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世界の不動産「所有権」について

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松尾 弘(まつお ひろし)様からの引用です。

日本は個人で所有権が存在していなかった・・・

(2)土地所有権の成立プロセス

日本における私的土地所有権の成立は、二方面から展開した。

一方では、(A)①幕府の直轄領に対する土地支配権および大名・領主に対する人的支配権を将軍から天皇に返還した大政奉還(1867年10月)、②天皇を中心とする政権の樹立である王政復古(同年12月)、③藩主から天皇への封土と領民の返上である版籍奉還(1869年6月)、④藩主権力の解体と天皇政権の集権化を強化する廃藩置県(1871年7月)、および⑤華士族の家禄・賞典禄を金禄化・公債化を経て廃止した秩禄処分(1869年6月〜1876年8月)により、将軍・藩主の土地支配権を、いったん天皇を中心とする国家(官)に吸収した。いわば公地公民制の形を変えた復活である。

他方では、(B)①貢租負担者であった土地の「所持」者に対する耕作制限を緩和して土地の利用の自由を拡大した田畑勝手作の許可(1871年9月)に続き、②同じく土地の「売買」の自由を拡大した田畑永代売買解禁(1872年2月)は「四民」に土地の所持を認めた。これは、その直前に行われた身分制から平等主義への一連の改革(平民にも苗字の使用、乗馬、華族との婚姻、穢多非人等の呼称廃止と一般民籍への編入、職業・居住の自由を認めた。1870年9月〜1871年12月)による土地所持の受け皿としての所持主体の拡大を踏まえ、「一地一主」の原則を形成し始めた制度改革であった。と同時に、③政府は東京府を皮切りに郡村地にも地券を発行し、その受領者に地租上納を命じる一方で、地券は地所の「持主」たる確証であるとした(1871年12月、1872年1月・2月)。その後、地租改正条例(1873年7月)により、全国的な土地調査に基づいて地価に従って課税する金納地租体制の確立を図った。その地券(壬申地券)の裏面には、地券は地所を「所有」する証しであるとされ、その後、地券によらない売買の買主には地所の「所有ノ権」がないとした(1874年10月)。こうして、あらゆる私人が土地を「所有」できることになった。

このように、いったん幕藩権力から天皇政権による国家が吸収した土地支配権を(前述(A))、新たに国家が私人に付与することにより(前述(B))、日本の土地所有権は徐々に成立していった。もっとも、(A)・(B)二つの側面の関わり方には問題が残された。

(3)公地思想と自由な所有権の相克

明治政府は、軍備増強資金の調達などの必要から、官林を払い下げて「私有物」とすること(1872年6月)、「官有地」と「民有地」(その第1種は「人民各自所有ノ確証アル耕地宅地山林等」)の区分(1874年11月)、いったん官有地に編入された土地の「下戻し」(「所有又ハ分収ノ権利」の取得)を認めた国有土地森林原野下戻法(1899年4月)などを通じて、徐々に私人の私的所有を具体的に認めていった。

法令上も「所有権」が次第に用いられるようになる。土地売買譲渡規則(1880年)4条、登記法(1886年)16条・19条、そして、大日本帝国憲法(1889年)27条などである。それに基づいて制定された民法(1890年)財産編2条2項第1・30条1項、民法(1896年)206条・207条などでも「所有権」の語が用いられ、定着した。そして、土地の「所有権」は、幕府・藩主による封建的土地支配や、その末端にあった村落共同体による慣行的規制が取り払われ、土地を自由に使用・収益・処分し、売買できる「権利」として純化された。土地の所有権も当事者の意思表示のみで移転できる意思主義を採用し(民法176条)、登記はこの権利移転を「第三者」に対抗するための要件(対抗要件)として、当事者の自発的登記に期待することにした(民法177条)。

しかし、土地の「所有ノ権」ないし「所有権」が土地そのものに対する私人の絶対的に自由な権利を意味するのか、国家の所有権を分有したものかは、なお曖昧であった。地券発行当初はもとより、それが一段落した頃になっても、国家が土地の所有権を保持し、私人には「土地ヨリ生ズル所ノ収穫利益ヲ売買使用スルノ権」(土地の使用・収益権)を付与したにすぎない(1882年7月、岩倉具視の三条実美宛て意見書)という見解が、政府部内には根強く残っていた。

大日本帝国憲法27条の起草者である井上毅も、臣民の「所有権」は、君主ないし国家が国土に対してもつ「原有権/オリヂナルプロパチー」(original property)に基づいて「小民ニ恵与」したものであるとする公地主義をなお支持していた(伊藤博文『大日本帝国憲法義解・皇室典範義解』[国家学会、1889年]56-58頁)。このように公地思想は1880年代になっても折に触れて繰り返し復活した。


引用

アメリカには家の権利書はないという衝撃の事実

こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。

「家の権利書はどうなっているのでしょうか?」

これはよく聞かれるご質問の一つですが、実はアメリカには日本のような家の権利書たるものは存在していません。

数十万、数百万どころか数千万、あるいは一億単位の支払いを約束させられるのにその権利書がない。。そんな不可解な事実がアメリカ不動産にはあります。

日本であれば家の権利書といえば家という財産の所有を証明するものとしてそれはそれは大切に保管されることでしょう。一度紛失してしまえばまず原本の再発行は無理でしょうから、普段は人目につかない金庫にでもしまっておくものだと思います。

このアメリカでは物事の管理は実に合理的に行われており、不動産という大きなハコモノの所有権も例外なく合理的に行われているのです。権利書も存在せずにどうやってアメリカの不動産は所有権が守られているのでしょうか?

