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イギリスの大学院の授業概要

ご無沙汰していて恐縮です。
9月上旬にロンドンに到着以来、すっかりnoteから遠のいてしまっておりました。
想像していたほどの超絶忙しさではないのですが、まとまって振り返りをする機会は意識しないと作れないですね。

日本で教員をしていたUCLの先輩からも伺ったのですが、教員の方が間違いなく忙しいです。もちろん職場の人にはそんなこと言えませんが…。ただ、「リーディングが終わらない」といういつも心情的に何かに追われていることと、始業/終業という仕事の区切りがなく、勉強することはいくらでもあるので、いまいち余暇の解放感がないという点では院生の方が嫌ですね。
(教員をしているときも授業準備にはキリがなかったので、追われている感+余暇の解放感の薄さは同じだったかもしれません…。笑)

久しぶりに開いてみたら、予想に反して見てくださっている方がいたようなので(考えてみれば私も留学決意からIELTS受験、出願、現地到着まで先輩方のブログに頼りきりでした)、少しずつまとめて振り返りをしていこうと思います。

まず、下記の学習内容については私個人の記録(n=1)であることを心に留めていただいて、一サンプルとしてご活用ください。
また、授業の概要ということで、つまらないことも一応情報として羅列してありますから、海外大学の授業に興味がない人にとってはあまり面白くないかもしれません。
面白かった授業内容など突っ込んだ話は、また追い追い書きます。

年間スケジュール

これ、自分が入学するまで中々分からなくて困ったことなので、共有しておきます。

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私が在籍しているUniversity College London (通称UCL) MA Educationの年間スケジュールは上記のとおりです。
「大学名+term date」などで検索すればきっとその他大学でも探せるかと思います。 

Term3は6月までですが、その後はDissertation執筆期間ですね。まだ発表されていませんが、恐らく9月が修論提出締切かと思います。授業もなく、ひたすら篭って修論を書き続けるという、厳しい期間ですね。
学部時代好きだった先生が授業で「論文執筆は難産なんですよ」と言っていたのを良く思い出します。おそらく卒論ではなく、修論・博論・その他研究論文のことだったと思いますが。大学院で以前修論を書いたときも難産で、こんなひねり出したような苦しい論文で良いのかと苦悩しながら、でも知識の一番外側の殻を広げたり隙間を埋めたりすることはきっとこういう難産のような作業なんだろうと納得した覚えもあります。

ちなみに、UCLの大抵の友達はDissertation 10000 wordと言っていますが、何故かIoE(Institute of Education。UCLの教育学部門)はほとんどDissertation 20000 wordです。倍です、倍。
最後、絞り出してひねり出しているんだろうなと、今から想像がつきます。

・Reading week
各学期の最中に、通常であれば1週間くらいのReading weekと呼ばれるお休みがあります(そこでたくさん読み物が出るコースもあれば、いつもと変わらない=一週間純粋にお休みというコースもあります)。でも、なぜか私のコースはReading weekがありません!どうやらコースに依るようです。

・課題提出時期
これもコースによって全く異なりそうです。
私がTerm1で取っている授業の課題・発表は下記のとおりです。

11/4 23:59 WIE 1000 word Initial reflection
11/26 WIE Distributed Expertise Reading
11/28 16:00 AIP 1000 critical review of one of the course readings from session 1-6
12/13 23:59 WIE Agreeing title with your tutor
1/6 23:59 WIE Essay draft direct to your tutor
1/9 16:00 AIP 1000 word draft of the main assignment
2/24 23:59 WIE 4000 word Final Submission
3/2 16:00 AIP 4000 word essay answering one question - see list in module handbook

とりあえず特徴としては、学期間(Term1-2の場合は年末年始)はEssayの執筆に追われるというのがイギリスの大学院において挙げられそうです。
12月13日にTerm1の授業は終わるにも拘らず、そこで学習したことの総括となるEssayは2月や3月まで執筆し続けることになるようですね。
(1月中旬にEssay最終提出という友人もいるので、本当にコースに依るようですね。2~3月にTerm2の勉強と同時並行してEssayを書き上げるのは厳しいので、私も年末年始で完成させる勢いで頑張ります)

