抱負、なんて言ったら春日に怒られる

2019/04/22 午前2時記す

 22歳になった。いつもおめでとう言ってくれていた幼馴染から連絡はなかった。寂しいものがある。ショックだったと次会う時に伝えてもいいのだろうか。それとも気にしていない感じのほうがいいだろうか。正直に言ったほうがいいのかどうか、いやはや難しい。相手を傷つけまいという姿勢が、余計に傷つけてしまうということがある。何度も僕はそれで失敗してきた。

 同級生の多くが就職活動を始める、つまり彼らにとってはモラトリアム最後の年だ。同級生と書いたが、僕と親しい同級生の多くは院に行くか、僕と同じく一浪なので就職しない。だから、就職に対して焦りというものが全くない。

 祖父母に会いに行った。部屋を整理しているときに見つけたと言って、僕が幼かった頃の写真を見せてくれた。整理、と言ったのが気にかかった。写真はいいな、と思った。自分が忘れていることを記憶しておいてくれる。自分が幼かった頃の記憶などない。それを少しは思い出すきっかけになる。記憶を捏造してしまうことはあるかもしれないけれど。

 祖父母は僕が幼かった頃の話をしてくれた。僕が生まれた日は雨が降っていて、夜には止んでいたらしい。母に隠れて近所のスーパーマーケットまでソフトクリームを食べに連れて行ってくれた。公園の遊具でうまく遊べなくて不安だったらしい。僕が幼かった頃のいろんな話をしてくれた。よく覚えているものだ。

 僕は祖父母に孝行できているのだろうか。皆、誰しも自分を不孝ものだと思うのではないだろうか。きっとそういうものだろう。

 自分の進みたい道に進めと、何度も何度も言われた。手に職をつけるために、叔母を大学へ行かせなかったことを、そのことで今も恨まれているからと。非常に難しい話だと思う。祖母は祖母で、叔母のためを思ってそうしたのだ。

 当然、社会に出ている時間は親の方が長い。子供は、社会の大変さを分かっていない。もれなく僕もそうだ。安定した暮らしを親は子供に求めるだろう。けれども、時代性をわかっているのは恐らく子供の方だろう。スマホもうまく使えない人に、偉そうなことを言われてたまるかなどという反発が容易に想像できる。叔母が選択を迫られた当時のことはわからない。まだ時代が変化する速度は今に比べると遅かっただろう。だとすれば、祖母のアドバイスの有効性は割と大きかったのかもしれない。

 社会に出て得た経験と、時代性を読み取る力の相克。もちろん社会に出たからといって、視野が広いとは限らない。どんな職業なのか、それによるところは大きいだろう。

 この問題は、母と妹にも再び起こった。脈々とちは流れている。妹が明らかにそれは怪しいだろうという選択肢を提示してきたことがあった。実際は違うけれど、例えば、大切な人が、怪しげな新興宗教に入会したいと言われたらこんな気持ちになるのだろうと僕は思った。簡単な話ではない。伊坂幸太郎や浅野いにおの作品の中に、このテーマが扱われているものがある。

 親がどこまで干渉するのか。子供がきちんとした判断力をどうやって獲得するのか。かつて自分が持っていた問題意識を思い出した。

 そろそろ眠くなってきたので切り上げたいが、最後に22歳の抱負のようなものを記しておこうと思う。そんなことを言うと春日に怒られそうだけれど。箇条書きで書く。

1 スマホを触らない。

 常にスマホがないと不安だと言う現代人の病に僕ももれなく罹患している。いやむしろ薬物中毒と言った方がいいのか。どちらでもいい。とにかくスマホはドラッグだ。スマホをいじっている時間ほど無駄な時間はない。その時間があれば、何冊の本が何本の映画が見れただろう。どれだけの音楽が聴けただろう。どれだけの文章が書けただろう。起床後にその日に聴くラジオを確認する際、移動中に聴く音楽の選択、そのぐらいのことしか実際はスマホを使う必要はない。しかし、気がつくとSNSを見てしまっている。スマホからの卒業がまず一つ目の抱負だ。

2 毎日、日記をつける。そして写真も撮る。

 日記が長続きしたことがない。しかし書くという行為はすごく楽しい。こんなことを考えていたのかと新たな発見がある。無意識が現れるような感覚になる。誰かと話すときのネタにもなるだろう。日々考えていることについて、単純に頭の中が整理もされる。そして、後で見返す楽しみが増える。写真もそうだ。人の写真を撮ろうと思う。

3 体を動かす。

 あまりに姿勢が悪いし、体力が低下している。今日、ゆっくり時間をかけてストレッチと、筋トレをしてみた。こんなに汗をかくものなのだと驚いた。身体性というものを獲得したい。

 まだあるのだろうけれど、今思い浮かぶのはこれくらいだ。また思いついたら追加しようと思う。

 ANNでゲストの弘中綾香に、目標はないのかと問われて、若林と春日は返答に窮した。でも若林はきっと、目標を持っていると思う。春日は多分、本当に持っていないと思う。若林は、その目標をいうのが恥ずかしかったんじゃないかな。あまりにもまっすぐ弘中綾香に質問されて。僕にも目標のようなものはある。でも、まっすぐ聞かれた時にうまく返せるかというと、自信がない。なんとなく考えてもいいのかもしれない。