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【2023 夏 高校野球】決勝戦 仙台育英vs慶應 どこよりも詳しく見どころ解説

第105回 全国高校野球選手権大会

決勝戦

仙台育英(宮城)vs慶應(神奈川)

2023年の夏の高校野球もいよいよ大詰め。

決勝戦というのは我々高校野球ファンに一抹の寂しさを感じさせるイベントでもある。
それは夏を彩ってくれた思い入れのある選手たちとの別れを実感する、そんな「ドラマの最終回」のような寂しさに似ているのだ。

2023年夏の激闘のフィナーレは仙台育英と慶應という、センバツ1回戦を戦った両チームによる決勝戦で締め括られる事となった。

仙台育英vs慶應

皆さんご存知だと思うが、この両チームは上述した通り、春のセンバツの1回戦で激突しており、その際は延長10回タイブレークの末、ショート山田のサヨナラヒットで2-1と仙台育英が慶應を破っている。

そして、この両校はこの夏の大会直前、7月2日に慶應大グラウンドで練習試合も行っている。
あくまで練習試合ではあるが、その時も仙台育英が同じくショート山田のホームラン等により4-2で勝利したようだ。

その練習試合の際に仙台育英・須江監督と慶應・森林監督はこんな会話をしたらしい。

「甲子園でまたやりたいですね。
 今度は出来れば決勝戦で。」

それが本当に実現してしまったのが、
この決勝戦である。

また仙台育英のユニフォームは学長の出身大学である「慶應大学」のユニフォームを元にデザインされていたりと、何かと縁のある両校。

「野球の神様」なるものが、本当に存在するのだとしたら、神様は2023年の夏にどのような結末を用意しているのだろうか。

センバツでの対戦

センバツ初戦での対戦を振り返ってみよう。

この試合では仙台育英は左腕の仁田、慶應は2年生エース小宅が先発した。

仁田は岩手県出身で花巻東のエース北條と同級生。仙台育英に進学し、昨年の全国制覇を経験した。

一方慶應の小宅は中学時代に宇都宮ボーイズで全国制覇を経験。そして小宅は宇都宮学園のエースとして活躍した影山投手の甥にあたる。

ともに全国制覇を経験する両投手。

この試合、序盤優位に試合を進めたのは慶應。
2回にヒットと四死球で1アウト満塁のチャンスを作るが、仙台育英・須江監督は早くもエース髙橋にスイッチ。これが功を奏し、髙橋は後続を連続三振に打ち取る。

一方小宅は仙台育英打線を4回まで内野安打一本に抑える上々の滑り出しを見せた。

試合が動いたのは5回、仙台育英・斎藤陽、尾形がレフト前にヒットを放ち、エース髙橋のタイムリーヒットで1点を先制する。

その後、仙台育英がやや優勢に試合を進めるが決定打が出ず1-0のまま9回へ。

粘る慶應は9回、1アウト2塁から代打・安達のレフト前タイムリーヒットで同点に追いつき、延長タイブレークに突入。

表攻撃の慶應は10回表、この回からマウンドに上がった湯田に対してツーアウト満塁まで攻め立てるが5番・清原勝児が三振に倒れて無得点。

10回裏に同じくツーアウト満塁からここまでノーヒットの仙台育英・山田がレフトへサヨナラ安打。

こうして2-1で仙台育英が慶應に勝ち、2回戦へと駒を進めた。

慶應のエース小宅は8回を投げ、8安打1失点。
夏の決勝を迎える今日思い返してみると、公式戦で今年の仙台育英打線をここまで抑えた投手はいなかった。

小宅の好投とともに、仙台育英・須江監督の巧みな継投が光った一戦だった。

決勝戦のポイント

センバツ、練習試合の結果はあくまで過去のものである。夏の激戦を勝ち抜いてきた今、両チームとも戦力はその時とは大きく異なるはずだ。

特に個人的には、仙台育英・慶應ともに打線の振りの鋭さという点で春とは比べ物にならないぐらいに成長を遂げていると感じている。

仙台育英・須江監督、慶應・森林監督ともに、この試合の1番のポイントは

「相手打線をどのように抑えるか」

この1点に絞られると考えているだろう。

両校のここまでの投手成績は下記の通り。

仙台育英
   イニング 被安打 三振 四死球 失点
湯田 21回1/3    17       27       4        7
髙橋  14回       18       16       4        7
田中  5回          8         8        1        4
仁田     2回1/3      2         0        4        0
武藤  2回          1         2        2        0

