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ミライのキャリア 第1章 キャリアについて考えてみよう

この文章は、ミライのキャリア#1”番組のテーマ”〜#4”キャリアアンカーを知る3つの質問”を加筆し再構成したものです。

(1)キャリアとは?


イントロダクション


大人のための進路指導ラジオ、ミライのキャリア
 この番組は様々な場所で働いた経験を持つ3人が、社会人になってから分かったあれやこれやをもとに、あなたのなりたい、を一緒に考える番組です。
 という前口上でやっていましたPotcast版ミライのキャリア。この文章は、Potcast版ミライのキャリアを、読みものとして再構成したものです。
 では、まず著者3人の自己紹介です。

【Caol】50代公認心理師臨床心理士、小学校から高校までスクールカウンセラーとして働いているわたなべかおるです。

【えりな】20代です。しゃべりで新しい仕事を開拓しています。平成7年生まれ Z 世代代表のパブリックスピーカー水嶋えりなです。

【ホリデー】40代デザイン事務所経営、ホリデーです。この3人で誰しもが悩むキャリアについて役立つ話をしていきたいと思います。
 ってか、キャリアってなんなんすかね?そもそもかおる先生、何でこんなキャリアについての番組を始めようと思ったのですか?

【Caol】スクールカウンセラーというのは、生徒と基本一対一で相談、という形で話をする仕事。話す内容は様々で進路の話もあります。
 進路の話というのは、進路担当の先生や担任だったり、もちろん高校生自身が考えることなのだけども、そこからこぼれる子のフォロー役として私も話をすることがあって、関わっている時にちょっとしたこと、サジェスチョンだったり、考え方のヒントを話すだけで、だいぶ変わる、という経験からキャリアのことを話そう、と思い、番組を企画しました。
「必要なのは情報ではなく、智恵である、ということが分かってきた。」
 こういう話は、これから社会人になる大学生や、転職しようとしている20〜30台の人にも役にたつのではないか。

【ホリデー】知恵ってどういうことですか?

【えりな】情報より知恵!どういうことですか~!わたしも20代で転職もしましたけど、全然わかんない!

必要なのは情報ではなく知恵である



【Caol】ネットには情報はたくさんあるが、智恵は少ない。そもそも判断する力がないと必要な情報を探し出すこともできない。そういう取捨選択の元になる力が智恵で、知恵を養うのが、リベラルアーツと呼ばれる、学問、知識の体型ですね。さっきの仕事で会った高校生も、必要だったのは、進路となる大学の情報ではなく、自分で選ぶための考え方と、考え方の基準になる智恵だったのですね。

【ホリデー】キャリアの話って、なんか、こんなことしたら出世できる、とか?安定した人生を送れる、とか?なんなら勝ち組人生を歩むためのテクニック?みたいなイメージあったけど、そうではなくて、リベラルアーツとか「知恵」とかそんな哲学的な話になっちゃうのですか?

【えりな】え〜!私もそんな深くキャリアについて考えたことないです!

【Caol】え、でもキャリアって「その人の生き方」ですよね?自分の人生のことですよね?深くなるのは当たり前のことじゃないですか?

【ホリデー】たしかに!

【Caol】就職、転職、同じ職場内での移動などキャリアは、偶然の出来事で動き、事前に計画したり、自分だけでコントロールしたりすることは難しい。実はキャリアって「運」の要素が大きいのですよ。そんな運任せのキャリアに対して、自分でできることは、「自己を知る」「偶発的な出来事に対して行動する」ことです。

【ホリデー】おお〜、なるほど。確かに「運」ってありますよね!そんな計画通りに行く人生ってないですもんね!いくら俺の人生金持ちで、モテモテで生きていく、って思ってもそうならないですもんね!

【えりな】就活したり仕事したりしていくなかでも、自分の努力が結果として出てくるかどうかも「運」によったりしますもんね!
 でも、「自己を知る」とか「偶発的な出来事に対して行動する」ってことが「運」を引き寄せるってことになるのですか?

