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ゲームクリエイターに必要な「コミュニケーション能力」ってなんですか?

こんにちは、サイバーコネクトツーの山岡です。
ゲーム開発においてコミュニケーションは必要不可欠です。

とはいえ、ゲーム開発においてコミュニケーションが重要なことはわかるけど、実際に何をしたら良いの?何が正解なの?と思っている若手クリエイターも多いのではないでしょうか。また、そもそも技術が無いとモノは作れないからコミュニケーションなんて後回しでしょ。という意見も多いと思います。

しかし、ゲーム開発においてコミュニケーションに起因する問題が良く起こっていることも事実であり、頭を悩ませている開発会社も多いと思います。

自分自身、絶望的に口下手でして、決してコミュニケーション能力が高い人間ではありません。だからこそ今回はゲーム開発に求められるコミュニケーション能力を掘り下げ、言語化してみたいと思います!

なぜゲーム開発にコミュニケーション能力が必要なのか

多くの方が理解されているとは思うのですが念のため。
理由は2つあります。

1つ目は、専門職同士の協力なくしてゲームの完成はありえないから昨今の家庭用ゲーム開発はゲームデザイン、アーティスト、プログラマー、サウンド、QAなど「専門職」が多く集まったチームで開発を行います。

あらゆるゲーム要素の実装にはディレクターの指示、ゲームデザイナーの仕様策定、アーティストのアセット作成、プログラマーによる実装、その他にもサウンドやQAなど様々な職種と人の連携なくしては実現はできません。連携の過程で必ずコミュニケーションが発生し、コミュニケーション能力の有無がプロジェクトの成功に大きく影響します。

2つ目は、クリエイティブという付加価値を生み出す仕事だから。
マニュアルに沿ったオペレーション作業であれば、コミュニケーションはあまり必要ありません。しかしクリエイティブではトライ&エラーや試行錯誤を繰り返して成果や結果を出すことが求められます。(マニュアル通り作って売れるゲームがが出来上がることはありません)

付加価値を作り出すには専門職のプロフェッショナルな意見やアイディアが必要不可欠です。なのでコミュニケーション能力が必要になるのです。

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前回のnoteでプロジェクトを成功させるには
物量 × クォリティ = 人 × スケジュール <= 納期・予算
を成り立たせないといけないと紹介しました。

じつはこの式には商品力や納期・予算に大きく影響する変数Xが存在します。それはチームのスキル、コミュニケーション能力、開発環境です。

物量 × クォリティ = 人 × スケジュール × 変数X(チームのスキル・コミュニケーション能力・開発環境) <= 納期・予算

変数Xは定数ではありませんのでチームや個人の能力によって変動します。また努力次第で大きくすることが出来るので、商品力や納期、予算に大きく影響します。

コミュニケーション能力とはなんなのか

クリエイターとして優秀な人の特徴として目的を達成する際のコミュニケーションコストが低い人が多いです。

コミュニケーションコストとは、相手との意思疎通がうまくいかず、余計な時間や手間がかかってしまう「損失」のことを意味します。

優秀な人は、目的や求められていることを理解し、準備や想定を組み立てたた上で仕事に取り掛かります。また、指示する際や報告連絡相談する際も相手の目線に立ってわかる言葉や求められている内容でコミュニケーションをとります。なので、成果物が意図しないものになりにくく、意思疎通で無駄な時間が発生せず目的を達成します。

役員やマネージャー、ディレクターなど役職や役割が高い人になると、さらにコミュニケーションコストは低くなり、指示が無くても行動し、先回りや提案することが求められますし出来て当たり前になります。

逆にコミュニケーションコストが高いケースとしては以下のようなケースがあります。

・質問や確認が無いまま目的とは異なる成果物が完成しやり直しになる
・オペレーションレベルまで細かく指示しないと伝わらない、作業してもらえない
・意見を聞かず、自分のやりたいことをやる
・同じ説明を何度もしないといけない
・誰に聞けば良いかがわからず手あたり次第に質問しまくる
・資料を確認しないまま質問をする
・ビジネスマナーや社内ルールから教えないといけない
・連絡事項を確認しない、質問に返事をしない
etc…

コミュニケーションコストが高いからダメという訳ではありません。新卒のスタッフは持っている経験、スキル、知識量からどうしてもコミュニケーションコストが高い状態にあります。大事なのはコミュニケーションコストを下げる努力を行い、無駄な時間、損失を減らし、付加価値を生み出す時間を捻出すること=クリエイターにとって必要なコミュニケーション能力なんじゃないかなと思います。

