回るのです。

続きます。

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