【Caol】いやいや、ここで言いたいのは、どうしようもない運=不確実なことは捨ておいて、自分で、できることをすること、コントロールできる自分の行動をどうにかすること、です。

【えりな】なるほどね〜!え、でも自分をコントロールするにはどうしたらいいですか?

【Caol】行動をどうにかするには、判断の基準が自分の中に必要。それは、リベラルアーツだったり、自分の価値観をよく知ることだったりします。

【ホリデー】たしかに。いや、これは深いですよ。まさか、キャリアの話から、リベラルアーツの話になるなんて思ってもみませんでした。

【Caol】キャリアコンサルタントというキャリア養成を指導するプロがいて、彼らの指導のベースになっているのが、ちゃんとした心理学者の研究によるキャリア形成に関する理論です。
 余談だけど、心理学というと、心を病んだ人のケア、という臨床の印象が強いかもしれないけれど、人の行動を研究するのが心理学だから、会社だと人事や経営を支えているのが心理学です。企業の人事部には心理学科出身の人も多い。最近だと行動経済学という、人は不合理な行動、判断をする前提で経済を考える、と言う分野の半分は心理学。大学の経営学部の教授、経済学部の教授だけど、研究分野は心理学、と言う人も多い。
 で、キャリアは運だ、といったのは私ではなく、J.D.クランボルツという人。この人は、「偶発的な出来事に対して行動する」ことについても理論化しています。 
 「自己を知る」ための良いツールになる「キャリアアンカー」ということを言い出したのが、E.シャインという人です
 
「学習し続ける」ことについてはいろんな人が言っているけれども、ここではスタンバーグの三頭知能理論が参考になる理論ですね。
 ここまではこの本で伝えたい「必要なのは情報ではなく知恵である」という話。

所属する企業と個人がマッチするかどうか

 もう1つ伝えたいことは「集団には文化があり、個人の価値観と相容れないかもしれないこと」つまり、所属する企業と個人がマッチするかどうか、という視点です。

【えりな】ほほ〜

【Caol】最近聞いた良い話をします。転職活動中の人が、転職エージェントと話をして、転職候補の1社が待遇、仕事内容とも申し分なかったが、エージェントが「この会社には全社員参加の運動会があります。」で、その人は、「先に言ってくれてありがとう、入社する前に分かってよかった。」と蹴った話です。

【ホリデー】ええ!蹴っちゃうの!?そんな理由で?いやいや、運動会くらい出たらええやん!

【Caol】この話、何が良いかというと「価値観」の話だからです。つまりある個人にとって、どうでもいいことと、絶対に譲れないことがあり、それはその個人の価値観に基づいています。企業にも風土や文化という価値観がある。そこが相入れるかどうか、という視点もあるわけです。
 個人にとってキャリアを考えるポイントになるのは、こういう具体的で、外からは分からないかもしれない集団の持つ文化のことだったりします。このように、先に知っておくと、どの集団に属するか、という判断に役に立つ話、経験があったからこそ言える具体的な話をしていきます。

(2)著者のキャリア

【えりな】ここでは、キャリアについて語る三人のキャリアはどんなの?という話ができたらいいなあ、と思います!そもそも人のキャリアがどうだ、ってことを語る前に、お前たちのキャリアはどんなやねん、ってことを暴露していく、ということでいいでしょうか?かおる先生。

【Caol】はい、そうです。3人ともずっと同じ仕事ではなく、職種や雇用も変わって、そのたびに決断が必要だった、ので、他の人の参考になるといいなあ、と思っています。

【ホリデー】なりますかねえ。

【えりな】なるのですかねえ。ではまずはこの番組の言い出しっぺのかおる先生から暴露してもらいましょう!かおるせんせいお願いします〜!