コミュニケーションコストを下げる方法

では、どうすればよいのか。
コミュニケーションコストのわかりやすい例を挙げます。

あるゲーム要素の実装に向けて仕様や実装難易度、スケジュールをすり合わせるためにチーム内の関係者を集めたミーティングを行います。

参加者Aは何も準備、確認しないままミーティングに参加。
参加者Bは仕様を一通り読んでミーティングに参加。
参加者Cは仕様を確認し、懸念事項と複数の対応策、工数感、スケジュール感の情報を持ってミーティングに参加。

ミーティング後の結果は

参加者Aはミーティングが終わってから仕様の確認、懸念事項の洗い出しと対応策の検討、工数やスケジュール感の確認を行う必要があり、実装が実現できるかどうかの判断はまだまだ先になりそう。

参加者Bは仕様を確認していたため、ミーティングの時間が掛かりましたが、懸念事項や対応策のすり合わせまでは出来た。あとは工数とスケジュールを算出して実現可否の確認になりますが、工数、スケジュールに問題がある場合は、また仕様面からのすり合わせになってしまう可能性がありそう。

参加者Cはミーティング内で複数の実装プランの内、どれを選択するかをディレクターに決定してもらい、次の日から作業に取り掛かる。

「いやいや、参加者は仕様を確認して懸念事項と対策を複数案用意すること、工数とスケジュールも準備した上でミーティングに参加してください。って指示してくれたらいいじゃないですか」という意見もあるかと思いますが、一つの指示でもコミュニケーションコストが高い人と低い人で大きく結果が異なるという一例になります。

コミュニケーション能力が高いクリエイターは、ゲーム開発の目的がオペレーションでは無くクリエイティブであることを理解しています。コミュニケーションコストを下げ、クリエイティブの時間を確保する必要があると考えるのでこういった違いが発生するのです。

前置きが長くなりましたが、コミュニケーションコストを下げる方法をまとめてみました。

●挨拶や勤怠、社内ルールなど社会人常識を知り、それを順守する
チームや組織には守るべきルールが必ず存在します。それを知らずに行動したり守らない場合、指導が必要だったり、イチから必要性を説明するコストが発生します。また何度も繰り返す場合は信用が下がり本来に担ってもらいたい仕事を割り振れなくなり、チームや組織にとって損失につながります。そんな当たり前のこと!?と思われかもしれませんが、当たり前だからこそ削減につながりやすいと思います。

●自身のアウトプットを利用してもらうことを考える
ディレクターもゲームデザイナーもアーティストもプログラマーも自身の成果物だけではゲームは完成しません。
指示して終わり、仕様書を書いて終わり、アセットを作って終わりではなく、次のだれかに正しく渡してこそ完成に近づくことを理解する必要があります。「伝える」ことは簡単ですが「伝わる」こととは違います。伝えるだけでなく、正しく伝わってこそコミュニケーションは成立します。

●ひとつ上のポジションを常にイメージして仕事を行う
先輩やシニア、リード、ディレクターなど自身が一つ上のポジションだったら、どう考え判断し決定をするかをイメージするとまったく別の世界が見えてきます。指示されたことの目的を理解した上で行動するのと、指示されたことをそのまま行動するのでは結果がまったく異なります。また、自身のポジションが上がった時に「初めてだから」というコストが無くなります。

●技術を磨き、知識を習得する
言わずもがなですが、選択の幅が広がり実現できる方法を提案できます。
また、絶対的なクオリティを約束することでコミュケーション不足を補うことが出来ます。

これらはほんの一部に過ぎませんが、共通して言えるのは「相手や組織の求めることに気づき、それを提供する力」です。それこそがコミュニケーション能力なんじゃないかなと思います。

まとめ

コミュニケーションについては多くのビジネス本が出版されているように、業界や職種、個人の能力や考え方によっていろいろなアプローチがあり、正解が無いものでもあると思います。

ただ、ゲーム開発においてはお客様やクライアントに対して結果を最大化しなければいけないということと、そのためにはコミュニケーション能力が大きく影響することは間違いないありません!

本記事はそのための一つのアプロ―チであり、なにかしらのヒントになればうれしいです!最後までお読みいただきありがとうございました!

サイバーコネクトツー 執行役員
山岡 寛典