北海道 僻地クリエイターサミットという合宿をやってみた

何年も前からあたためていた企画、北海道の僻地で活動する(主にフリーランスの)クリエイターの合宿「北海道 僻地クリエイターサミット」を7/20(金)〜21(土)に開催しました。

この1ヶ月、「このイベントはなんだったのか?」ということを考え続けて、すっかり書くのが遅くなってしまったけどイベントの振り返りを書きます。

そもそもは、自分が2014年に北海道の日高地方にある浦河町という小さな海辺の町でデザイナーとして独立開業したことがきっかけでした。

それまではずっと東京で会社員としてWebデザインの仕事をしていて、大きい仕事もして、同僚もたくさんいて、お金を稼いで、それでいいと思っていた日々。その価値観が根底から覆されてしまったのが2011年3月11日の東日本大震災でした。豊かだと思っていた暮らしが、こんなにも脆いものの上に成り立っていたのかということにショックを受けたと同時に、とてつもない恐怖を感じました。このままここにいて、享受するだけの暮らしを続けていていいのだろうか?もっと消費をおさえて、生産的に暮らせないだろうか?物質的な豊かさではなく、精神的に豊かな暮らしがしたい。

そんな時に思い浮かんだのが、故郷である北海道でした。

1999年、22歳で札幌から上京したときは、「こんな田舎は嫌だ、東京で突き抜けたい」と、早く北海道から離れたい気持ちでいっぱいでした。なんの実力もないのに勢いだけで上京しようとして、新千歳空港から最終便の飛行機で東京へ向かったものの、東京の夜景が眼下に見えてきたとき、「…もう後には戻れないんだ」と、激しい不安と期待が入り混じって吐きそうになった気持ちにを今でも鮮明に思い出します。

そして12年経って、長く北海道から離れてみて、震災という根底を揺さぶられる体験をして、改めて「北海道ってもしかして素晴らしい場所なんじゃないか?」と思うに至りました。畑はたくさんある、芋でも掘って食べれば最悪死なない。帰ろう、北海道へ。
あんなに嫌だと思っていた故郷に帰りたいと思っている自分にもびっくりしました。

そんな想いで札幌へUターンしたものの、ありがたいことに東京の会社を辞めなくてもいいというお達しが出て、札幌で暮らしつつ東京の会社員としてリモートワークをする生活が始まりました。なんてありがたいんだ、素晴らしいんだ…と思いつつ札幌での生活が2年経ったころ、またしても疑問が頭をもたげてきました。なんだか東京で暮らしていたときと変わらない、結局消費して生きてる。私は本当にこういう暮らしがしたいんだっけ…?

そんなときにたまたま一人旅をして出会ったのが人口1万3000人の海辺の町、浦河町でした。ここで暮らせば消費ばかりじゃない、生産的な暮らしができる気がする、と、急に視界がひらけたような不思議な感覚を味わって、結婚と同時に浦河町へ移り住み、意を決して会社員を辞めてフリーランスとして独立開業しました。

でも、小さな町でまだ人との縁もあまりないなか独立してしまって、ずっと東京の仕事ばかり、しかも会社員としてしか働いたことがなかったので、本当に仕事はあるの?食っていけるの?どうやって仕事をとってくる?仕事のやり方は?価格設定は?など、わからないことだらけ。Webの仕事をずっとしていたこともあって、紙のこと、印刷のこともたいしてわからない。

そしてそんな不安をよそに、いざ蓋を開けてみたら、紙にとどまらず看板の仕事をお願いしたい、化粧品をパッケージを作りたい、グッズを作りたい、など、いろんな球がぶんぶん飛んでくる。思っていた以上に地域にデザインが足りていなかったし、やる余地がこんなにあったなんて。でも今まで経験したことのないような依頼がたくさん来てしまって、なんて面白くて、なんてわからないことだらけなんだ…!と、めちゃくちゃ忙しいなかとにかくできませんとは言えないので、依頼を受けてから必死で調べる日々。
たまたま自分の住んで居る地域にはまだほかにデザイナーさんが居なかったので、その分デザインの依頼は来るけど、誰にも相談できず、仕事は楽しいけど日に日に孤独感が増していきました。

きっと地域のどこかで、同じように手探りで仕事をしてる人がいるはず。話しかけたい、「こんなときどうしてる?」って。相談したい。ただ悩みを共有したい。「だよね〜」って言いたい。
そんなことをTwitterでもたびたびつぶやいていました。

そんな想いをかかえながら今年の3月に夫の故郷である釧路に移住して、それからすぐに「北海道の楽しい100人」という講演会で登壇させてもらう機会を得ました。会を主催している札幌の知り合いに登壇しないかと声をかけてもらったとき、とにかくこのままじゃだめだ、何かを打破しなくては、自分の殻を破らなくてはと思っていたところだったので、人前で話すのは極度に苦手だけど登壇することをすぐ決めました。

そして講演会後の懇親会で札幌在住時代の知り合いであるWebマーケターの赤沼俊幸さんに「僻地のクリエイターさんと繋がりたい、地域で孤立したクリエイターさんたちを繋ぐ場を作りたい」という想いを打ち明けたところ、「ぜひ、やりましょう。ちょうど南富良野町に廃校を利用した施設ができる予定なので利用させてもらえるか聞いてみます」との後押しが…。