私は幸いExamはなく、全てEssayによる評価の授業だったので、Examの場合は分かりません。

ちなみに、私がTerm1で取っている2つの授業は、いずれもEssayで100%成績がつくようです。授業は2回より多く休んだら自動的に単位認定なし(やむを得ない事情の場合は相談になるのだと思いますが)だったり、授業中もディスカッションでの発言やグループワーク等への参加は求められますが、「出席点」や「授業内活動による成績」といったものは少なくとも私が取っている授業では無いようです。
友人の授業では、プレゼンテーションが成績に含まれることもあるようなので、こちらも本当に大学・コース・授業に依りそうです(この記事全てこれしか言っていない)。

・授業数
ここが入学してからの一番の驚きポイントでした。
私のコースは合計180 creditsで修了、必須のDissertation(修論)は60 credits、各授業は30 creditsということで、修論以外の授業はまさかの年間4つです。年間。
これには同じコースの友人たちは皆かなり驚いていました。Term1と2で授業を各2個取ったとして、週2回しか学校に行かないのかと。
ちなみに、他のコースの友人は週に4コマ(講義とセミナーで授業が分かれているので、合計週8コマ)ある人もいますので、かなりコースや大学によって異なる印象です。LSEやKing'sの友人ももう少し授業が多い印象です。

Term3は修士論文に集中したかったので、私はTerm1に授業2つ(必修1、選択1)、Term2にも授業2つ(必修1、選択1)という形にしました。下記が私の取る授業です。

必修授業
・教育とは何かを考える授業
・研究手法について学ぶ授業

選択授業
・教育評価についてその問題と実践を考えていく授業
・教えるということ&学ぶということについて批判的(Critical)な視野で考えていく授業

授業スタイル

●授業前
・Compulsory readingが毎週大体1クラス毎に2本程度(大体全部で週100ページ弱程度)出るので、それを読み込んで、論文に対する自身の考えを言語化したり、自身の教育経験に引き付けてその有効性や限界を考えてみたりする。
・授業スライドやDiscussionに使う課題がアップされていることが多いので、それを読み込んでいく。
授業期間前は、週2コマしかないから他の授業を聴講しようかと画策していましたが、蓋を開けてみるとリーディングがかなり忙しい+課題が出ればそれも同時並行で行うことになるので、勉強量としては結構十分な印象です。

脱線しますが、このリーディング量も大学・コースによって全く異なります。理系の友人で「授業は全て講義なのでリーディングはない」という人もいれば、LSEの友人で「週300ページ程度リーディングがあるので、全部はとても読めない。上手く概要だけ掴んでいく技術を身につけないと時間が足りない」と言っている人もいます(少なくとも私の周りでは、LSEはえぐっている学生が本当に多いです。なぜでしょう…笑)。
私は今くらいのリーディングであれば(本来はSuggested readingなど、その他の論文も読むべきかと思うのですが)、日本語に置き換えて緻密に把握出来たり、現場への活かし方を考える時間があったり、興味関心に近い部分は内面化できているように思います。

●授業(どちらも3時間1セット。Part-timeで参加している現職の先生が多いので、私が取った授業はどちらも17:30-20:30)
・前半部1.5h程度は講義。
講義といっても最中に近隣複数人で軽いディスカッションを行ったり、手短な課題に取り組んだりすることもある。
また、個々がスマホ・PCから参加できるクイズやアンケートなどを行えるサイト(Menti.com)を利用して個々の声を集約することもある。
授業の規模によっては講義といってもその最中に質問がどんどん生徒から飛んだり、日本の大教室講義よりははるかにinteractiveな印象

下記は各授業の講義教室。授業前の様子だったりしますが。

画像3

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↑Menti.comはこのようにして、例えば「"Assessment"と聞いて思いつく単語を3つ投稿してください」などとすると、皆が何を連想するのかがその場でイメージ図になって出てきます
生徒たちの中で、ある概念のイメージがどのように変化したのか「授業前」と「授業後」二回行って比較すると面白いと思われます。

