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大学生自転車日本一周旅三十七日目:新山口駅から島根県江津市へ

本編

 家から寮までの約2週間で越える山は3日間(実際は5日間だった、計算ミスりすぎやろ)分。まず、山口から島根へ、つまりは山陽から山陰への行く手を阻む山。次に、兵庫県の、日本海側から瀬戸内海側への行く手を阻む山。最後に、静岡から山梨への山。ちなみに4日目分は、京都から津への行く手を阻む山で、これは舐めていたからカウントしていなかった。5日目分は山梨から関東までで、最初は、甲府の標高が250mぐらいあるから基本下りと思っていたけど、ちゃんと峠があった。

 という山の内の一つ目をこの日消化するわけ。ああ嫌だ。しかも、野宿もせざるを得ない。嫌なことの詰め合わせ、なかなかに盛りだくさんな一日だ。

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 新山口駅から山口県庁に近い山口駅までは、そんなに遠くなければしんどくも無かった。以前はお預けにしていた記念写真をパシャリ。さ、ここからは島根県を目指して、山登りをしていきましょうか。国道9号線一本で移動していく。市街地から少し北にそれると、急に山道がスタート。運悪くいきなり片側規制。

 登りの片側規制は本当にしんどい。いやらしいのが、精神的なプレッシャーがキツいこと。反対車線の車の列は首を長くして待っているわけだから、いくらバテたとしても休むことは許されない。山道を結構な距離走らされる。こんなに長い距離規制を行う必要ないやろと思いながら。前の車はとっくに規制から抜けただろうな。待ってる運転手も思ってるはずよ。何で最後の車が通過したのに出発できないのって。それでイライラしてたら自転車が来て「は?自転車?こんなとこ通るなよ」って。しゃーないやん。

 ただ、片側規制にもいいところはあって、車の流れが読めるってところ。来るときは来るけど、反対車線が通っている間は絶対来ない。だからその間はいくら道のど真ん中にいても安全ってわけ。もし、めちゃ狭い道を通っていたとしても、その時間は自転車から降りて休憩できるし、押して歩いても全然迷惑にならない。だから、この規制をうまく使って体力を戻しながら(途中えげつない向かい風の中必死に登ったし)、何とか島根県へと近づいていった。

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 長門峡には道の駅もあって、休憩しても良かったけどスキップ。みんなは車で来てるけど俺は自転車だぜ、って心の中ではどや顔をしながら走る。そのまま抜けていくと、そこでは高地の景色が広がっており、道の両脇は田んぼに挟まれていた。

 時刻は昼にもなっていたので、たまたま近くにあったスーパーへ。そこで特売の鯖寿司を購入。もともと鯖寿司が好物だったことと、いつもスーパーで見ている値段より安かったことから買ったんだけど、いざ食べてみるとびっくり。肉がぺらっぺらやんけ。詐欺られた感覚。怒るっていうよりは呆れ。これが田舎の商売か。まあ山に囲まれた高地で魚食おうと思ったらこうなるか。

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 さあ早く島根県を目指そう。最初の奈和津町へ。ずっと登ったり下ったりしつつ、最終的にはだんだんと下っていくと県境。今日の登りのピークはとっくに終わっていたらしい。奈和津町での記憶はなし。そのまま益田市まで直行。名前自体は知ってたから期待して向かった。

 ずっと向かい風だったし歩道はあっても反対車線だったけど、頑張って時間を巻きながら進む。信号が無いからゴリゴリ漕いでいった。だが、益田市街までは来たものの正直パッとしない。別に田舎ってわけでもないけど。

 そのまま海沿いの道を進んで浜田市を目指していく。ただ、海沿いとはいっても山がそばにあるのでアップダウンは激しい。あーめんどくせ。結局頑張って大きな山を越えても、細かな登りが別で来るんよね。良くも悪くも地形は薄情よ。

 そんなこんなで浜田市に突入。ここら辺は夕日を推しているらしく、サンセットパークと名前が付いた道の駅が二つ。まずは益田市側の道の駅で休憩を。そこのカフェでジンジャーエールを購入。店員さんに聞いてみても夕日がやっぱりきれいらしい。ただ、ベストの時間はあと一時間後当たりとのこと。そこまで待っているわけにはいかないのでジンジャーエールを味わった後、早速まだ赤くは染まっていない夕景色を撮影。撮影用スマホスタンドがあったから、ありがたく活用させていただいて躍動感たっぷりの写真をゲット。そのままテンション高く、もう一つの道の駅目指して出発。ここらへんで後輪の空気が抜け始めていることに気付き、不安を覚えながらも「まあ明日までは持つっしょ」と軽く考えた。

