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自分の今をしっかり見つめる(本のはなし6)

久しぶりにファンタジーを読みたいな、と思って手に取ったのは上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』。前に『獣の奏者』を読み、不思議なお話の世界に連れて行かれた。そして今回もまた、どこかの国の不思議なお話の中に引きずり込まれた。

本の中に天狗や狐が出てくる。人に化けた狐や天狗はどんな風貌をしているのか?と想像したり、「若芽をはらんだ枝先がうっすらと赤みを帯び、あわい靄のように山肌をおおっていた。花が咲いたら、さぞかし、すばらしいだろう」という文章に、花満開の山はどんなにか感動することだろうと思いを馳せた。自分がこの時代にいたら何を楽しみに過ごしていたんだろうとか、どんな立場だったのか?まぁ主人公にはなれず、町娘1くらいだろうなんて考えたりもした。今回もその場に自分がいるような感覚で楽しめた。


いつも本を読むのは電車の中。通勤はユウウツだと思っているけど、電車の時間は楽しみだった。なので先が気になりつつも家では読まないようにして、通勤時間を楽しいものにした。どんどんお話の世界へ入っていく。ちょこちょこ山場がありドキドキしながら読んでいて、終わりのほうの大山場ではどうなるの!?と先を読みたい思いと、終わらないで欲しいという思いと、ごちゃごちゃな感情を持ちながら興奮して読んだ。


そして私はこのお話を読んで、自分の今をしっかり見つめようと思った。

主人公の小夜は知らなかった自分の過去を知り、現在の大変な状況に「ふいに……やみくもに、逃げ出したくたった。(略)それを乗り越えることができたら、きっと、新しい土が息をふき返すような心地になれる。」と言ってる。

ほんと、大変な時に逃げられたらどんなにいいだろうって思う。でも、きっと、自分で解決して気持ちにキリを付けないと、いつまでも残ったままになってモヤモヤしてしまうんだろうな。だから、自分の人生を運命なんだと受け入れ、ちゃんと見つめて、ちゃんと向き合って、今の状況に挑むことが自分の良い状態でいるためへの一番の近道なんだろうな、なんて。真っ只中にいる時のキツさは相当なものだけどね。でも、そう思える力をもらえた。今年出会えて良かった本。


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