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ショートショート48『全クリ、その後』

あれからもう20年くらいだろうか。

ラスボスを倒し、その後出てきた裏ボスまでも
倒し、名実ともにこの世界で無敵となった俺は
はじまりの村にある実家のベッドの上から
もう20年も動いていない。

まあ当然のことだ。
全クリしてしまったら神様はもうこの世界に興味はない。
また別のクリアしていない世界へと興味がうつる。

もう俺は二度とこのベッドから動けないのだろう。
神様がいなければ自分の意思で動くことはできないのだから…

カチッ
てってってれれれれ、てっててれれれれれ…

「うわ、画質悪っ!いや〜懐かしいなあ〜」

「パパ、何、このゲーム!目悪くなっちゃうよ!」

「ははは、たしかに俺がメガネになったのもこのゲームのせいかもな」

「ねえ、はじめからやろうよ」

「ダメだよ、せっかく育てて全クリしたデータが残ってるんだから。
やりたかったら新しいセーブデータを自分でつくってやりなさい。」

そして俺は神様の子どもとともに
第2の人生が幕をあけた。

「なんでキャラクターひとりしか選べないの!」



ポケモンのゲームやったことありますか?

ぼくはルビーサファイア時代の人間ですが
「チャンピオン」と呼ばれる人間を倒すことが
当時のポケモンゲームでの「全クリ」だったわけです。

当然、ぼくは全クリしたらゲームの目的を
達成できているわけなので、そこでそのゲームは終了。
もしまたやりたくなったらデータをリセットし
「さいしょから」を選択していました。

だって物語はそれ以降、進展しないから。

そしてぼくは大人になりゲームはほとんどやらなく
なったんですが、友人にいまだにポケモン好きな
やつがいるんです。(全国のランキングでも
上位に入るレベルらしいです)

そいつにこの話をしたら
「わかってないな!ポケモンは全クリしてからが
スタートだよ?」と言われました。

どうやら、ポケモンは
性格や種族値みたいなところを考慮して育成する
ことで同じレベルでも強さが変わってくると。

また対戦時も相手の2手先3手先を読んだり
タイプの相性を考えたりとかなり知的な要素が
たくさんあり、そういった本当に楽しい部分は
全クリしないとはじまらない。

と熱く語ってくれました。

だからといって
ポケモンをやりたいとはぼくはならなかったのですが
「全クリしてからが本当のスタート」というのは
色んなところで同じことが言える名言だなと思い
大切にしています。

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