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紀州の巨大梅干しは昔ながらの「しょっぱ~い」味

父親が和歌山で梅干しを買ってきた。
一般的なサイズの梅干しと、でっかい梅干しの2つ。
でっかいほうは、見ているだけでもその肉厚さが伝わる。でっぷり、ふっくら。

あまりにも立派だからさぞいい店で買ったのだろうと思っていたら、寺のそばで無人販売していたという。しかも1パックなんと100円。
よく見ると皮に斑点のようなものがあるから、訳あり品扱いだったのかもしれないが、それでも破格である。
この写真を撮ったときには、もう何個か食べてしまったが、最初はパックにミチミチと詰まっていた。

こんな立派な梅干しなら、やっぱりご飯の上に載せてそのまんまで頂きたい。久々にご飯の友として梅干しを食べることにした。


梅干しとの付き合い

梅干しといえば、ご飯の友の第一党。
だけど、すっかりその地位は危うい。私も冷蔵庫に常備しているものの、普段は梅干しをご飯の友にはしない。どちらかというと調味料として使う。梅干しを入れたカレーを何度か作ったこともある。

せせりとオクラの梅カレー

今は色とりどりのおかずもあれば、瓶詰めのご飯の友的存在が、スーパーやプチ贅沢な食料品店の売り場の棚を賑わせている。そんな中、わざわざ梅干しを選ぶだろうか。

でも、冷蔵庫に梅干しがないとちょっとソワソワするんだよな。
頻繁に食べることはないけど、いつもそこにいて欲しい存在。
冷蔵庫にいるだけで、安心感を与えてくれると同時に身が引き締まる思いがする(酸っぱさのせい?)存在。冷蔵庫の重鎮。

とはいえ、常備していたのはちょっと安物。中国産の梅で作ったもの。だから紀州のでっかい梅が我が家に来たときは大喝采。こんな立派なものを目にしたら、やっぱりご飯でいきたい。

やっぱり梅干しはご飯で!

ご飯の上に載せれば、堂々たる存在感。
箸で実を崩せば、プリプリ、艶やか、豊潤な果実感。
梅干しを見たらツバが出るっていうけど、この梅干しは「酸っぱそう」ではなく、とにかく「旨そう」なのだ。それでツバが出てくる。

甘露味を感じさせる艶やかさ

湧き上がる期待感と共に一口頬張る。

オースッパ……?

いやっ、からっ、塩辛っ!

酸っぱさよりも強烈な塩分のパンチ。
「からい」っていっても、「辛い」じゃなくて鹹い からいやつ。

塩分20パーぐらいあるんじゃないか?と思って調べたら、やっぱり昔ながらの梅干しはそれぐらいの塩分らしい。

最近の梅干しは10%ぐらいだから、その鹹さに圧倒された。

梅干しを口にするごとに、心臓がどくどくと脈打つ音が聞こえる。
こりゃいかん、一気に食っていかん。
でも、身体がご飯を強く求め、肚の中から力が湧いてくるような感覚がある。気付け薬を飲んだかのように、背筋がシャンと伸びた。

一気に食べると鹹すぎるから、梅干しチビチビ、ご飯ガツガツ。

ここでアッと気付いた。
ご飯と梅干しだけの日の丸弁当。
大量のご飯のおかず役を梅干し一粒が一手に引き受けるあの弁当。
今の塩分10%の梅干し基準ならとても食べきれないだろうと思っていたけど、このしょっぱさの梅干しなら、イケる。

強烈な塩気と旨みで、一気に梅干しとご飯をかき込んだ。ちなみに、写真のご飯では足りずにおかわりした。
食後は元気が余ってしょうがない。血流が巡り、なんだか火照ってきた。
どこからくるのか、何を頑張るのか分からないけど、「おっしゃやったるでー!」と活力が湧いてくる。
そんな力強さがあの一粒に詰まっている。

昔の食に思いを馳せる

昔ながらの塩分量(であろう)しょっぱ~い梅干しを口にしたら、昔の人はこれとどんなふうに付き合っていたんだろうか、思いを馳せずにはいられなかった。

今みたいにおかずがたくさんあるわけではないから、きっと、しょっぱ〜い梅干しでご飯をガツガツ食べていたんだろうなー。
皆が大きな梅干しを食べられた訳ではないだろうけど、塩分20%の梅干しなら、さぞかしご飯が進んだことだろうと思う。

ほかにも、肉体労働でいっぱい汗を流した分、しょっぱ~い梅干しでチャージしてたのかなー、とか。
風邪をひいたときにはそりゃ梅干しだよなー、とか。
でも、子どものうちは酸っぱくてしょっぱいから「梅干しイヤ!」ってなってた人もいたのかなー。とか想像が膨らむ。

昔ながらのしょっぱ~い梅干しを口にすれば、肚の中から活力が湧いてくる。梅干しが昔の人の元気を支えていたんだろうなー。そんな昔の情景が思い浮かぶ。
そして、今でもそんなしょっぱ〜い梅干しが残っている歓び。
このしょっぱ~い梅干しのおかげで、ようやく梅干しのよさが分かり始めた。

My Revolution

とはいえ塩分は高いので……

とはいえ、デスクワークの現代人には塩分が高すぎる。
特に自分は超インドア派。放っておけば家に基本籠もるから、梅干し分の埋め合わせで汗を流すのはたいへん骨が折れる。

せっかくの紀州の梅だからと、全部そのままいただこうと息巻いていたが、もう十分堪能した。ご飯の友にはちょびっと添えて、あとは調味料として余さず頂くことにする。

ということで肉じゃがをほぼ梅干しの塩気だけで煮てみた。
昔『伊東家の食卓』でこんなのをやってたっけ。

煮物にしたら塩分が具に溶けて、梅干しが持つ酸味と風味の良さが分かるようになってきた。塩分に隠れていた芳醇な果実味が顔を出す。
無論、ご飯の友として最適。

あとはイワシも煮てみたい。それに、梅塩ラーメンってのもよさそう。
スープは豚か鶏のゆで汁で、味付けは梅干し任せ。

ウンウン。どんどん口の中でヨダレが溢れてきた。

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