慶應
   イニング 被安打 三振 四死球 失点
小宅       23回      19      12      3         2
鈴木        8回         7        3       1         3
松井        4回         7        5       4         4

仙台育英は髙橋、湯田、仁田の速球派3本柱がチームの大きな特色だが、今大会においては須江監督の湯田と髙橋への絶大な信頼感が掴み取れる。
浦和学院戦こそ痛打を浴びたものの、湯田の27奪三振4四死球は本格派投手として出色の成績と言えるだろう。

一方の慶應はエース小宅の抜群の安定感が光る。甲子園の戦いにおいて23イニングで四死球3の2失点はお見事と言う他ない。リリーフの鈴木は非常にコントロールが良く今大会チームの大きな戦力となっている。

次に主戦投手の疲労度を考えてみる。

球数
仙台育英 湯田:322球、髙橋:207球
慶應   小宅:294球、鈴木:114球

ここで意外なのが、仙台育英の湯田投手の球数が思いの外多くなっている点だ。三振が多いだけにどうしても球数が増えてしまう。決勝でも登板が濃厚だが準決勝を43球で凌げたのは好材料だろう。

慶應の小宅の球数は、例年の決勝進出校のエースと比べると比較的少なく抑えられている。ただ準決勝の土浦日大戦で点差をつけられず、試合の流れから継投に踏み切れなかったのは痛い。
118球を投げての中1日、疲労が懸念される中で森林監督がどうマネジメントするかが見ものだ。

非常に力のある両校だが、戦力を忖度なく比較すると投打ともにやや仙台育英が上回る

慶應としては何としても仙台育英にビッグイニングを作らせない展開に持ち込みたい


その為に必要となるのは、インコースを意識させる事である。橋本、山田、湯浅、斎藤陽、尾形と並ぶ仙台育英の強力な上位打線は逆方向に強い打球を打てるのが強みだ。事実センバツの慶應戦でも4番斎藤陽が小宅からレフト前に3本のヒットを放っている。それだけにインコースを突いて、強く踏み込んでこれないようにさせる事が必要となる。

小宅-渡辺のバッテリーとしては、機動力と強力打線にひるまず、土浦日大戦同様に打者の膝元をつく投球を心掛けたい。

逆に仙台育英投手陣としては慶應打線に対し、前後に揺さぶる投球を心掛けたい。湯田は150キロのストレートに注目が集まるが、むしろスプリット気味に落ちる130キロ台のチェンジアップが1番有効だ。エース髙橋は低めの緩い球を効果的に使い、高めのストレートで詰まらせる投球を心掛けたい。

両チームとも打線の鍵を握るのは先頭打者か。

仙台育英の橋本は外のストレートをレフト前に打つのが非常に上手い巧打者だ。ここまで甲子園歴代4位の23安打を放っている。1位の清原和博氏が27本、2位の桑田真澄氏が25本とレジェンドクラスの選手の記録に並べるかにも注目が集まる。

慶應の1番丸田はイケメン球児として話題になったが、ルックス以上に実力に注目したい。シュアなバッティングと快足を生かすチャンスメーカー。U18の侍JAPANメンバー入りも噂される実力を見せると慶應としてはこの上ない武器となるだろう。

また仙台育英は山田、斎藤陽、尾形の優勝経験メンバーの上位だけでなく、下位の鈴木、住石まで長打も打てる本当にハイレベルな打者が並ぶ。

慶應は渡辺、加藤の3、4番が今大会本来の力が発揮できていない。その分今大会キーマンとなっている5番の延末の打撃がカギになるか。

昨年、優勝旗が100年以上越えられなかった白河の関を越え、その勢いで仙台育英が史上7校目の夏連覇を成し遂げられるか。

はたまた豊中球場で行った第2回大会で優勝した慶應が107年ぶりの優勝を「甲子園」で成し遂げられるか。

来年のセンバツから低反発バットが使用になる。つまり現行バットでの甲子園ラストゲーム。

手の内を知り尽くした名門対決に、野球の神様はどのようなエンディングを用意しているのだろうか。

決勝戦は慶應の大応援団がアルプスを埋め尽くすことが予測される。観客のボルテージも上がり普段とは違うムードの中での試合となるだろう。
どちらが平常心で試合が出来るか。
仙台育英にとって連覇に向けての最大の障壁は、意外にも球場の雰囲気なのかもしれない。

いち高校野球ファンとして、
最高の熱戦を心から楽しみたい。

甲子園ラボ

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