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保育園の娘の送り途中、楽しそうなネルシャツ天パロン毛おじさんの後ろ姿を考察した話。

ある日、娘を保育園に送っていると、あるおじさんの後ろを通りすぎたんだけど、そのおじさんがいかにも楽しそうで、何を考えていたのか、知りたくなった話。

先述の通り。
私は発見した。

その人はゆっくりと路地の左端を歩きながら、少し俯きがちに右手で傘をもち、左手で左側を何か指差しながら歩いていた。

痩せ型の170センチくらい、おそらく天然パーマだろうけど、ちょうどスパイラルパーマにも見える、肩につくかつかないくらいかのロン毛の男のひと。その人がたぶんおじさんかなと思ったのは、頭が全体にところどころ白髪が混じっていたから。そしてラフにネルシャツを羽織っていた。バックなどを持っていたかは覚えていない。

そのたぶんおじさんの背中が妙に気になった。少し俯きがちの、左手で何かをポイントしながら歩く姿が。

ポイントしながら何を見ていたんだろう。そう思った。

その路地は、住宅街に続いて大きなガラス会社のある路地で、おじさんがいたのは特にこれといってカラフルな壁があるとか、たくさんの樹々が生い茂るとかそんな場所ではなく、その会社のコンクリートの壁がただ続く道だ。路地を抜けると交通量の多い幹線道路に抜ける。どこかに向かう途中なんだろうか。

そのポイントしている後ろ姿が静かに弾んでいたようにも見えて、何か思考を巡らせているように見えた。

コンクリートの性質に詳しい人で、この道のコンクリートはあれとあれが混ざって作られているなとか?

道路の隙間に生える苔の量から、建物の日陰になっているこの路地の土地の湿気の具合を考察しているとか?

何か虫好きで、こんな場所にあの虫とこの虫が隠れていたのを見つけちゃったぜ?とか?

なんだろう、なんだろう。

ポイントしているのは景色にではない、もしかしたら、頭の中で何か思いついたことを整理して、その思考が行動に出てしまっているだけかもしれない。

こんな人気が少なく、特段なんの特徴もない道。のんびり歩きながらひとりで歩いていたら、思わず自分の頭の中に思考が向くのは自然な行動のようにも思う。

例えば、何か今日楽しみがあって、その段取りを考えていたのかな。あそこにいって、これをやって、それからこれを見て……。とか。

はたまた、何かものを作っている人で、今日はこれをやってあれをやって、あそこまで仕上げよう……。とか。

何かとにかくそのおじさんの楽しそうな(に見えた)後ろ姿が気になって仕方なかった。

そうだな、私なら、何を考えたかな。子どもを自転車で送りながら、あんな風に自意識を保ちながら体に出ちゃうような妄想するなら……。

体が揺れる楽しい妄想……。
私なら頭の中で音楽がぐるぐる回っている時だろう。何か思考を巡らせるのに、体をフワフワ動かしたりはしないな。

ああ、おじさん、音楽に乗っていたのか?ロン毛で見えないだけで、イヤホンでもしてたか?頭の中で歌を歌ってたのか?それで左手がノリノリだった。

ああ、もしかして、ダンスのロッキンの振りのポイントの仕草だったか?思わず左手が踊っちゃってた。

そして私の中でひとつの結論に辿り着く。

いや、でもおじさんはやっぱ、身なりのわりに、なんかめちゃくちゃ頭のいいどっかの教授クラスの人で、これから講義で大学に向かっていて、頭の中で今日教壇に立つための授業の内容をおさらいしていた。その授業の内容をおさらいしていたのだが、そういえば途中だったあの研究の続きはどうしようとふと思った。あれはあそこまで進んだけど、そこから先が難解なんだよな。どう段取って行こうか、助手の学生たちにあの部分は手伝わせて、私は早々に研究室に籠るとしよう。ああそうだ、そうしよう。ああなんだかやる気が湧いてきた。段取りはこうだ……。彼は頭の中で今日の研究の段取りのことを考えていた。彼の左手は自然と動いてしまっているのに、彼も気づかなかった。

なんてな。

いや、違うだろうー!俺なら私ならってあなたが妄想を始めてくれたら、それがわたしは一番嬉しい。笑





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