赤沼さんは数ヶ月前、札幌にあるwayaというゲストハウスで開催したデトックス合宿で、南富良野の廃校を利用した施設「LA Spot南富良野」の管理人となる渡辺誠舟さんと出会っていて、施設を準備中という話を聞いていたので、「ああ、これはchihoshさんの言っていた企画にふさわしい場所かもしれない」という運命を感じてくださったそう。
結果、「僻地クリエイターサミット」の第1回をLA Spot南富良野で開催することができました。

思いつく限りのフリーランスのクリエイターさんに声をかけ、初回で手探り状態にも関わらず、札幌、当別、旭川、釧路(自分)から9名が参加してくれました。本当はもっともっとたくさんいるはずの地域に住んでいるクリエイターさんに参加してもらいたかったのだけど、私にはそこまでの繋がりや影響力がまだなく、まずは小さくてもやってみることが大事と思い第1回を実施しました。

合宿では、それぞれのバックグラウンドなどをじっくり共有しつつ交流を深めたり、フリーランスの突っ込んだ話をしたり、BBQをしたりヨガをしたり、みんなでカレーを作って食べたり、まさに大人の修学旅行のような1泊2日となりました。

会場として使わせてもらった「LA Spot南富良野」は廃校を利用した施設で、孫泰三さん主催の場所にとらわれない生き方や働き方を実験するためのLiving Anywhereという団体が運営していて、廃校といいつつかなり新しくきれいな施設だし、寝具やBBQなどの設備も充実しているし、南富良野町は北海道のちょうど真ん中あたりに位置していることもあって、僻地から集まるのにまさにうってつけの場所でした。

イベントの運営スタッフには、いずれも私が札幌在住時代に縁があって出会った赤沼さん、当別町で畑を開墾中の半農半ITの実践者であるエンジニアの田名辺さん、札幌在住のWebデザイナー兼ヨガ講師のコモモさんに協力をお願いしました。

イベント運営は初めてなので、ざっくりと全体のスケジュールを立てていたものの、当日現場入りしてからフレキシブルにやることに。この合宿でなにかを達成するというよりは、まず参加者同士と交流しあうことを目的とし、初日は自己紹介とBBQでの交流、2日目にテーマを出し合ってワークショップをやる流れにしました。


まずは参加者が自己紹介。

Webデザイナー、デザイナー兼ダンサー兼イラストレーター、映像クリエイター、システムエンジニア、Webマーケティングコンサルタント、北海道のメディア編集長、LA Spot南富良野管理人さんも参加してくれました。


初日のBBQ。

翌日の朝はヨガ講師コモモさんによる朝ヨガ。

朝ごはんは近所にあるフォーチュンベーグルズさんのベーグル。
どっしりとして食べ応えがあって美味しい。お店をやっているご夫婦もとてもいい人。

そしてワークショップ。
各自話をしたいテーマを付箋に書き出してもらってボードにグルーピングしながら貼っていき、もっともみんなが共有して挙げていたテーマについて話し合うスタイル。

もっとも多く集まったテーマはこの2つ。

・フリーランスのチーム作り、仲間作りについて
・ライスワークとライフワークのバランス

この2つのテーマについてじっくりとディスカッションしました。

参加者からもっとも多く挙げられたのが「フリーランスのチーム作り、仲間作りについて」でした。みんなこんなにもチームや仲間作りで試行錯誤しているんだというのがまず驚きでした。どう繋がるか悩んでいたのは自分だけじゃないんだ、と。

例えばある人は、多様な人が多く集まる場所、例えばゲストハウスやコワーキングスペースによく出入りして、そこで繋がった縁から仕事が発生するなど、いくつかのコミュニティに意識的に属するということをしているとのこと。フリーランスにとって収入を得る先を複数もつことがリスク分散になるのと同じように、「複数のコミュニティに属する」ということもセーフティネットとなり得るのだということを改めて実感しました。孤立しがちな地域のクリエイターは意識的に複数のコミュニティーに属するということをしたほうがいいのかもと。

さらにもう一つのテーマとして出た「ライスワークとライフワークのバランス」について。
フリーランスで活動していると、「これは自分がやるべき意義のあることだ」と感じる案件にめぐりあうことがあります。あるいは、仕事とは別に、自分がやる意義があると感じた活動があって、それをライフワークとしてやっていきたいという思いが芽生えることは、フリーランスあるあるではないでしょうか。でもそういった強く意義を感じる案件であっても、お金がないのでどうしましょう…という状況に直面したりする。だからこそ、日頃からライスワークで自分が十分稼いでおくこと。そうすればライフワークを充実させていくことができる。

なぜフリーランスで活動するのか?と自分に問い続けたことがあります。会社だったら規模や予算が小さくてできないことも、自分だったらできる。小さくても輝いているものに光を当てたい。だからこそ、生活には余裕があるべきで、フリーランスは稼がなきゃいけないんだ、という思いを強くしたワークショップでした。