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 先ほども言った通りここら辺はアップダウンが多い。下りの時はスピードが一気に上がるわけ。もしそこに段差のある歩道が出現したらどうなるか。そう、パーンだよ。そうです、パーンしました(どっちかって言ったらシューンって感じで空気は抜けていくけど)。ビビッて前輪を上げたのが逆効果やったね。ただ、まだ17時台だったから安心。浜田市に行けば自転車屋ぐらいあるでしょ、そう思ってマップで検索。あれ、1個しかない???しかも本業は自動車っぽい。ただ、調べた感じ19時まで開いてる。どうやら救われたらしい。頑張って残り10~15㎞ほど、浜田市街までは行こう。

 いくつものアップダウンに耐え、もう一つのサンセットパークと名前の付いた道の駅の近くまで来た。その道の駅は高速のそばだったからもっと登らないと行けず、パンクチャリだったからそれはあきらめ、眺めのいい休憩スペースで待機した。せっかくだからここで夕日のベストタイミングである18時までの約15分をつぶそうと思って。だけど、それまで暇だから一応見つかったお店に電話かけとこう、自転車が本業じゃないっぽいし。そう思って電話をかける。しかし、何コールも鳴っていいるのにつながらない。2コール目で受話器取るとかないんかな?それとも一人で回してて忙しいのかな?でも金曜の夕方って忙しいん?とか思いながらもう一度かけてみる。今回は時間はかかったものの出てはくれた。まず事情と修理をお願いしたいことを伝える。

 「もう、今日は終わってるんです。」意外過ぎる返答だった。は?まだ18時にもなってないのに?だけどそういわれたらこっちはどうしようもできない。閉まった店を無理やり開けてもらうわけにもいかんし。まず、今日はパンクしたままということが確定。野宿だから夜道を走るのに。しかも、明日は土曜日。多分個人の自転車屋はやってない。ってことは行くとしたらサイクルベースあさひか。だが、次のあさひがあるのは松江市。あと100km以上ある。この前75㎞ぐらいパンクしたままで行ったっていう武勇伝が早くも更新されるのか。テンションがた落ちでいたら、夕日も同じように落ち始めていた。気付いた時にはほぼピークになっていたから激焦りで写真を撮影。一気に沈んじゃうから危なかった。ちなみに、写真ではピースしてるけど、心は全く笑っておりません。つら。

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 パンクしたまま夜を走るのは危険だからやりたくないのに、今日はもう不可避。明日ももしかしたら松江まで修理が出来ない。詰んだ。お先真っ暗。市街地のゆめタウンに入ってマックを食べ、今日どこまで行くべきかを考える。もともとの予定では江津市にある道の駅。だが、ここにきて浜田でホテル宿泊パターンも浮上はしていた。明るくなった朝パンク状態で進んでいく方が良いだろうという理由。しかし、出来るだけ松江市に近付いておきたい気もする。

 しかし、ふと大事なことに気が付いた。イオンバイク。この世で土日も休まず営業している自転車屋はあさひだけではない。イオンバイクがあるじゃないか。ガッツポーズ。探してみると大田市のイオンにあるっぽい。ここからは60㎞先。一気に希望が見えてきた(とはいえ移動距離は延岡まで行った時と変わらないんだけど)。今日のうちにそこまで近付いておくべきか、それとも明日の朝一で頑張るか。安全の面では、朝のほうが車どおりも少なければ明るいから圧倒的に優位。ただ、今終わるにしてはまだ早すぎる。ホテルも安くはない。悩んだ末、20㎞は頑張って漕いで残り10㎞は押して歩き、江津市の道の駅まで行くことにした。今日のうちにできるだけ頑張ろう。最後はそう前向きに決断。

 最初の20㎞は怖かったけど何とか乗り越え、一時間半ほどたったら降りて歩き始めた。基本的に歩道はあったからもう安全。メンタル的にはめっちゃしんどかったから、Spotifyにアップされている「Creepy Nutsのオールナイトニッポン」を聞きながら寂しさを紛らわしていた。

 今日は頑張ったし、明日は報われるはず、そう思って頑張る。道の駅に到着。結局13,4㎞ぐらいは歩いたけど、なんとかたどり着けた。ちなみに途中で石見智翠館高校の送迎バスに抜かれていきました。あと、江津市街当たりからずっとウンコ臭かった。え?そういう街?(あくまで主観です。江津市民の皆様、申し訳ございません。)

 その道の駅はベンチがほとんどなくて、寝床は、トイレ前か、屋根無しで車のヘッドライトがガンガン当たる場所かの二択だった。隣りの施設では、もう22時を回ってるっていうのに太鼓の音が響き渡っている。正直この道の駅は寝るべき場所には思えないけど、もう動きたくはないしほかに候補は無いから我慢。トイレ前は明るいし人が通るからやめにして、もう一つのベンチに隠れるように寝ることにした。ただ、ライトがずっとついていて、周りから見えているんじゃないかと気になりすぎて全然寝れなかった。野宿での充実した睡眠には慣れも大事だろうけど、それ以上に場所選びが重要ってことを痛感させられた。

ルート

 新山口駅から島根県江津市に至るまでひたすら国道9号線。

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