エリクソンの生涯発達理論と12歳の作文

【Caol】私の話に入る前にちょっとお話ししたいことがあります。
 エリクソンの生涯発達理論というものがあって、人の生涯は、8つのライフサイクルに分かれる。12歳という年は、人の発達の上でポイントになる年。児童期という子どもの時期が終わる。発達段階としては青年期に入って、アイデンティティという、自分とは何かを考え始めたり、遠い将来のことを考え始めたりする。
 ちょうどこの時、小学校の卒業文集とか、将来の夢を卒業アルバムに書いたりする。仕事で関わっている子の文書を見ても、けっこう将来像を当てていて面白い。具体的なところは見えていなくても方向性は見えていて、だいたいその方向に行く。

【ホリデー】で、かおる先生は?

【Caol】学者、研究者になりたい、と書いてあった。しかも文系。

【ホリデー】まじすか!エリクソンさんのいう通りじゃないですか。

【Caol】ま、そのおかげで高校とか大学、その後の大学院に行くということも、全く迷わずに進んで行けたわけですよね。その大学院の時に転機が来て、なんと私、研究者の才能がなかった。

研究者の才能

【えりな】研究者の才能って、なんですか!?研究者の才能がない、ってなんでわかるのですか!?

【Caol】実は研究者は、すごくクリエイティブな仕事だってことに大学院で気付かされました。まだ未知のものに対して、例えば、AとBという2つの現象は、関係があるとか、結びつくとかいうことは、なんかデータを積み上げていってそうだった、と分かるのではなくて、これとこれは関係があるのじゃないかっていうふうに見る力、仮説を作る力っていうのが必要で、そういう能力が全くなかった。

【ホリデー】研究者って、アーティスティックなのですね。

【Caol】そう。論文書くのでもまずアイデアがなきゃいけないのだ。それを出せ、と言われて、私にはでなかった。

【えりな】そうなんだ〜。そう言われるとそうなのかも。

【Caol】余談だけれども、のちに私を研究した論文が2つあり、自分では研究論文を書かないが、研究される対象になっている。2021年にもう1つ調査されて3つになりました。

【えりな】なにそれ!自分が研究対象になるって、どんな気持ちなのですか!?

【Caol】なんか、こんな私でも世の中のお役に立てるなら、って気持ちですね
 あと偉い学者は自分で論文を書かない。ソシュールという言語学者がそうで、自分の言ったこと、行ったことが学説になる、という気持ちもあります。

【ホリデー】歩く学説、ってことですね。そっちのほうが凄そうですね。

【Caol】話を戻すと、心理学を選んでいたおかげで、心理学には臨床があるじゃないか、というのに大学院で気づいた。

【ホリデー】心理学に臨床があるってのがちょっとよく分からない。そこ詳しく教えてもらって良いですか。

【Caol】メンタルな問題を抱えている人の相談、治療(ケア)ということを扱う分野があって、それまで基礎とか実験と言われている心理学の分野、それは、新たなアイディア、新たな理論を出すのだ、っていう分野にいたので、そこら辺全く気付いてなかったのですけども、実際の人を相手にして、その人をケアするという分野があり、今まで学んだこともちゃんと役に立つのじゃないかいっていうことに、院の時に気づく。

【えりな】直接人をケアするのか臨床なんですね。

【Caol】そうですね。メンタルとはどんなものか、脳の働きとは何か、ということを一生懸命研究するのが、実験とか基礎心理と呼ばれる分野ですね 。
 ただ、まだ未練があるので、大学院を終わる時に、非常勤の講師をいくつか掛け持ちで仕事をしていて、そこで出会ったのがホリデーさんだったりするわけですけど。

【ホリデー】美術大学を目指す時に予備校に行ったんで、そこでかおる先生が小論文の先生としておりまして。小論文の書き方だけじゃなく、お酒の飲み方アニメの見方とかいろんなことを学んだ。

【Caol】その頃はなんかちょっと先の見通しが立ってなかったんですけれども、大学院の同級生からの誘いで法務省という、極端に固いところに行くチャンスがありました。これは法務技官という名前がついている心理職で、そこに行った後に、今度は千葉県の児童相談所の心理判定員という仕事、これも心理職で、国家公務員と地方公務員をフルタイムで両方やっていました。その後、千葉県のスクールカウンセラーとなって現在に至る、というわけです。

【ホリデー】僕に小論文を教えたかと思ったら、いつの間にか国家公務員になったり、かおる先生のキャリアにもいろんな紆余曲折があるもんですねえ。

【Caol】そうそう、まず狙って地方公務員と国家公務員になったわけではない。多分に運。ただ、チャンス、と思える選択肢が現れた時に、「どっちがいい?」と判断する基準が自分にはあったであろうこと。それは自分の価値観がそれなりに分かっていた、自覚的だったのかな、と思う。

【えりな】で、ホリデーさんは?

