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「和菓子のアンソロジー」読了

「和菓子のアンソロジー」坂木司他著(光文社文庫)

この本は10作の短編から成り、それぞれ作者が異なる。
「和菓子」をモチーフにそれぞれの短編は作られているが、これほどまでに多ジャンルの話が出来上がるのかと、正直驚いた。
そして、どれも読後感が幸せを呼ぶ感じも、またいい。

私が特に印象に残ったのは、恒川光太郎さんの「古入道きたりて」だった。古入道という幽霊の正体は実は身近な人間なのかなと、書かれている文章を元に色々空想させられた。
幽霊の話だが、不思議と心が温かくなる話でもあった。
この雰囲気と、作中にでてくる「夜舟」(おはぎの別名。春は牡丹餅、夏は夜舟と呼ぶらしい)が、よく合っていた。

和菓子と聞いて私がまず思い浮かぶのは、みたらし団子だ。純粋に私の好物でもあるし、あの串に行儀良く刺さってちんまりと皿に乗った様子が日本的なイメージと重なる。
どら焼きも捨てがたい。皮のカステラみたいな感触と中身の粒あんが絶妙なバランスだ。

「和菓子にまつわる短編小説」を、一度書いてみたくなった。
創作意欲を刺激させられる、そんな一冊であった。

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