運営スタッフはいずれも遠隔在住だったため、企画や事前準備などのやりとりはすべてSlackで行い、打ち合わせが必要なときはSkypeの音声通話で行いました。イベント後はほとぼりが冷めないうちにスタッフと振り返りをして、Slackに改善点を書いていきました。

・子ども連れで参加できるイベントにしたい
・もっと僻地在住のクリエイターに活動を知ってもらいたい、参加してもらいたい
・期間が短すぎる?コアスタッフは1週間ぐらい仕事しながら滞在しつつ、参加者は参加できそうな日だけ滞在するみたいな感じでもいいのでは
・予定を詰め込んでしまったのでもっと遊びの時間がほしい

もし第2回を開催するなら、この点をふまえてもっともっと楽しいものにしたい。

参加者にはSlackに参加してもらって、その後もぼちぼち雑談をかわしています。
ここからなにかが繋がってはじまるかもしれないし、はじまらないかもしれない。そのぐらいの気持ちでやっていきたいと思う。

ただ、自分がリモートワークを3年続けてみて感じたのは、オンラインで効率重視で会話するのもいいかもしれないけど、実際に会うことがとてもとても大事だということ。パソコンがあればどこででも仕事ができる、と言われる時代だけど、自分が経験してみたからこそ、オフラインでの場がとても大切だということを実感しています。だから僻地クリエイターサミットはリアルで集まる合宿という場を大事にしたい。

フリーランスというのは孤独なもので、でも孤独と向き合うからこそ見える景色があるし、向き合うことをずっと続けていかなきゃいけない。だけど、「孤独」はいいけど「孤立」はだめ。
私は地方にいてクリエイターとして孤立していました。だから「北海道で孤立しがちなクリエイターの互助の場」を作りたい。本当にそれだけの理由でこの合宿を開催しました。

地域に入り込み、その背景や文化を感じ取り、人と向かい合って信頼関係を作る。当事者でいること。だからこそそこに必然性を見出せるし、リアリティが生まれる。地域に生きることは、当事者であり続けることだと思います。都会からだと見向きもされないような小さなものや価値観も、届ける価値のあるものがたくさんある。だからこそその世界で生きる覚悟持ってやってる人に光を当てたい。それはやっぱり現場に入り込まないと見えてこないし、それを誰かがやらなければ。

どこかの地域の成功例もってきてもだめで、地域ごとに課題のかたちはぜんぜん違う。「地域のプレイヤーの総体=ローカルのパワー」だと私は思っているので、どこかへ視察へ行ったり、どこかから成功者を呼んできて講演してもらうのだけではなくて、当事者みんなで話をしたいし、未来を語りたい。みんなが主役。地域と、地域に生きる人とに向き合わないといけない。もっと地域の人同士で話がしたい。地域に住むフリーランスは日々それに向き合っていて、だからこそお互い助け合って繋がっていきたい。

きっと今、地域で活動しているクリエイターは、地方で暮らしたい、フリーランスで働きたい、という動機が先にあるのではなくて、

「どう生きるか?」
「自分の役割とはなにか?」

を自分と向き合って考え続けて、その結果、この場所で、この働き方をしている、ということなんだなと思います。自分で考えて、試行錯誤して、失敗もたくさんして、学んで、決断して、実行してきた人たちだからこそ、同じ目線で語り合えることがある。
この合宿でそう感じました。だからこそ、どこかに居るであろうまだ見ぬ地域のクリエイターさんと繋がりたい…!

特に地方でフリーランスでやっていくということは、果てしなく正解がない世界で、自ら問い続けてなにが正解かを探っていく旅なんじゃないかと思います。
人それぞれ100万通りの正解があるから(いや、正解はないのかもしれないから)、どこかの成功者が「こうあるべき」「こうしたら成功しました」と語ることをただ聞いてわかったつもりになるのではなくて、自ら「どう生きるか?」を問い続けて試行錯誤することこそが生きることであり、価値のあることなんだと感じます。いま自分のやっていることが果たして正しいのか…?と迷うことは何度もあるけど、行動を積み重ねていくしかないし、積み重ねていった結果、未来からさかのぼって今を「正しかった」ことにしていくしかない。

先日、某知人から「chihoshさんだからこそできる内容ですよね、もがき苦しんだ人だからできる内容だなぁという印象でした」と言ってもらって、このイベントを企画することができたんならもがき苦しむことにも意味があったんだ、と思えました。自分が苦労したからこそ、同じような境遇の人たちと繋がってわかちあいたい、互助したい。動機は本当にシンプルなものですが、自分が心から望んだもので、実感しで苦労したからこそできたのかなと思うと、この先も途切れさせることなく、ゆっくりでも続けていきたいなという気持ちになりました。

すべてのことは無駄になっていないよ。あのときどうしていいかわからず、一人っきりで公園のブランコでめそめそ泣いていた自分に言いたい。

北海道 僻地クリエイターサミット 発起人として
小野寺千穂デザイン事務所
小野寺千穂

#ローカル #北海道 #フリーランス #クリエイター #合宿

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chihosh

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