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文フリで僕は喰らってしまった

あっという間に1週間が経ってしまったが、11月11日(土)に人生で初めて文フリに参加してきた。

きっかけは、友人の発行するZINEにエッセイを書いてほしいと声をかけてもらったことで、“なくてもいいもの”というテーマで文章を書かせてもらった。文章を書くこと自体は好きだったが、普段は書きたいことを書いているわけで、依頼されて書くのは初めての経験だった。「そうだよ、僕はこういうことを待っていて、これまでも文章を書き続けていたんだよ」と、声をかけてもらった瞬間は涙が滲むほど嬉しくて、即引き受けたことを覚えている。1ヶ月ほど悩み、書き上げた文章に「おもしろかった」「依頼してよかった」の感想をもらえた時には、すべてが報われる気持ちがした。本当に良かった。

エッセイ以外にも、のみもののレシピや対談企画、かわいいイラストに溢れるZINEの詳細は以下からチェックしてみてください。

https://note.com/nakutemoiimono/n/ne6a9dabad564

第二弾も出すみたいなので、また依頼されるように頑張りたいし、もし関わらせてもらえるならもっと貢献したい。編集メンバー宛の私信になってしまうが、よろしくお願いします。

制作したZINEを出展するというので、冒頭に戻り文学フリマというイベントに参加してきたのだが、恥ずかしながらそもそもイベントについてよく知らなかった。公式HPでは、以下のように書いてある。

文学フリマは、作り手が「自らが〈文学〉と信じるもの」を自らの手で作品を販売する、文学作品展示即売会です。
小説・短歌・俳句・詩・評論・エッセイ・ZINEなど、さまざまなジャンルの文学が集まります。
同人誌・商業誌、プロ・アマチュア、営利・非営利を問わず、個人・団体・会社等も問わず、文芸サークル、短歌会、句会、同人なども出店しています。参加者の年代は10代〜90代まで様々です。
現在、九州〜北海道までの全国8箇所で、年合計9回開催しています。

https://bunfree.net/

実際に出展しているのは、商業作家やインフルエンサー、芸人もいたが、それはごく少数で、多くは名もなき書き手たちだった。歴代最多の1万人を超える来場者で溢れる会場は、文字通り熱気に満ちており、出版不況や活字離れは嘘なんじゃないかと感じる。これだけ創作に、文章を書くことに思いを持った人たちがいて、その愛を恥ずかしげもなくさらけ出すことができる場は素敵だ。その情熱にほだされて、僕も短歌集やエッセイ集を買い漁ってしまったことは言うまでもない。

またこの場に戻ってきたいと感じたし、この人たちにこの場の熱量に恥じないものを作りたい。熱気で火照った身体を、一気に寒くなった秋の夜の冷気でクールダウンさせる。制作メンバーでの打ち上げに向かうため歩く平和島駅までの道のりでそんな事を考えていた。

打ち上げでは、声をかけてくれた友人が手がける2つのZINEのメンバーが集まり、総勢10名ほどのにぎやかな会になった。初めましての人も多かったが、ライター、編集者、校正者、書店員、デザイナー、イラストレーター、の同世代が集まっている場で、創作やクリエイティブから離れた仕事をしているのは僕だけという珍しい環境だった。フリーで仕事をしている人も1人や2人ではなく、もちろんとても楽しい場だったのだが、憧れと劣等感の入り混じった悔しさも感じ、5時間があっという間に過ぎた。「こういう仕事(=書く仕事)しないの?」と聞かれ、うまく返せなかった。やっぱり恥じないものを作らなければ。

そんなことを感じて1週間。とんと書けなくなってしまった。いいものを書かなければ。中途半端なものは世に出せない。読んでくれる人に何かを感じさせなければ。そんなことを思いすぎるあまり、筆が進まない。それどころか、いつも文章を書いているメモアプリさえ開けなくなってしまっていた。

どうやら僕は、文フリで喰ってしまったらしい。創作を志す人の熱量に、同世代の輝きに対する憧れに。

重い腰を上げなければと思いながら、発売されたばかりの松岡茉優のエッセイ集を読んでいた。書けなくなっていた僕は、読むことにも何かしらのアウトプットを求められている気がして、まともに向かえなくなっていたから、彼女の自然体な文章や対談での語り口にとても助けられた。そして、当たり前のことに気付かされた。

別に、僕の文章に興味がある人はいない。読みたい人がいるわけでもなく、僕自身が書きたいから書いている。そしてそれでいい。それを読んでくれていた友人が声をかけてくれたからこそ実現した機会じゃないか。書きたいことをこれからも書けばいいのだ。

書くことから離れているうちに、書けないくせに書きたいことは思いつくものだから、書きたいことリストだけが増えていく。不思議なものだ。これからも、泥臭く書きたいことを書き続けていきたい。いつかまたやってくると信じている次のチャンスのためにも。

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