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「アートの新しい流通スタンダードに必要な3つの革命」 藤本 翔 - メンバーインタビュー #01

こんにちは。Casieの晃大(@akio165)です。普段はデザイナーとしてWebや紙と向き合ってます。

記念すべきCasieメンバーインタビュー第1号はやっぱエモ本さんこと藤本 翔さん(@shofujimoto)にしといた方が無難だと思いましたので、今回インタビューを担当させていただきました。

Casieはメンバー同士を下の名前で呼び合う文化が定着してるので、ここから先は「翔さん」と普段通りの呼び方でインタビューを進めさせていただきます。

最近、翔さんが人前でお話ししてるところを見学したのですが相変わらずエモーショナルで事業に対する想い入れがやっぱり強いんだなって、感心しました。さて、そんな翔さんにCasie事業について社内でしか言わないようなことも含め詳しく伺ってきましたのでどうぞ。

目次
・作品を預けてもらえるまでが大変すぎた
・絵を買う体験の“難しさ”に感じた課題
・アートの新しい流通スタンダードに必要な3つの革命
・青山フラワーマーケットさんになりたい
・Casieチームは感覚NG

作品を預けてもらえるまでが大変すぎた

ー 事業開始から1年半くらいが経ちましたが、今の心境を教えてください。

Casieに関わってくれている全ての人に「ありがとう」の気持ちでいっぱいなんですよ。もうどうしたら良いか分からないくらい皆さんのことが大好きでたまりません。

メンバー、アーティストさん、ユーザーさん、パートナー企業さんに愛され、育てられ、時には怒られながらも事業が進んでいます。

ー この1年半の中で一番大変だったことは何ですか?

大変なことばかりだったので、1,000個ある一番大変シリーズの中から1つだけ紹介すると、画家さんから作品を預けてもらうことですね。もう壁しかありませんでしたよ。何回も心が折れて諦めようと真剣に考えたくらいです。

ー いつも翔さんが創業期のストーリーとして話してくれるので、メンバーはその大変さを知っていますが、改めて詳しく教えてください。

Casieは3人ではじめた会社なんですけど、創業メンバー誰一人として美大とか芸大を卒業してない。それだけじゃなく社会人キャリアもアート業界とは全く関わってないんですよ。だから画家のお友達がいないんです。画家さんがどんなことを考えてて、何に困ってて、どこに行ったら会えるのか。

SNSで検索して在廊情報をゲットしては個展に訪問して「預けてくれませんか?」って直接お願いしてました。でも、Casie??何それ??お前ら誰??という状況ですよ。当然ですよね。どこの馬の骨かも分からない若い3人に我が子のように大切に描き上げた作品を預けられるわけないですね。

あと当時。ってか今もですけど詐欺サイトみたいなのがめっちゃあるんですよ。英語で画家さんにメールやDMでコンタクトして、「うちのWebサイトに作品を載せませんか?月間10万人が訪問する世界最大のアート売買プラットフォームです」って感じで声かけて掲載した後に突然請求書が送られてくるパターン。

Casieもそれの新しい一種だと誤解されちゃいました。「預けた途端に毎月保管料とか請求されるんでしょ!?」って画家さんに言われた時には正直胸が痛かったです。

ー 画家さんが慎重になるのも理解できますね。その課題をどうやって解決して今があるんですか?

う〜ん。正直「これが決め手」ってのは分からないんですよね。画家さんに信頼してもらうために必死だったから。「保管倉庫見せてください」ってよく言われましたが、創業当初は身内のオフィスの一部屋を使わせてもらってたので見せられるわけもなく・・・・。

住宅ローンも組んだことないぼくが、人生で初めて銀行から大金借りて倉庫を作りました。何度も失敗を繰り返しながら棚を手作りで完成させたり、温度・湿度管理テストのため倉庫に何日も何日も連泊したり。

そんなこんなしてるうちに、作品を預けようか検討してくれてる画家さんが遊びに来てくれるようになりました。空っぽの棚が並んでるだけの、手作倉庫に。遊びに来てくれた画家さんと座って話をする機会が増えました。するとほとんどの画家さんから、「どうしてこんなサービスを始めようと思ったのか知りたい」って聞かれるのでそれをちゃんと説明すると作品を預けてくれるようになりました。

ぼくがこのサービスをはじめた原点をちゃんと話すと長くなるので、全文はコチラをご覧ください。



絵を買うのって何でこんなに難しいの?