落書きキングから美大へ



【ホリデー】僕はですね。宮崎県の片田舎のところで育ったんですけど、小さい頃からどこのクラスにも一人はいる落書きキングみたいな存在でした。ノートの端とかテストの裏とか、授業の合間に絵を描くのが上手な子ですね。

【Caol】いいですね。12歳の卒業文集だったらイラストレーターとか漫画家とか書きそうですね。

【ホリデー】で、正直高校生になっても将来のことなんか全然考えもしなかったし、なんなら先生から「大学に入ったらいくらでも遊べるんだから、今は脇目も降らずに勉強しろ〜!」みたいなことを言われてたんですよね。
 でも、高校2年の時に、急に進路希望調査みたいな紙が配られて「どんな進路にしたいか書け」って言われたんですよ!え、こないだなんも考えずにひたすら勉強しろって言ってなかったっけ?って、めっちゃ頭にきたのを覚えています。

【えりな】めっちゃわかる!学校ってそこ無茶ぶりですよね!

【ホリデー】かといって、将来のことを考えるための情報って、全然与えてもらってなかったから、いきなりそんなこと言われてもさっぱり分からないわけですよ。 
 そこで、私、考えました。
 「将来どうなりたいか」がわからないんだったら、「今やりたいこと」で大学決めたらいいんじゃね?ってwそうしたら、自然と「美大を目指す」って発想が頭をよぎって、めっちゃワクワクしましたね!

【えりな】絵+進学、美大だ!

【ホリデー】だって、美大を目指すための勉強って絵を描くことだから、補講とか受けなくていいんですよ!!

【えりな】そこ!?

【ホリデー】将来のことも、仕事のこともさっぱりよく分からないけど、「デザイン」を仕事にする、って言い訳で目指す大学を決めたんですよ。でも、美大に入るってのも結構大変で、落書きキングとしての能力と、美大に入るための絵の力、ってのは、またちょっと違ったりするんですよね。
 それで、高校3年生の時に、東京の美術予備校に夏期講習に行ったんです。そこでデッサンの講習を受けたんですけど、周りの学生たちに全く歯が立たない自分に気づくわけです。レベルが全然違った。
 流石に東京の美大には入れない、とわかり、自分のレベルでも合う地方の美大に行こうと思ったんですが、なんと、ここで父親が「デザインするなら東京に行け」って言ってくれたんですよ〜!父親曰く、「東京と地方じゃ全然情報の量が違う。デザインという職業はそういうところに敏感でないとダメだと思うから、ほんとにデザインやりたいんだったら東京に行った方がいい。」って言ってくれたんです〜。そこで、浪人までして東京の美大に受かる力をつけました。

【Caol】いいですね。知恵ある大人から重要な判断基準をもらったのですね。

【ホリデー】そうなんですよ。自分のキャリアを考えたときに、あの時の父の言葉は、相当大きく自分の人生を決めてくれているなあ、と思いますし、親になった自分として、そんなことを我が子に言ってくれる父、かっけえ、と思います。
 で、美大を卒業した後は、大手の広告代理店に入社して、アートディレクター、クリエイティブディレクター、として寝る間も惜しんでデザインしていました。

ホリデーの仕事


【えりな】へ〜。どんな仕事していたんですか?

【ホリデー】ミスタードーナツのポンデライオン、て知っています?

【えりな】知っています!グッズ集めていました。

【ホリデー】あれ、僕作りました。

【えりな】うそ!え、産みの親!?ホリデーさん産みの親なの!?

【ホリデー】そうなんですよ。あと、スシロー、行ったことあります??

