魂の叫びが届いた

存在を　”知ること”　が楽しくて、嬉しくて、興奮して、
眠れなくなった

私にも明るい未来がみえるようになった
希望がみえた

だから、歌をうたった
魂で歌を謳った

一人で野外ライブを啓いていた

目を閉じて
私の世界は、明るかった
光輝いていた
素晴らしかった
誰もを惑わす、魔法だった
不死の薬にも思えた

私はうたっていた、ずっと
嬉しくて

自分の声で、ずっと
水も飲まず
食料も口にせず
ただ、歌うことができる幸せに
心躍らせた

歌うことができる世界は
こんなにも素晴らしかった

私は永遠になれると思った
あなたと永遠にうたえると思った

わたしたちは、わたしたちでいることが
足枷となった

私はちひろを楽しむことが
岳さんは千尋を想い、遠くから、私を見守っていた

私は
『エリーゼのために』のオルゴール人形
エリーゼそのものだった

私は岳さんに
新しい世界をみせた
岳さんを想い、踊り狂った

岳さんは千尋を想い
ひたすらに
私が踊るのをみていた

私はそれが二人の幸せだと確信していた
私は『トム・ヨーク』のように歌っていた
岳さんの好きなトム・ヨークになったつもりでいた

私は、あなたと愛し合えたと思った
私は愛そのものだと思った

私のオルゴールは
見るものを魅了させた気がしていた
美しかった
可愛かった
格好良かった

はずだった

私のオルゴールは
宝石だった

しかし、ガラスが割れて散らばっていただけだった

エリーゼは壊れていった

千尋は痩せた、病的に
脆かった
哀しかった

今まででいちばん醜かった
涙を流して笑っていた
不気味だった


岳さんは私を壊さないように
丁寧に　そっと
ガラスドームに入れた
とても綺麗に磨かれていた
まるで、『スノードーム』のよう


朝陽がガラスドームを照らした
眩しかった
私は、私を連れ出して欲しかった

岳さんのお腹が鳴り
岳さんは大好きなCDを持って
サイドカーに乗って
わたしを迎えに来てくれた

地に足がついた
『フライング・エース』が
ビートルズの『A Day in the Life』を持って
私を迎えに来てくれる

岳さんのお母さんは
ミルクレープのように甘く優しくて
何層もの愛情で私に伝えてくれる

貴方を心から愛しています
だから、あなたはあなたを大切にしてね
あなたの、ありのままの姿を愛しているよ
と

岳さんのお父さんは
コーヒーのように苦く
私の熱を冷ましてくれた
私は、苦く
時に、酸味があるコーヒーが大好きだ

お義父さんと母校が同じだった
鳥の研究をしていて
フィールドワークが主だといった

私の『恩送り』の研究を聞いて、
「最先端だね。」と面白がってくれた

最近、聞いていて面白いものを教えてくれた
私は、ただ、ひたすらに
岳さんのお父さんとお喋りしていた

緊張した
今までの自分なら、上手く説明できなかった

だけど、
今なら言える
愛する人に囲まれているから

私は、
岳さんの母をアリストテレスだと思った
岳さんの父をソクラテスだと思った
私は、岳さんの家族になった
岳さんの家族と一瞬で繋がる事ができた

あなたに出逢えて
恋をして
結婚をして
子どもが生まれた

私は、勉強が好きだった、得意だった
岳さんは、私を自由にしてくれる
私を心から信じて
私をこの世界の主人公にしてくれる

私は、線ではなく、千でもなく、
私は、『千尋』なのだ

私は、私を心から愛することができた
あなたと心が通じ合い、私は自由になった

岳さん、ありがとう
岳さんを心から愛しています