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自分のために料理を作って生きてきた

以前友達と、何ですんごい疲れてるのに、お菓子作っちゃったり、料理作っちゃったりするんだろねと話したことがある。その時友達は、疲れている時ほど何かを作りたくなると話していた。

その理由の、ど真ん中の答えが書いてある本だった。

自分のために料理をつくるというケア

仕事や子育てでうまくいかないことがあっても、自分でつくる料理は自分の思うように調理ができる。自分が好きなものを好きな味付けで作って、出来上がった大好物や、今食べたいものを出来立てで味わうことができる。

この本では、その過程を「ケア」とよんでいた。そうか、あの日友達と話したのは、「私たちって、料理することで救われてるよね」ってことだったのかと、謎がとけてめちゃくちゃすっきりした。私たちは、自分で自分たち自身をケアするために料理をしていたのだ。あの時は、理由が分からなかったけど。

私たちはどんなに忙しくて疲れていても、自分の主導権を握っておくために、「自分で作ること」を手放したくなかったんだなと今なら思う。

そして、皮を剥く、卵を割る、生地を混ぜるという作業をもくもくとやる没入感の中で、料理のプロセスを味わいながら、すり減ってしまった何かをちょっとずつ補っていたんだろう。

料理をとおして自分の状態がわかる

食べ物に関しては、スーパーやコンビニでだいたいのものは買えるし、外食もできるけど、人それぞれに「これ以上は外に頼りすぎだ」というラインをもっている。だから、その線を越えそうになると自分が嫌になってしまうこともある。でも、私たちは日々生きていくために「食べる」という行為をやめることはできない。

何を食べるかについては1日3回は考えないといけないから、心や体が弱っていると、ちゃんと考えることが億劫になって、そんな気持ちがどんどん蓄積されていく。さらに、どこへ買いに行くかや食事のバランス、家族の満足度について考え始めると、考えるだけでくたくたになる日もある。

それでも、ここだけは譲りたくないという自分の心の声を聴いて、自分の欲求を満たすために自炊していくことができれば、なんとか生きていけると言われると、確かに私もそうやって生きてきたなあと思えた。

自炊ができるということは、自分の体調の移り変わりや生活の変化に合わせて、自分をいたわり養っていけるということです。この力があれば、ちょっとやそっとのことでは倒れないで生きていけます。(中略)大切な自分を養い、励まし、喜ばせることができるのが料理なんです。

インスタントラーメンをつくるのも、買ってきたお刺身を別のお皿に盛って食べるのも立派な自炊!と肯定してもらえるのもよかった。

いろいろな状況で料理を始められなかったり、料理から離れてしまったりした人がいる中で、「自分に料理を作ろう」と提案することは、誰かを傷つけてしまってないかといつも考えるようになったという著者の言葉にも大きく頷きました。

この本の中には、「自分のために料理ができない」と感じている方々が登場して、自炊レッスンを受けていく中で、それぞれのひっかかりみたいなものに意識を向けていきます。そのひっかりが取れる人もいれば、新たな壁にぶつかる人もいて、自分がしっくりくる自炊のやり方を見つけていく過程がとても興味深かったです、何かをやらない選択もしかり。私にも、ひっかかりみたいなもの、あるなぁ。

SNSにはきれいでおいしいそうな映える料理が並んでいるけれど、もっと手前の料理をつくるまでの気持ちの話をしてみたい、と思わせてくれる本でした。

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