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ふさわしい不倫(21)

大地とは終わった。

家庭を築かない男女の仲は、セフレだ。
本命なのか、セフレなのか悩み苦しむ女性は多いかもしれないけど、結婚してない男女はセフレだと言ってもいいくらいだ。

籍を入れてなければ、浮気したって慰謝料を払う必要がない。
誰を好きになろうが、誰と寝ようが自由だ。

でも、バカみたいに胸が苦しい。
私を大切にしてくれると期待していたんだろう。
不倫の時点で、大地は女性を大切にできないクズ男だ。そんなことは、頭では分かっていても、私の心は泣いていた。

家に着いて、アイスカフェラテを作った。
午後はどう気晴らししよう。
彼は夜勤で会えない。
突然会いたいと言って会える距離感でもなかったし、会いたい気分でもなかった。

連絡がスムーズで、いつも心が側にいるような安心できる仲の良い彼氏が欲しい。
もう10年近く、心地よい恋愛ができていない…
中年の恋愛は、本当につまらない。



すると、大地からラインが来た!
いつも一行の一言ラインを送ってくるのに、今回は長文だ!

さすがに悪かったと謝ってくるのだろうか?


「驚いたのは仕方ないと思う。
ほとんどの人が普通、あのような反応になると思うよ。
でも、失礼だよ。
あそこにいた人に謝ってほしいよ。
普通じゃないって、彼らはそんなことは分かってるんだから。」

え、えーっ!!
うそでしょ!
私が悪いの!??

スマホが手から落ちそうになる。

あまりに想定外の内容に、もう一度メッセージを読み返す。

ど、どういうことだろう。

ど、どういうことなんだ。

そうか、
そうだよね。
性癖を否定されても、性癖なんて産まれ持ったものや、後天的でも心に染みついたもので、直しようもない。

例えば、私が取った態度はこうだ。
ビーガンレストランで、なんでメニューに肉がないんですか?
肉出してくださいよ。
え、ここにいる方々は肉食べないんですか?
うわ、やばくないですか?
ちょっとムリですね。
私、帰りますね。

ということだと、大地は言いたいんだろう。

でも、じゃあ、肉を食べる私が悲しい気持ちになったことはどう思っているの?
私がベジタリアンにならなければ、会わなくていいの?

(つづく)



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