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第15話 ロボ君、輪廻の森の3つ目のルールに反論する。

「でもそれは、銀色や金色の木の実をたくさん持っている者にとっては、何の意味もないルールですよね。人間の社会にもいましたよ、悪いことしてもお金で解決すればいいと思っているようなヤツ。そんな甘いルールよりも、もっと厳しい罰を与えるべきだと思いますよ。例えば、相手を傷つけるような行動をした者は、一年くらい刑務所に入るとかね?そっちの方が、ずっと効果があると思いますよ。」
と、ロボ君はなんだか不満そうな口調で言いました。

「残念ながら、輪廻の森には刑務所が無いんだよ。この森では人間に生まれ変わるまでの準備を、皆に楽しく進めてもらいたいからね。1年も刑務所にいたらあまり楽しめないだろう?たしかに、『誰かを傷つけるような言葉を言ったら、銀色の木の実1個、誰かを傷付けるような行動をしたら、銀色の木の実3個を罰金』として取るルールは甘すぎるかもしれないね。ただ、今のところはそのルールで上手くいっているから、もしもっとルールが必要になったら、その時考えるとしようか。」
と銀色の鳥は少し疲れたようにロボ君に言うと、カピちゃんの方に振り返りました。

「カピちゃんは、輪廻の森のこの3つのルールについてどう思うかね?何か質問はあるかい?」
と、銀色の鳥はカピちゃんに聞きました。

「その銀色や金色の木の実を集めて、何に使うんですか?あと、もし誰かが悪いことをたくさんして、手持ちの銀色や金色の木の実が1つもなくなってしまったらどうなるんですか?」
と、カピちゃんは銀色の鳥に聞きました。

「銀色や金色の木の実は、この森では色々なものを交換できるんだよ。食べ物だったり、音楽だったり、便利なものだったり、色々なものがこの森では売られているんだ。『売る』というのは、お金と交換で色々なものを交換する人間社会の習慣で、非常に便利で面白い習慣だから、この輪廻の森でも取り入れることにしたんだよ。」
と、銀色の鳥はニコっと笑ってカピちゃんに応えました。

「そして、もし誰かが悪いことをたくさんして、手持ちの銀色や金色の木の実が1つもなくなってしまったら、もう一度1週間学校に通ってもらうことになる。学校に1日行く度に、銀色の木の実が1個渡されるからね、1週間通えば7個の銀色の木の実が手に入ることになるよ。そして、学校では相手を傷つけるような言葉や行動をしないためには、どうすればいいかを話し合って学んでもらうんだよ。人間社会の問題の1つは、相手を傷つけるような言葉や行動を取る者が、あまりにも多いことだからね・・・」

「相手を傷つけるような言葉や行動を取る者が、人間社会にはそんなに多いんですか?」
と、カピちゃんは驚いた顔で聞きました。

「そうだね。人間社会ではそういうことをする者が多いね。それが色々な問題を引き起こしているんだよ。『思いやり』という言葉があってね、それは相手の気持ちを考えるという意味なんだ。この『思いやり』があれば、人間社会や、動物やロボットの社会の問題はもっと解決されると思うよ。」
と、銀色の鳥は穏やかな声でカピちゃんに言いました。

「『思いやり』ですか・・・。あまり考えたことは無かったな。動物園のカピバラたちには、相手を傷つけるような言葉や行動を取る者はほとんどいなかったですからね。でも、これから人間に生まれ変わるには、そういったことも考えないといけないですね。」
と、カピちゃんは言いました。

「そう言ってくれてありがとう。この輪廻の森では、『思いやり』を学んでもらうことも、大事なことの1つなんだ。人間たちが『思いやり』をもっと持てれば、動物たちやロボットたちの状況ももっとよくなるからね。では、カピちゃんに『思いやり』を学んでもらうために、カピちゃんに1つお願いをしたいと思う。」
と、銀色の鳥は言うとなんだか真剣な表情になりました。

「見てのとおり、今ロボ君は学校に行きたがっていない。ただ、輪廻の森では必ず1週間は学校に通ってもらうことになっているんだ。人間に生まれ変わるまでに、学んでもらいたいことが色々あるからね。それに、輪廻の森でロボットを受け入れたのはロボ君が初めてだから他にロボットがいない状況で、ロボ君は大変心細い気持ちだと思う。だから、カピちゃんにはロボ君の友達になってもらって、一緒に学校に通って欲しい。」
と、銀色の鳥はカピちゃんの目をじっと見て言いました。

「僕は友達になってくれなんて、一言も言ってないですよ。」
と、ロボ君はちょっと怒ったような口調で言いました。

「まあロボ君、友達はいた方がきっと楽しいよ。それに人間に生まれ変わるまでに何年もこの輪廻の森にいないといけないのだから、話し相手がいると良いだろう。カピちゃんには、ロボ君が学校に通うまでは学校に行かずに待ってもらう予定だから、二人で一緒に友情を育んで、ロボ君が学校に行く気になるまで、二人で輪廻の森の生活を楽しんだらいいと思うよ。まあ、学校へ行かないと銀色の木の実はもらえないから、生活はちょっと不便かもしれないが、それも勉強になるからね。」
と、銀色の鳥はニコっと笑って言いました。

~第16話につづく~


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