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夜が降りて来るエアポート
少しの冒険のつもりが
道を間違ったかしら?
風の細い息が
胸の弦を弾いてる


後戻りするには遅過ぎる
痛む傷を勲章のようにぶら下げて
誰に自慢するの?
同じみっともないなら
その腕の中が良かった


ぬばたまの乾いた艶が
歩き出そうとする足を
この地に縫い止める
何事もない振りして生きられる人を
思わず尊敬してしまう
今一瞬だけ


どんな素敵な出会いが
この先待っていたとしても
今まで以上に愛せるだろうか?
どんな最低だとしても
今までよりはマシな筈なのに

わざと誰かを待つ素振り
搭乗手続も進まない
起こる筈のない奇跡のせいで
今が一番輝いてる事を知る


この夜を閉じ込めて
眠りながら季節を過ごす
咲く花は覚えているだろうか?
今の闇の深さを
ぬばたまの熱く燃える生命を


夜が飛び立ったエアポート
隣は出張帰りのビジネスマン
少しの冒険だったら
風邪をひくのもいいと
窓に映る私が
笑ってるように見えた


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読んでいただきありがとうございます。

庭の片隅に植えた覚えのない不思議な形の植物が生えていて、何だろうね?と妻と話していて、そのうち綺麗な花を咲かせた。秋になってそれが黒い粒粒の種になって、調べてみたら「ひおうぎ」という花で、黒い種は「ぬばたま」と呼ばれるものだそうで、古くは「夜」を表す枕詞?だったそうな。

鳥が運んで来たのかな?葉っぱの形が面白くて可愛い。大事にしたい。種は艶があって、なんだか不思議な力が宿ってそう。


読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。