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カニ見るより草笛鳴らしたい~マラウイにもあった草笛の話~


日本が世界に誇れる東京湾の盤洲干潟

日本最大級の自然干潟である東京湾の盤洲干潟。小櫃川の河口に広がることから、小櫃川河口干潟とも呼ばれる。

これだけ広大な自然の干潟がほぼ手つかずのまま、東京湾に残されているのは奇跡に近いという。知り合いの自然体験の専門家は、「日本、いや世界に誇れる干潟ですよ!」と絶賛するほどだ。

一度、実際に足を運んでみてほしい。行けば、きっとそのすごさが分かるから。ゲートから小道を進んでいくと現れる一面に広がるヨシ原は圧巻だ。もちろん、浜に出ると干潮時には数km先まで続く干潟にも驚かされる。干潮が昼間の時間に多くて、カニたちが活動的になる、夏がおすすめだ。

夏のヨシ原 2023年7月
春のヨシ原 2023年3月
川沿いのヨシ原 2023年7月

カニより草笛が好き!?

知り合いの子どもたちを、この盤洲干潟へ連れていく機会があった。
子どもたちに見せたい、一番のお目当てはカニだった。海水と淡水が混じりあう汽水域に生息するアカテガニ、アシハラガニ、チゴガニが大量に観察できる。

ゆでなくても元から真っ赤で、甲羅にニコニコマークのような模様があるアカテガニ。

ニコニコマーク付きのアカテガニ

メスへのアピールなのか、他のオスへの威嚇なのか、大勢のオスがはさみを上下に動かしてシンクロダンスするチゴガニ。気持ち悪いほど辺り一面、大群で出現し、近づくとヨシ原にかさかさ音を立てながら大移動するアシハラガニ。

アシハラガニの大群

個性豊かなカニたちが出迎えてくれているのに、1人の女の子だけは違った。同行していた大人が、ヨシの草笛を紹介したら、はまってしまったのだ。

あまりに草笛に夢中になりすぎて、別のカニポイントに到着しても、カニには適当に目をやった後、ひたすら草笛を鳴らし続け、最後まで手放さなかったのだ。他の子どもたちは、カニをつかまえるのに夢中だったのにも関わらず。

個性っておもしろい。

つかまえたアシハラガニとアカテガニはキャッチ&リリースで

マラウイにもあった草笛

草笛に夢中になる女の子を見ていたら、草笛はアフリカマラウイにもあったことを思い出した。

趣味にしていた山登りのため、ふもとの農村を訪れた時のこと。外国人の訪問は珍しかったのだろう、子どもたちが私たちについてきた。ついてきたと言っても、ある一定の距離は置きながら。興味はあるが、見知らぬ外国人の私たちに警戒心は解いていないのだろう。

それでも、その子たちは私たちの気を引きたかったのか、おもむろに道端にあった草を折り、何やらさっと処理をして、口にくわえて「ピーピーッ」と草笛を鳴らしたのだ。私たちの方から近づいていくと、うれしそうに、草笛でダンスも披露してくれた。

2018年6月 マラウイリロングウェ郊外の山のふもとの村で

ダンスあるなしの違いはあれど、遠く離れたアフリカのマラウイでも草笛があるということは、万国共通の子どもの遊びなのだろうか。今思えば、あの村でマラウイの子たちが使っていたのも日本のヨシのような植物だった。

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