【えりな】ありますよ〜!もちろん!

【ホリデー】あれのロゴ、僕作っています。

【えりな】あれも!?色々やっているんですねえ。すごい人だ。

【ホリデー】自由に色々仕事させてもらいましたねえ、で、その広告代理店も辞めて、自分のデザイン事務所を立ち上げて、結局今でもデザインやっています!

【えりな】社長さんになったわけだ

【ホリデー】はい。ほんとはなるつもりがなかったんですが、まあ色々ありまして。その辺はまた今度。

【Caol】ホリデーさんは意識してないようですが、12歳のころから、やりたいことがはっきりしていてその方向に進んだ、と言えますよね。

【ホリデー】ほんまや!!!エリクソンさんのいう通りや!!なんか悔しい。

【Caol】しかもその途中で偶然良い出会いがあったり、知恵ある大人のサジェスチョンがあった。で、えりなさんは??

言葉と声に関わる仕事


【えりな】そうですね。私もホリデーさんと同じように、予備校でデッサンとか習って、美術と言うか芸術の大学を出ました。でも分野は全然違います。中学生の頃から、将来自分は何になりたいっていうのがはっきりしていて、言葉と声に関わる仕事がしたいなっていう風に思っていました。声優さんや役者さん、あとは小説家になりたいとか思っていました。

【ホリデー】へ〜!すごい!何も考えてなかった僕と全然違う。

【えりな】私はすごい田舎、南房総の出身なんですけども、小さいお芝居教室でお芝居をしたりしていました。舞台美術って分かりますかね?背景とか大道具を舞台美術って言うんですけど、その芝居教室で、舞台美術を作り出したんですよね。そしたら演技よりそれが面白くて、演劇の美術を学べる大学に入ったんですよ。演技もしていましたけどね。

【ホリデー】裏方の方が面白い、ってなるのも面白いなあ。

【えりな】そうなんですよ。4年間大学終わって大手の映像制作会社に入社してそこで美術として働いていました。

【ホリデー】大学で学んだことが生きる職業だね。

【えりな】私珍しいかもしれないんですけど、就職活動が楽しくて仕方なかったんですよ。もう100社以上受けたんですよ。

【ホリデー】え〜!すごい量!!僕、3社ですよ。しかもそれが楽しい、ってのがすごい!

【Caol】私は1社も受けていない。

【ホリデー】それもすごいw

【えりな】アナウンサー受けて受かったり。地方局でしたが。

【ホリデー】まじで!!すごいやん!えりなちゃんが女子アナの世界線が存在していたってことなんだ!おもしろ〜!

【えりな】でも結局美術のお仕事をするために映像製作会社に入りました。ここから元気にバリバリ働くはずが、ちょっと体壊しちゃって、入社して1年ぐらいで辞めることになってしまって。

【ホリデー】制作の現場ってほんとハードだもんねえ。

【えりな】今はまぁ元気です。その時にあの思い出したのが中学の時に思った自分は言葉と声の仕事がやりたいっていうことなんですよね 。

【ホリデー】へ〜!そこをちゃんと思い出せたんだ。

【えりな】高校の時に先生に誘われてスピーチの大会に出たんですよ。千葉県ってスピーチとか弁論とかってすごく強い地域なんですけど、素人で県大会準優勝したりして、それがまあ楽しかったことを思い出しました。まずは25歳までにスピーチの日本一になろうと決意。今は日本2位です。

【ホリデー】え、今さらっと言ったけど、決意して、日本2位ってすごくね?えりな、恐ろしい子。

【えりな】そこから今はそのスピーチの仕事だったりだとか、喋り方とかを、皆さんにお教えするボイストレーナーの仕事もしてます。

【Caol】ちゃんと12歳の時に思ったことに回帰している。

【ホリデー】でた、エリクソンの法則!

