◇書き始めたきっかけ、何だったろう

初めて小説を書いたのは小学六年生のとき。大学ノートを使っていました。でも、なぜ書こうと思ったのか、いくら記憶を遡っても分からない。

物語の内容そのものは思い出せるんです。小学生の男の子が、夏休みに訪れた海で神様に会うというもの。神様は人間の青年と変わらない容姿だけれど、髪が銀色で、優しい性格をしていた。イラストを描くのが好きな友だちはそれを読んで、太陽の神様とか風の精霊といった仲間をデザインしてくれました。
中学を卒業するまで、彼らの物語を書いていたはず。

高校では演劇部に所属する一方で、文芸部に小説の原稿を出したりしていました。藁半紙によるコピー本ではあったのだけど、自分の作品が本に載るって、とても嬉しいような、恥ずかしいような気持ち。
大学でも所属していたのはそういう創作系のサークル。小説も書いてはいましたが、漫画を六話編成で描いて個人誌を作ったりもしてました。別メンバーの小説にイラストをつけたこともあった。
ゼミでは、卒業制作として約十万字の小説を完成させたり。

でも、その頃にはすでに書けなくなりつつあった。
最後のサークル誌……小説も漫画も完成させられずに、四年間で唯一原稿を落としたんです。

社会人になってからは、サークル卒業生で出す冊子に一度だけ小説を出したことがあります。けれどそれは、漫画として描いていたものの番外編。漫画にできなかったから文章にした、そういう形のモノ。新たに構想を練ることができず、すでに作り上げていた世界を舞台にしたというシロモノ。
それ以降オリジナルの作品は、今に至るまでなにひとつ存在しません。

小説に関して言えば、音楽ゲームの楽曲をモチーフにして書くという、いわゆる二次創作なら五つばかり短い物語を仕上げました。それも最後は二年ほど前の話ですから、ずいぶん経ってしまっている。
だから、小説書きとしてのわたしは、ここで止まったまま。再び始めることがあるのかも、分からない状態です。

振り返ってみたけれど、結局なぜ小説を書き始めたかは思い出せない。ただ、小説より先に漫画の真似事をしていた記憶が、ぼんやりと蘇ってきました。たぶん、漫画雑誌を買い始めた小学四年生の頃。好きな作品にものすごく影響を受けたものを、鉛筆で描いていたんじゃないだろうか。それが文章という形に移っただけかもしれない。
小学生のわたしは作文が好きで、遠足を題材にしたとき「太陽が笑っているような気がした」なんて文章を練りこんでたくらいなのです。だから、漫画の影響で物語を作り始め、やがて文章でも行うようになったという可能性はあります。覚えてないのですけど。


書けなくなったこと、かつては書く人間だったこと。それに後ろめたさを感じて、Twitterを始めたあと、明らかにしていない時期もありました。隠していた、と言ってもいいかもしれない。
いまは押し隠すほどではありませんが、相変わらず小説を書く人間ではないし、復帰するかは未定です。ただ、「書く」行為は必ずしも小説に限らないのだよな、という認識にもなっている。
作品についての感想や紹介、あるいはこうした日記・考えごとの類……小説ではなくても、文章を書くことに戻ってきた自分がいる。この三日ほど思うように綴れず日記の間が空いてはしまったのですが、「書かなきゃ」ではなく「どうしたら書けるかな」と、書くことに前向きではあったんですよね。

有り難いことにここを覗きに来てくださる方がいて、反応を頂くこともあって、毎日とはいかないまでも続けていられます。もう三ヶ月近くになるのかな。ありがとうございます。
これからもお付き合いくだされば幸いです。