ー 画家さんに対して本気で向き合う姿勢と体制を作った!ってところが今につながっているのかもしれませんね。翔さんはCasieのサービスをどんな風に育てていきたいですか?

一言で言うと「アートの新しい流通スタンダード」を作りたいな〜って思ってやってます。

実はぼく自身の原体験として、絵画をどこでどうやって購入すればいいのか分からずに悔しい思いをしたことがあるんですよ。

結婚したタイミングで安い賃貸マンションを借りたんですけど、その壁に絵を飾りたいと思いました。ネットで検索すると画廊や百貨店ばかり出てくるのでいくつか画廊巡りをしました。すると、とある画廊で60万円の絵を「今がお買い得」と紹介されたわけなんですが、まずもって圧倒的な予算オーバーですし、画家の名前を見ても全くピンと来なかったんです。背中に変な汗をかいて画廊を後にしました。この時に何でこんなに絵を購入するのが難しいんだろう!?という疑問を抱きました。

画廊や百貨店での購入を諦めて、次はBASEやminneなどのマーケットプレイスに出品されてる絵も物色しましたが、ここでもやはり意思決定ができなかった。現物を見ずに作品写真だけ見て決めるのは勇気がいりました。購入するにあたり個人的にはどんな画家さんがどんな想いを込めて作ってるのかを知りたかったのですが、その情報も少なかったんですよね。

だからSNSを通して数名の画家さんに直接会いたい!ってDMして実際に会いにいきました。すると画家さん本人に会って作品に対する想いなどを聞くと「あっ、これに決めた!」って思えたんですよね。

そこで驚いたのが画家さん自身が自分の絵を販売した経験がほとんどなくて、自分の絵をいくらで値付けにしたらいいのか分からないから決めてくれ!と言われたことでした。

さっきの詐欺サイトの話じゃないですけど、画家さんってまず自分の作品が誰にどう評価されるのか知りたくて必死になって発表の場を求めてるんじゃないかな??でも画家の数に対して発表の場が少なすぎる。画家さんにとって一番知りたいのは実際に自分の絵を飾ってくれる人からの評価なのでは??でも売れないと飾った評価は聞けないし・・・・・。


アートの新しい流通スタンダードに必要な3つの革命

だからサービスとしてどう育てていきたいかって聞かれると、答えはシンプルで「アートの新しい流通スタンダード」としてCasieを育てていきたい。

まずは予算を気にすることなく、月額1,980円から色んな作品・画家の絵を実際に自宅に飾ってみるところからスタート。カジュアルにアートの世界にアクセスしてもらいたいですね。

Casieがお届けするのは絵だけじゃなくて、作品に詰め込んだ想いが実際にその絵を描いた画家さんのプロフィールシートと一緒に届く。また、アートを基本の「キ」から学べるような学習コンテンツも同封されている。絵を返却するタイミングには画家さんに直接届く作品レビューシートを添えられる。この作品レビューシートが画家さんの手元に渡ることで、次の創作活動のヒントとなる。

何度か絵の着せ替えを重ねることで、アート初心者だった人でも自分が好きな作風を発見できたり、好きな画家さんとの出会いが生まれたりする。

Casieのサービスを通して、アートの新しい流通スタンダードをつくりたい。そのために必要な3つの革命が、

・アートの「選び方」革命
・アートの「買い方」革命
・アートの「作り方」革命

これをしっかりチームでやり遂げたいですね。

ー なかなかチャレンジングでやり甲斐がハンパない革命が並んでいますね。ワクワクします。翔さんが参考にしてる同業者さんとかありますか?

それはないですね。既存のアート業界って画家さんからお金を徴収するサービスが多いんですよ。もちろんそれはちゃんとしたサービスを画家さんに提供してるから健全なんですよ。Casieの場合は画家さんからお金をもらうスタイルではなく、ユーザーさんからいただき、その一部を画家さんに「報酬」としてお支払いするスタイルです。保管料なども画家さんからはいただきません。

今はほんと少額の報酬しか画家さんにお支払いできていませんが、年内に新サービスをリリースする予定なのでそれが始まれば、きっと画家さんにもっと喜んでもらえると思ってます。


青山フラワーマーケットさんになりたい

「新しい流通スタンダード」って部分で強烈に心震えたのが青山フラワーマーケットさんです。もはや絵画の青山フラワーマーケットさんになりたい!って思ってます(意味わかりませんね)