実はアメリカで家の所有権を維持し、かつ売却後に他人に譲渡する場合にはDeed(ディード)という権利の運び屋ともいうべき書類が活躍しています。

その仕組みの細部を見てみましょう。

権利そのものは無形資産

「権利」というものを考えた時に、権利とは目に見えない無形のものです。

「これは私の家だ!」と主張してもその権利自体は目に見えないもの。当然ながらこの証拠として存在するのが日本であれば「家の権利書」という権利を証明する書類になるわけですが、それでもよく考えてみるとその書類自体は権利でもなんでもなくただの紙切れに過ぎません。権利とはあくまで不可視の存在であり、概念に過ぎないものなのです。

米国では家を所有する権利も従来の概念どおり「権利は無形のもの」と考え、家を所有するという権利は個人に帰属するものの権利書なるものは発行していないのです。けれどもっぱらこれはアメリカ不動産業界に見られる特有の権利保有形態であり、全ての資産となるべきものに権利書がないわけではありません。

例えば車にもピンクスリップと呼ばれる権利書は存在しており、新車であれ中古車であれ車を購入する際にはこの権利書が自分の手元に渡され、確固たる所有者としての権利の証明になるのです。バイクも同様にこの権利書がきちんとあり、車もバイクもDMVというアメリカの車両管理局で権利書をもってきちんと所有者としての登録がなされる必要があります。

しかしながら不動産の場合はこの権利書は存在せず、あくまで個人あるいは法人が対象となる物件所有のTitle(タイトル:権利)を保持している無形の事実がそこにあるのみです。

唯一の例外は政府所有の土地や建物を取得した際に政府より発行されるTorrens Certificate(トレンス サーティフィケイト)というものがあり、これは日本でいう家の権利書と同じで紙媒体の権利書になります。

それでは通常の物件売買の際は、個人/法人はどうやって物件に対する権利を証明すればよいのでしょうか?

無形の権利を輸送するDeed(ディード)

アメリカでは物件の所有権あるいはそれに付随する目に見えない権利を他人名義(あるいは親族名義)に譲渡する場合、Deed(ディード)という公文書を使用します。

ここで初めて紙媒体が登場しますが、Deed(ディード)はあくまで権利をAさんからBさんに移すためのものであり、権利書そのものではありません。繰り返しとなりますがTitle(タイトル:権利)はあくまで目に見えない無形のものであり、そのTitle(タイトル:権利)をAさんからBさん、あるいはBさんからCさんに移すための公的文書がDeed(ディード)なのです。

あなたがアメリカで不動産を購入した場合、Closing(クロージング:契約締結)のあとにはタイトルカンパニー(不動産取引においてその物件の所有権を取り扱う会社)からDeed(ディード)が送られてきます。前知識なしにはこのDeed(ディード)が日本でいう家の権利書に相当するものなんだろうと思い込んでしまいがちなのですが、実際にはそうではありません。

このDeed(ディード)はあくまで前所有者により新所有者であるあなたに対して権利の譲渡を宣する「宣誓書」のようなものであり、権利書のそれとは性質が異なります。そしてこのDeed(ディード)はあなたの手元に最終的に送られてくる前には対象となる物件を管轄するCounty(カウンティー:郡)の管轄局に登録がなされています。この管轄局に物件が譲渡された事実としてDeed(ディート)を登録することをRecording(レコーディング:記録)と呼びます。

宣誓書といえるDeed(ディード)を管轄局に登録することで対象の物件はあなたに譲渡され、あなたがその物件を所有していることがCounty(カウンティー:郡)を通して一般に公開されることになるのです。

アメリカの不動産所有証明としてはこの当局に登録された記録が大切であり、乱暴にいうと管轄局への登録後にあなたが手にするDeed(ディード)はさほど重要ではなく、仮に紛失しても何ら困らないものなのです。なぜならあなたが物件を所有している証拠はすでに管轄局に登録されてしまっているのですから。

まとめ

かくして、アメリカ不動産の概念としては日本で言う家の権利書なるものは存在せず権利はあくまで無形のままで所有されます。その無形の権利を他人(あるいは親族)に移す際に使われるのがDeed(ディード)と呼ばれるものなのです。

そしてDeed(ディード)はある種の宣誓書ですからそこに記載されるべき複数の項目が法律上定められていますが、そこには譲渡する側の特殊な意図を含めることもできます。

例えば、「この土地はビール工場の建設には使ってはいけない。仮にビール工場を建設する場合はこの土地と建物の権利は前所有者に戻るものとする」などという規約すら含めることができるのです。

また厳密にはDeed(ディード)には大きく分けて5種類ありますので項を改めてそれぞれの種類の名称と特徴についてお伝えさせて頂きたいと思いますが、今日のポイントとしては「アメリカに家の権利書は存在しない」そして「売却時に権利を譲渡する際に活躍するのがDeed(ディード)と呼ばれる宣誓書のようなもの」という点を把握しておきましょう。


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