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五種類の具材でも「八宝菜」

〽1 いっぽんでも ニンジン
 2 にそくでも サンダル……

「いっぽんでもニンジン」作詞:前田利博 作曲:佐瀬寿一

という数え歌があるけれど、私はここに、
「五宝でも八宝菜」
を加えたい。

え、五から八に飛んでるから、数え歌でも何でもない?まぁまぁそれは置いておいて……

八宝菜の「八」は具材の数を指していうのではなく、単純に「数の多さ」を示しているという。日本では「八」百万の神というけれど、本当に数えたかというとそうではなく、こっちもやっぱり「数の多さ」の表現です。

だから、別に八種の具材がなければならないということはないわけなんですね。私はかつて、「〜せねばならない」を旨とするセネバダ州の住人であったけど、今は「適当でいいんでない」を旨とするインディナイ州の住人であるからして、五種の具材であっても、「八宝菜」を作ろうというわけです。

なんで五種かというと、我が家では昔、作り方は八宝菜だけど、具材が五つしかないから「五宝菜」なんていって母親が作ってたからですね。それにちなんで五種の具材で作ります。

―—それなら「五目うま煮」でいい?

……「八宝菜」はなんてったって、八つの「宝」ですよ!コッチのほうが美味しそうだ!
ということでここはひとつ。


五種の具材選抜

常備されている材料で文字通り「八宝」を揃えるのは非常に困難です。エビ、イカ、きくらげ、たけのこの水煮なんかは、これを作ると決めて買わないと揃わない(エビ、イカはシーフードミックスでどうにかなるけど、うちは常備してない)。
うずら卵に関しては、お弁当を作っていたり、うずら卵をこよなく愛すウズラーの方なら常備しているかもしれませんが、これも我が家にはない。

突然「八宝菜作りたい!」ってなっても我が家の冷蔵庫に八種の具材が揃ってない。だからといってあきらめたくない。私の八宝菜欲はとどまることを知らない。
ならば、冷蔵庫にある食材から、数は八に満たなくとも、とりあえず頭数を揃えて行こうというわけです。

さて、具材の選別といきたいところですが、味付けの方向は先に決めておきましょう。八宝菜にはオイスターソース味塩味の大体2パターンあると思います。
味によって入る材料はちょっと違うと思っていて、例えば干しシイタケを入れるなら、戻し汁を入れたい。戻し汁には色がついているから、オイスターソース味のほうが似つかわしい……とかそんな感じ。

かつて我が家にあった「五宝菜」は醤油とオイスターソースの味付けだったわけですが、まぁ、なんというか、母は特段この料理が上手いというわけでもなかったようで……
せめて鶏ガラスープの素を入れるなり、生姜でも入れてくれればもっと良かったのですが……

今はこんな貝柱だしの素なんて便利なものがあって、本格的な味が出せますから、塩味ベースで進めます。

これほんまにうまい

それで選ばれたのが下の五種の具材。

豚肉

これを入れないでどうする!という具材。
エビもイカもうずらも入れないなら、これはもう必須になる。
小麦粉をまぶしておけば、煮ても柔らかいのでこの下ごしらえはやっておきましょう。

白菜

これは巻く葉物野菜なら正直なんでもいい。
キャベツでもいい。でもやっぱり味の染み方といい、白菜がいいでしょうな。
でも、変わり種としてレタスでもいい。レタス炒めは好きですよ、わたくし。

チンゲン菜

小松菜でも可。
あんまり入っているレシピを見かけないけど、足りない具材の枠を埋めるときにお呼びがかかるチンゲン菜。

「ちょっと頭数足りないから来てくれよ」と呼ばれるけど、意外と場を盛り上げてくれる。そんなヤツです。

人参

これがないと色味が締まらないので、何気に必須野菜かもしれない。
味の存在感はそんなに欲しくないので、薄めに切るのがいいでしょう。
普段、人参が余ったら太めの千切りにして冷凍しているので、それを使います。

白ネギ

きのこが冷蔵庫に入ってなかったので白ネギ投入。具と薬味を兼ねてくれます。後述の生姜と共にいい風味を醸し出すので、文字通りの「八宝菜」でもぜひ入れたい。

玉ねぎは味がボヤけるのであんまり入れたくないんですよね。塩味ベースならなおさら。玉ねぎはあらゆる料理にポンと入りがちだけど、個人的「本当に必要かどうかは考えたほうがいい野菜ランキング」第一位。

*****

あとは外部顧問として生姜に参戦頂きます。
生姜の有無で豚肉の味がまるで変わりますから、絶対に入れましょう。
物事に絶対なんてないから、普段「絶対」は使わないようにしてるんですが、これは絶対です。念を押します。

五宝で「八宝菜」を作ろう

せっかくなので中華鍋で作ります。
親の代から使っていた、私よりも年上の中華鍋。手入れがされていなくて、サビっサビのドロドロだったものをヤスリで削ってバーナーで炙ってなんとか復活させたやつ。

生姜を焦がさないように熱したら、豚肉を炒め、ネギ投入。
このあたりの火加減は慎重に。「強火ガンガン」一辺倒ではいかない難しさがありますね。

白菜と人参投入。シナっとしたらチンゲン菜も。
家庭で中華鍋を使う注意点として、「店みたいにガンガン振らない」ってことですね。具が増えてくると、むしろ触らずに放置する時間が必要なぐらいです。
家庭の火力だと大したことなくて、具材を入れるとすぐに中華鍋内の温度が下がりますから、具材投入毎に放置する時間を設けます。

スープで煮たら、水溶き片栗粉を入れて1分以上グツグツ煮ます。

できました。

五宝でも「八宝菜」を食べよう

スープが染みた白菜タップリ。豚肉やわ旨。チンゲン菜シャキシャキ。生姜と白ネギの風味が味に奥行き出して味の5LDK。

八宝なくとも、これで十分旨い!
「貝柱だし」のおかげでエビ、イカがいなくても海鮮がそこにいるのを感じます。
ここにキクラゲでもあればさらに雰囲気が出ますが、ある材料ですぐ作ったものとしてはもう上々の出来。ここにエビ、イカ、うずらなどあればさらに高みを目指せる余地がある。そんな伸びしろが恐ろしい。

だいたい、言われなきゃこれに文字通りの「八宝」がないって気づかないんじゃないか?と思いますね。これは言いすぎか。
でも、店の八宝菜を食べているとき、まじまじと「八宝」揃っているか数えたこと、ありますか?
私はいつも数えようとするんだけど、食べてるうちにどうでもよくなって、「なんかようけ入っとるわ~」となってしまう。
口に運んだとき、今何食べてるかは分かっていても、じゃあ全部で何種類入ってるかはすぐに忘れる。

私にとって、その「なんかようけ入っとるわ」カウンターの閾値がおそらく「五」。それ以下だとコレジャナイって思うけど、それ以上ならカウント停止。
ということで、私の舌は「五宝菜」以上で「八宝菜」認定が出る、というのが分かりました。

こんなおめでたい日には、もう歌うしかない!

「五宝でも八宝菜~」


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