【えりな】そうですね。今職業にしているスピーチって、12歳のときに思っていた、言葉と声の仕事のまさにそれなんですよ。ただし、スピーチの仕事なんて日本になかった。だから作っています。

【ホリデー】いや、まじですごい。ない仕事を作る、ってほんとすごすぎる。
 ボイストレーナーは想像がつきますが、スピーチで身を立てていくみたいな事って、ちょっと想像しにくい。そういうところにチャレンジするって、勇気が半端ないよなあ。僕はそこまでチャレンジャーになれない。

【えりな】いや~、逆にチャンスと思って。スピーチをすることでお仕事しているって言う人は自分以外聞いたことはないですからね。

【ホリデー】まさに先駆者だ。ファーストペンギンってやつですね!いやあ、三人それぞれ、キャリアもそれぞれですねえ。

【Caol】そうなんです。で、この3人のキャリアを足すと、公務員全てと大企業、中小企業で働き、国家資格を持った仕事をして、起業して会社をやったり、個人でアーティスティックな仕事をしている、とほぼ全てが網羅できているのではないかと思います。

(3)キャリアアンカー

【えりな】今回は、キャリアアンカーの話です。なんか難しい話になるみたいです。そもそもキャリアアンカーって何ですかね?

【ホリデー】そういえば、僕も言葉はなんか聞いたことあるけど、改めて考えてみると、それがなんなのか全然知らないなあ。

【Caol】はい、まず、アンカーというのは船の碇のこと。船が停泊するときには、碇をおろして港から動かないようにするよね。波や潮で多少は動いても、碇をつないでいる鎖の長さを越えて動くことはない。船の碇のように、人の考えを固定して、離れられなくなってしまうモノのことをアンカー、アンカリングと言います。

【えりな】ふんふん。アンカーの意味は知っています。

【Caol】キャリアのことじゃないけれども、お金のことで最初にいくら、と呈示されるとその金額がアンカーになって、その先の金額の評価、高い安い、というものに影響を与えることをアンカリング効果と言います。例えば、欲しいものの値札が1万円、いくらになる?と聞いて7000円とかだと安い、となるけど、本当は7000円の物に1万円の値札を貼ってある、とすると値札がアンカーとして働きます。

【ホリデー】あ〜。それわかります。正直、僕のやっているデザイン業って、価格ってあってないようなところがあって、自分で「アンカリング」することが結構大事だし、難しかったりしますねえ。

【Caol】キャリアにもアンカーがあって、好きに選んでいるようであっても、キャリアにはその人の持つ価値観が反映していて、アンカーとなる考えや基準があるのに、それに気づかずに無意識に選んでいることが多いんです。

【えりな】なるほど。それは一言で言うと「どうしても譲れない価値観」ってことですね。例えば業種のこだわりってことですね。ここはわかる。

【Caol】まあ、そんなところです。初回の「給料高い、残業ない、仕事もやりたいこと、全社員参加の運動会がある会社」に就職したいか、というのは、人の持つ価値観、つまり何が良くて何がやりたくないか、避けたいことは何か、が反映しています。

【ホリデー】なるほど、ちょっと分かってきました。

【Caol】そんな自分自身の「キャリアアンカー」を知ることが、適切なキャリアを選んでいくために、大事だったりするんですよ。

【えりな】なるほどなるほど!それは自分も知りたいです!

【Caol】そうなんですよ。私も今回このキャリアアンカーについて色々調べていく中で、自分のキャリアについても自覚的になったり意識を変えることができたなあ、と実感しています。おすすめですよ!

【ホリデー】おお〜、いいですね!で、キャリアアンカーってどう考えていったらいいんですか?

8つのキャリアアンカー

【Caol】シャインというキャリアの研究を専門とする心理学者は、キャリアに関するアンカーの内容を研究して、キャリアアンカーには8つの種類があるんじゃないか、ということを理論化しました。その8つは、
1 特定専門分野・機能別の能力
2 全般管理能力
3 自立・独立
4 保障・安定
5 起業家的創造性
6 純粋な挑戦
7 奉仕・社会献身
8 生活様式
です。

特定専門分野・機能別の能力 

まず1つ目。「特定専門分野・機能別の能力」。これは特定の業界・業種・分野にこだわる。専門性の追求のことです。

【ホリデー】あ、これは僕のことですね。まさにデザインという専門分野にいる身としてはめっちゃわかる話です。

【えりな】それを言ったら、私のスピーチって分野なんて、もっとニッチな専門分野ですよ!

