～ガツガツとイモをむさぼり喰う。 うまい、うますぎる。～ それ以来、わたしは 我慢するのをやめてしまった。 はたらかざるもの食うべからずとか、 そんなことをいうのは食べるよろこびをしらない輩である。はたらかないで、たらふく食べたい。 こうして、わたしは社会人であろうとすることをやめてしまった。

けれど、しばらく思案してから、こう思いなおす。たぶんおれはもう、 神にひざまずくことにうんざりしているのだ。ほかの天使たちとの他愛ない おしゃべりに嫌気が差しているのだ。もう一度反旗を翻そう。おれは自分を知っている。まちがいなくもう一度反乱を起こす。そして彼は思う。神は 全知だ。おれが今考えていることも筒抜けになっている。だから、心から 赦しを求めたところで、赦してはもらえない。そこでサタンは結論する。それなら心変わりを求める理由もない、と。

堕ちていない魂にはふたつの面がある。ひとつは今の自己。こっちはもしかしたら 罪を犯しているかもしれない。もうひとつは未来の自己、こっちはたぶん 犯していない。彼らがどんなことをしたのであれ、そんな魂を永遠に追放することはできない。彼らの未来は彼らの過去とはまったくちがうからだ。しかし、堕ちた魂にはひとつの面しかない。あなたは彼らの端に到達することなく、まわりとぐるりと一周できる。だからサタンは『失楽園』 で最強のキャラクターなのだ。彼は三次元に存在する。一方、神や 大天使たちは、おまけにイヴさえも、二次元的だ。

空がコンピューターゲームにおけるリアルさの要だとしたら、それは同時に、ぼくらの世界の非リアルさの要なのではないだろうか？ テクノロジーと自然が入れ替わる一点があるのだ。

だけど、それでも大学という空間がある限り、生の拡充がなくなることはないとおもっていた。大学当局がどんなにくだらない制度設計 をしても、それとはかかわりなく、全国から有象無象が集まって きてしまうからだ。わけのわからぬ出会いがおこる。就職のためであれ なんであれ、大学にきた目的をとびこえて、おもしろいことをはじめて しまう。それが大学というものなのだが、いまやそこにオンライン化。 未知と遭遇するその機会すら奪われる。それをうながす震動すら うまれない。音の痛みすら感じない。授業をやればやるほど、人間から 遠ざかっていく。身体を失っていく。きっと大学に期待していてひとほど、そのショックは大きかったことだろう。

僕は、ストックがない。アイデア帳もない。いつもゼロから 書き始め、書いているうちに思いつくことで、作品を完成させます。足りない材料は調達しますが、もともとあったものではないのです。ですから、倉庫はいつも空っぽなのです。 だから、同じ方法でいつまでも繰り返すことができます。

「要するに、自分はもっと成長する、という幻想を持ちながら、人は歳を重ねるんじゃ」