お花屋さんって昔、商店街のすみっこや駅から結構離れた場所にひっそりとお店を構えるところが多かったんですよ。でも地元に住んでる人なら「お花屋さんならあそこにあるよ」ってほぼみんな知ってる。

目立たない場所にあってもお花屋さんはちゃんと存在を知られてた。それはなぜかっていうとお花を送るタイミングが特定されてたからなんです。例えば母の日にカーネーション、お誕生日の贈り物、冠婚葬祭には欠かせない、回転祝いに胡蝶蘭みたいな感じで。そのタイミングが来る度にお花が必要になり、「あ、お花買わないと!そういえばあそこにお花屋さんあったよね」って感じでわざわざお客さんがお店にやって来る。だからお花屋さんは高い家賃を払ってまで目立つ場所にお店を構える必要がなかったんです。

でもここに突如登場したのが青山フラワーマーケットさん。超都会な駅周辺や駅ナカに次々とお店を出したわけです。しかも一番目立つ一番いい場所にお花屋さんを構えていった。

ディスプレイもこれまでのお花屋さんのように、「こんな感じで作ってください」スタイルではなく「えっ!?これ可愛い♪」って女性がキュンキュン来るパッケージ商品を並べる。

つまりこれ今までお花は単なる贈り物としてマーケットが成立してたけど、ここに「自分の部屋に飾る」とか「衝動買いする」っていう新しいマーケットを生み出したんですよね。ここから一気におしゃれなお花屋さんが登場したり、カフェで観葉植物を販売したりするところが増えて、お花を自宅に飾ることで自分の人生がちょっとハッピーになるを創ったんですよね〜。

絵画も同じようになってほしい。カジュアルに、衝動買いできる感じで自宅に取り込めるように。そして絵を飾ることで人生がちょっと豊かになる。その感覚を一般的に広げられたら、人の心を考えられる素敵な人類が増えると思うんですよね。幼少期の頃から自宅に原画が飾られてて、それを見て育った子供たちは感受性が豊かになり、大きくなった時にAppleやGoogleみたいに世界中の人にとって便利で無くてはならないカッコイイ製品やサービスを生み出すんじゃないかな!?って。

ー さすがはエモ本翔さんです。分かりやすかったです。最後に、新しい流通スタンダードを作るためにCasieはどんなチーム作りを目指しますか?

Casieメンバーが下の名前で呼び合うのは、友達と一緒に仕事してる感じがいいからです。普通に考えて嫌いな上司や部下と一緒に仕事するよりも仲良しの友達と仕事してて、それが社会にいい影響をつくってて、お金も稼げたら超最高じゃないですか。そんな会社があってもいいと本気で思ってるんですよね。

そもそも僕にとって仕事とは何かと聞かれれば、「世界に対するいたずら」と答える。Casieのサービスを通して世の中がちょっとサプライズしたり、ハッピーな気持ちになったりしてほしい。

ー 確かに他の会社あまり知りませんが、親や友達からも楽しそうに働いてるね。って言われます。

それは嬉しいね、ありがとう。最後にちょっと真面目な話をすると、今まで話してきたCasieがやりたいことってのは「社会に対して大きなインパクトを与える事業」で実現する。つまりは事業づくりなんですよね。現在は事業のカタチができたところ。次は成長に向けてギアを上げていく。

事業成長の基本は、目標数字を達成すること。定量的な短期・中期・長期目標を設定して、それをちゃんと達成していく。達成していくためにマイルストーンを置いて、具体的なアクションを起こす。具体的なアクションプランの設計に必要不可欠なのが正しい分析をすること。正しい分析ができてないと間違ったアクションを繰り返しちゃう。

Casieの事業においても、成長させるためには数字を基にした事実を的確に捉えて、正しく向き合うこと。そのためのツールは今の時代たくさんあるので、それらを使わずに感覚だけで動くことは危ない。なんだかアートな会社なのに感覚はNGって笑っちゃうよね(笑)でもそれでいいんですよ。感覚を爆発させて創作するのが画家さん。それを預かってゴリゴリの分析とアクションで作品を世の中に発表していくのがCasie。いい役割分担だと思いますよ。

ー ありがとうございました。


藤本 翔 / Sho Fujimoto
CEO
Casie Member
京都の大学卒業後、商社の営業マン2年、経営コンサルにてREビジネスの研究員9年を経て独立、株式会社Casieを創業。3人の子供を持つパパであり自然とのアクティビティーが大好き。

Twitter:@shofujimoto


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