全般管理能力

【Caol】2つ目。「全般管理能力」とは、管理運営調整やプロデュースの能力を活かし、マネージャーの仕事をしようとすること。専門家として能力を発揮しようとする一つ目のアンカー「特定専門分野・機能別の能力」とは逆の性質のものです。

【えりな】ホリデーさんはしゃちょーさんですよね?これが大事な人なの?

【ホリデー】成り行きで社長になってしまったところはあるので、向いているかどうかはわかりません。悩みが多いですね。ただ、僕もいい歳になってきたので、他人や組織をプロデュースする、ってところに自覚的になったところはあります。

自立・独立

【Caol】次に進みまして、3つ目。「自立・独立」これは自律的に仕事が進められることを重視する、ってことです。

【えりな】これはかなり現代的な項目ですね。Z世代はこれ重視する人多い。

【ホリデー】あ、僕もこれ、結構わがままにやってきた気がする。

【Caol】まあ、ここの3人はそうだろうなあ、と思います。はい、それでは4つ目。「保障・安定」これは生活の保障、安定を第一とする価値観ですね。

【えりな】「公務員になりたい!」ってここの項目ですね。

【ホリデー】えりなちゃんから一番遠い気がする。

【えりな】いやいや、安定大事ですよ〜って親は言っています。

【ホリデー】親かーい!

起業家的創造性

【Caol】5つ目。「起業家的創造性」。これは、自らのアイディアで起業、創業することを望むこと。

【ホリデー】あ〜〜。今まさに僕はこれですね。デザイン会社を立ち上げて、さらに新事業を立ち上げているところで、その事業とチームをどう育てていくか、ってところが最近の自分のホットトピックなのです。

【えりな】いいですね〜!ワクワクします!

純粋な挑戦

【Caol】6つ目、「純粋な挑戦」。これは新しいこと、誰もしたことがないことに取り組むことを求めることです。

【えりな】ドキッとしちゃいました…。日本にまだない職業を開拓しようとしているのは、まさにこれだ…

【Caol】ちょっと補足すると、5つ目の「起業家的創造性」は、最終的には企業を作りたい、自分の会社を大きくしたい、組織的なことに取り組みたい、ということ。
 これに対して、6つ目の「純粋な挑戦」は、もっとパーソナルなこと。例えば、発明家が新しい発明をしたい、科学者が新しい発見をしたい、みたいなイメージですね。

【ホリデー】なるほどなるほど!よくわかります。

奉仕・社会献身


【Caol】7つ目、「奉仕・社会献身」これは、仕事の上で人の役に立っているという感覚を大切にする、ということです。

【えりな】パッと思い浮かぶのは、福祉や医療のお仕事の人のイメージですね。

【ホリデー】そういえば、今はSDGsって言葉が、だいぶ普及してきましたけど、特にえりなちゃんのようなZ世代は、こうした「ソーシャルグッド」な事を大事にする価値観を持つ子が多い、ってイメージがあります。

生活様式

【Caol】次で最後の8つ目。「生活様式」。これは仕事と生活のバランスを保つことを重視するって事です。

【ホリデー】いわゆるワークライフバランス、ってやつですね。

【えりな】最近話題の週休3日正社員とかがこの項目に関係している?

【ホリデー】あ〜、確かに。こういう価値観を大事にする人が増えてきているのでしょうね。

【Caol】という8つのキャリアアンカーについてざっとお話ししてみましたが、いかがでしたでしょうか?

【えりな】あ〜、これ私のことだわ、って思う項目があったりして、よくわかりました。特に6つ目の「純粋な挑戦」ってのが、私にピッタリでしたね。

【ホリデー】僕もめっちゃ理解が進みました。そして、若い時に感じていたであろう自分のキャリアアンカーと、経営者になった今、自分が感じているキャリアアンカーに、変化があるんだなあ、という事に気がつきましたね。

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