・後半1h強はセミナーグループに分かれてディスカッション。
15~20人程度のグループに分かれ、ディスカッションをします。チューターが様々質問を投げかけて、講義内容やリーディング内容について皆でディスカッションを行う授業もあれば、その場で課題が明かされ複数人で制限時間内にプレゼンを作成して最後に各班発表する授業もあります。

このディスカッションが一番きつい。今はやや慣れましたが、初め数週間は全くついていけない週もあり、かなり凹んだこともありました。
たとえば、イギリス人+シンガポール人+私などでディスカッションをして、英語ネイティブの人たちの会話のスピードが速い中で、イギリスの教育事情が分からなくて文脈が予測できなかったりすると、会話の中身が分からなくなってそこから発言できなくなってしまいました。
グループワークの最後で、「あなたあまり喋らなかったから、発表しない?」なんて言われると最悪ですよね。発表してグループに資したい気持ちは山々ですが、ついていけなかったのだから内容をまとめられるはずもない。恥を忍んで、「ごめん、あまり理解できなかったから発表できそうにない」と言うことになるわけです。(実話)
シンガポール人が英語ネイティブだなんて知らなかったよ…(無知)
分からないことは「分からない」とか「それってこういう意味?」とか早々に確認して、文脈を掴み続けることの重要性を感じました。そうすれば、発言してグループワークに資することができる機会はあるので。
さっぱり分からないことが積み重なってしまうと、何の意見を言えばいいのかすら分からなくなってしまうので、分からないということをしっかり表明することの重要性を認識しました。

●授業後
・課題以外には課されるreflectionはありませんが、個人的には振り返りをしておきたいので、Twitterで授業の要点をまとめて投稿したり、展開が早くて分からなかった重要(そうな)部分を、iPhoneの録音で聞き返したりすることもあります。

人的資源

少し流れから外れた項目になりますが、人的リソースの豊富さについて非常に羨ましく思ったので、項目立て。

教育論の方の授業は、module leaderと呼ばれる授業の管理者(教授)がいるのですが、毎回別の研究者がゲストスピーカーとして講義をしに来ます
同じ大学に勤めている教授が多いのですが、立派な教授がたくさん週替わりで来て、自身の実践や教育観などを話します(事前のリーディングにその人の論文が入っていることが多いです)。
さらに、その講義を教室の端で10人弱の大学講師が聞いていて、セミナーセッションになると8グループ8教室に分かれることになります。
大体120人程度で講義を聴いていたのが、後半には15人程度のグループになって、端で聴いていた講師のファシリテーションによってディスカッションをするわけです。

教育評価論の方の授業は、生徒40人程度ですが、教授が2人常にその授業にはいて、前半の講義が終わり後半のセミナーセッションになると、2グループ2教室に分かれてディスカッションをします。

さらに、生徒一人ひとりに必ずpersonal tutorとacademic tutor(私のコースは同一人物)がついてくれます
学習上の悩みや分からない点、課題に関する相談やフィードバックはこのtutorが行ってくれます。tutorも教授たちです。中にはmodule leader級のお偉い教授がtutorについている友人もいます。

さすが学費が高いだけあり、人的資源は日本の比較にならないと感じます。

思えば早稲田の大学院時代も特論やゼミなんかだと10人程度の授業は当たり前だったり、何なら欠席者が多いと教授の部屋で4人くらいで授業が行われたこともあったので、そこまで特別なことではないのかもしれませんが、大人数授業が途中でグループごとに分かれたりするのは日本で受けたことがなかった教育形態です。

うーむ、概要ってそんなに楽しい情報がないですね。

教育的に面白かった話とか、授業外の生活の話なんかもそのうち書きます。授業の面白かった話はTwitterくらいの文量が一番書きやすいのですが、一般公開しているアカウントは無いので、noteで頑張ります。

さて、明後日の授業の論文がまだまだ読み終わっていないので、予習に戻ります。ではでは



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