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(人材育成の話)イノベーション人材に必要な2つの人間力④「信頼力」について

「心理的安全がない状態」でイノベーションを起こす

前回の記事:(人材育成の話)イノベーション人材に必要な2つの人間力③「自律力『補足』」の続きとなります。
また今回のテーマである「信頼力」に触れている記事は2021年6月18日の記事:)(人材育成の話)イノベーション人材に必要な2つの人間力①に出てきます。
上記記事の中で下記の文章を書きました。

イノベーションを起こせる組織は「心理的安全性のある組織」
イノベーションを起こせる個人は「心理的安全性がない状態」でも行動できる「自律力」と「信頼力」を持つ人材

この文章には2つの意味を込めています。
1つ目は「心理的安全性のある組織」という組織内の状態があっても組織外においては「心理的安全性がある」とは言えない世界が広がっていること。それであるならば、もし組織内で心理的安全性があったとしても心理的安全性のない世界で活躍できる人材でなければダメなんじゃないか?と言う意味です。
2つ目は「心理的安全性のない組織」においてもイノベーションは起こす必要があり、その意味でも「心理的安全性のない状態」でもイノベーションを起こすことができる人材が必要である、ということです。

実はちょっとこのところは議論が必要で、心理的安全性のない状態で行動できる個人がいるなら心理的安全性ってなんのために必要なの?とか、そういったことも考えていく必要があります。ただ今回は複雑にしたくないので、この議論は深掘りせずに進めていきます。

それで前回まではその力のうちの一つ目「自律力」について書きました。
今回は「信頼力」についてです。
この「信頼力」という考え方は私のオリジナルではなく、株式会社シンギュレイトの鹿内さんのお考えに私が議論をしながら整理した内容となります。

「信頼力」とは何か

「信頼力」とは「相手を信頼する力」のことです。
通常「信頼」という言葉を使うときには「信頼される」との意味で使うことが多いのではないかと思うのですが、この場合の「信頼力」は「相手を信頼する力」ということです。
イノベーションのキーワードはここまで出てきたように「結合」です。
いかに新結合を作っていくのか?
いかに人と人、モノとモノ、概念と概念、サービスとサービスと組み合わせて新結合を作っていくかが重要です。
この「信頼力」とは多くの人と出会い、結合していく力であるということです。
この「信頼力」は理論として、社会心理学の山岸俊男氏の「高信頼者」を背景にしています。詳しくは山岸先生の著書「安心社会から信頼社会へ」と「信頼の構造」をお読みいただけますようお願いします。
この記事ではこの「高信頼者」の理論を背景につぎのような人材像を提示してみます。
「信頼力のある人材は社内社外に関わらず、初めてあった人、情報が少ない相手に対しても信頼をし、ともに仕事を始めることができる。
ただこの行為はお人好しであることではなく、相手を観察し、信頼に値しないサイン、ともに仕事をする価値が低いかどうかを見抜くことができる
もし信頼に値しないことが分かった場合、すぐに切り替えることができ、ともに仕事をすることを中止し、またつぎの結合のための相手の探索に向かうことができる」

イメージできますでしょうか。
こういった人材がイノベーションに必要な新結合を作っていく際に、人に出会っていく力を持ち、一方で切り替えることもできるのです。
私は以前、企業の商品開発×心理学という活動をしていて、そこで多くの方と会っていました。多くの可能性が生まれ、多くの失敗をして、少しの成功をしました。現在は違う事業に力を入れていますので、活動休止中です。その時、私はともすると相手を信頼する行動はとても出来るのですが、お人好しなところが多く、あまり相手を見抜くことが出来ませんでした。その時一緒に動いている方が、よく私にアドバイスしてくれていました。
「あの人は〇〇という表情を良くする。この案件は美味しく見えても失敗する。やめましょう」といったアドバイスです。実際その案件はその後の進み方をみるとやめてよかったとなりました。
まず相手を信頼する、とびこむ。しかしながら観察をし、問題があればこだわらずにすぐに撤退し、次をさがす、ということです。

「楽観性」「神経質」「柔軟性」

「信頼力」のイメージをつけていただいたかと思いますが、ここで「信頼力」を分解してみます。上記のタイトルで書きましたが、分解すると「楽観性」「神経質」「柔軟性」ではないかと考えています。
「楽観性」は「なんとかなるか!」という自分への自己効力感や世界への信頼です。「出会ったら盗人と思え」ではなく、まずは人間に対しての善性を信じていること、またもし何かあっても自分は対処できるであろうとか、致命的なことにはならないだろうといった自己効力感をもっている状態です。
「神経質」は相手へのアンテナを持ち続けることと観察によって見抜くことができる能力です。
「柔軟性」は状況が変わったときに、すぐに方向転換ができることです。

この3つが「信頼力」を構成するのではないかと考えています。
今回は「信頼力」と構成する3つの能力のご紹介でした。さらにどうすると「信頼力」が育つのか?に関してはまた機会があれば書いてみたいと思います。

いかがでしょうか。
以前の記事の「自律力」と「信頼力」。この二つがイノベーション人材に必要な人間力ではないかと考えています。
「心理的安全性がない状態」でイノベーションを起こすための活動を出来る人材として想像してみていただけると嬉しいです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
現在私は企業向けの研修やコンサルタント、ブリーフセラピー協会にてセラピストの育成、またキャリアコンサルタントの方向けの講座、「組織セラピスト養成講座」を実施しております。
ご興味のある方はご連絡ください。
今後ともよろしくお願いします。

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