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俺とandymori

突然現れた「FOLLOW ME」のMVを観た時、これは一体何なんだ!と心躍った。
暴れている…いやむしろ燥いでいる犬みたいに見えた。

完全に俺の中の印象なんだけどandymoriは本当に犬みたいなバンドだと思った。
「犬みたい」って何かバカにしてるっぽく聞こえるかもしれないが、愛くるしさや、どこか獰猛さもあり、ぬくもりがあって、幸せを感じたりする全てを楽曲から感じれるような気がする。
決して知的ではないとかそういうことを言いたいわけではない。

喜びなのか悲しみなのか怒りなのか、もしかしたらその全てなのか。
衝動にあふれてありのままであどけない感じなのにどうにも捻くれた一面をのぞかせてくる瞬間は、動物的で、人間の多面性にも思えた。

凄く良い感じた部分が何なのかはわからない。ただのブルースとも違うしパンクとも違うような、言い表せないものではあったと思う。
当時のこの年代は新世代感のあるバンドがたくさん出ていた。
00年代の流れを汲みつつ、様々なロックジャンルのミックスが増えた頃だと認識している。
様々なブームもあった。ざっくり代表的なものだと四つ打ちとか、テクニカル系、エレクトロ系の同期とか、色々。

andymoriはそういう渦中には属さなかった印象だけど、後に一つの形式として影響を受けたフォロワーも多いと思う。
曲の短さもそうだけれど、その中に詰まった陽気さと相反するような黒さが絶妙で、さらにそれがあっけらかんと歌われることで中毒性の高い楽曲が多かった。

時折ハッとのぞかせる歌詞が絶妙で、噛みつかれたような、でも決してそれは攻撃性を孕んでいるものではないところがいい違和感だったのかもしれない。
あんまり挙がることのない曲だと思うが「ずっとグルーピー」と言う曲が好きだ。というか、二曲続けて「僕がハクビシンだったら」まで自転車で駆け抜けるような爽快感と、感情のジェットコースターが少年期のソレと合致していた。

この曲が、急に教会っぽい風景に変わる瞬間は、「美しいものを見たあの瞬間」を切り取っているようでいつも気持ちがドキッとさせられる。

そしてドラムの交代やらで音楽性が少しずつ変化し続ける頃、俺はandymoriのライブを見た。
「革命」と題されたアルバムは少しずつ成熟する音楽と、包括する雰囲気がどこか行ってしまいそうな疾走を少しずつ緩め、首輪をつけた番犬のようになった。
そいつは夕暮れのようなぬくもりや肌寒さをより感じて、そこにまた優しさを感じつつ、自分より早いペースで老いてかれるような感覚もあった。

革命リリースのツアーでライブを観た。
その少年みたいな声があどけなさと危なっかしさがあって凄く格好良かった。
声がサラバーズの古館くんみたいにガラガラになっちゃうとか言ってた気がする。
あとモッシュ。そこで行くんか!と押されて少し焦った覚えがある。

次のアルバムリリースされた時には、眼差しに差し込む光が俺には優しすぎて、どことなくわがままな少年だった俺はそいつを放って違う音楽を探してしまった。

それから5枚目のアルバムのリリースの報も、ひとの口から程度で聞いたあとにandymoriが解散するニュースがあった。
何となくだけどああ、終わるんだぁって気持ちがぼんやりしていて、俺は俺でこの頃がずいぶんひどかった時期だったこともあり、そこまで激しく心が動かなかった。

最後のアルバムはヨコ君から借りて聴いた。変わらず優しい音が流れていた。
かつては噛みつくこともあったこの犬みたいなバンドはしっかり老衰してしまった感覚だった。
その代わり、あらためて温もりを感じる事ができたアルバムだった。

その前後か分からないが、ニュースで小山田さんが捕まってるのを見た。
ええ、何してんの?ハーブ?まあもう1枚目でキマってる雰囲気あるからな…。
とか思ってたら飛び降りた。ええ?何してんの!?

何だか、綺麗に終われないところが実に生々しくて、人間を見た気がする。
楽曲のキレキレさから勝手に器用な人間だと思っていたのだけどそうでもないようだ。

一年後くらいに何だかんだで解散ライブが実施された。
後から拝見したそれは思った以上に透明な感じで、少しだけキラキラを覗かせていたが、それは最初持っていた、いや、演じていたそれとは全く別の輝きだった。

最初に飼っていた犬とは違うように。


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