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第10話 カピちゃん、ロボ君に会いに行く。~その1~

「生活を楽しんでいる人間もいるし、楽しんでいない人間もいるよ。人間はこの世界で最もパワフルな種族ではあるんだが、その力をあまり良いように使っていない者が多くてね・・・カピちゃんも人間に生まれ変わったら気をつけないといけない。力の使い方によって、この世界は良くも悪くもなるからね。」
と、銀色の鳥は穏やかな声で言いました。

「人間のように強い者達でも、生活を楽しめないことがあるんですね。柵の外に出られるだけでも、楽しいと思うけどなあ・・・。」
と、カピちゃんは人間のことがよくわかったような、よくわからないような気持ちになって言いました。

「人間としてどう生きるべきかについては、これから学校で学ぶことができるよ。あと、学校へ行く前に、ぜひカピちゃんにはロボ君に会って欲しいと思っているんだ。ロボ君は1週間くらい前にこの森に来たんだが、なかなか学校に行きたがらなくてね・・・でも、カピちゃんがロボ君の友達になってくれれば、ロボ君も学校に行きたいと思ってくれるかもしれない・・・。」
と、銀色の鳥は少し心配そうな口調で言いました。

「そのロボ君っていう子は、学校に行きたくないんですか?なんで学校に行きたくなくなったんでしょう?」
と、カピちゃんは不思議そうに銀色の鳥に聞きました。ずっと動物園にいて退屈していたカピちゃんからしてみれば、学校はなんだか面白そうなところに思えたからです。

「学校の先生の1人が猫でね。猫と言っても、何回も生まれかわった経験がある、人間社会に非常に詳しい良い先生なんだが、ロボ君は猫が苦手みたいでね・・・。どうも、生きている時に猫に襲われてケガをしたことがあるみたいなんだ。だから、猫がいるなら学校には行きたくないとロボ君は言っていてね・・・。」
と、銀色の鳥は溜め息をつきながら言いました。

「猫っていう動物が学校にいるんですか?・・・ロボ君が襲われたことがあるなんて・・・恐い動物じゃないんですか?」
と、カピちゃんはビクビクしながら銀色の鳥に聞きました。

「大丈夫!この学校の猫の先生は非常に落ち着いた良い方で、襲ったりなんかしないよ。その先生はタマ先生という方でね、『人間と動物のコミュニケーション』についてみんなに教えてくれているんだ。ロボ君を襲った猫も、おそらくイタズラのような気持ちだったのだろう・・・猫はロボットを食べないからね。それに、この輪廻の森では食べ物を食べる必要がないから、誰かに襲われるようなことはまずないから安心していい。万が一何か他の動物とトラブルがあったら、ワシに相談して欲しい。」
と、銀色の鳥は穏やかな声で言いました。

「もしトラブルがあったら・・・相談・・・します。」
と、カピちゃんは言葉に詰まりながら言いました。学校にいる猫ってどんな動物だろう?という不安で頭がグルグルし始めたからです。

「ではさっそく、これから一緒にロボ君の家に行ってみようか。ロボ君も友達ができれば、学校に行きたくなるかもしれないからね。カピちゃんが輪廻の森に来てくれて本当に良かった。これからロボ君の家に案内するから、私に付いてきて欲しい。」
と、銀色の鳥は言うと、羽を羽ばたかせて地面から飛び立ち、カピちゃんの後ろ側にある木の枝に止まりました。

「わかりました・・・ロボ君の家に行ってみます。」
と、カピちゃんは色々な話を聞いて胸がどきどきしながらも、決心したように言いました。

~第11話につづく~

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