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文学新人賞に応募した話

昨日は、小説の新人賞の締切だった。
今回応募した作品はもうずいぶん前に完結させたやつだったので、読み返すのが苦痛だった。
なんだってこんな稚拙な文章しか書けないんだろう、と自分の文才のなさに絶望し、泣きたくなった。
こんなものをドヤ顔で友人に見せていたなんて、顔から火が噴きそうだ。

およそ2万字ほど加筆したあと、原稿を印刷してかなり細かく赤入れをした。
目を皿にして誤字脱字にチェックをいれ、細かい言い回しや不自然なメタファーを直しまくった。
そのおかげで思いの外時間がかかり、特に当日はタスクが立て込んでいたために仕事の合間を縫って作業することも叶わず、締切9分前に滑り込みで応募するはめになった。
不備がないかあまりきちんと確認できず、とても心配だが、出してしまったものはもう仕方がない。

昨今はネットの普及で、気軽に趣味で小説を書く人が増えた気がする。
わたしはそれこそ、かの有名な『恋空』が大ブレイクした「ケータイ小説」の世代だ。

アラサーでない方たちのために一応説明しておくと、「ケータイ小説」というのは、スマホが世に出る前に流行した小説(これを小説とは呼びたくないが)の形態である。
携帯電話の小さい画面でも見やすいように横書きで、だいたい一文ごとに一行空けて書かれる。
内容はどれも似たり寄ったりの陳腐な恋愛ものが多く、やたらと主人公や恋人が不治の病でバタバタ死ぬ。

流行に乗り、わたしも中学生から高校生くらいのころは、ブログを使って小説を書いていた。
けれど「不治の病に罹って自分や彼氏がやたらと死ぬ恋愛もの」が「泣ける」「感動」とかチヤホヤされている界隈で、わたしの書く小説は当然のように浮いた。

そのころヘッセやアーヴィング、村上春樹などに夢中になっていたわたしは、純文学(と呼ぶには多くの「ケータイ小説」と同じく陳腐すぎたが)を書いていた。
「いつか出版社から声がかかるんじゃないか」と妄想を膨らませながら、13歳から18歳までおよそ5年もの間、ブログでせっせと小説を更新し続けた。
父親にばれて、「お前なんかが小説家になれるはずない」と作品も読んでいないのに嘲笑われたことにより、1年ほど休んでいたこともあったが。

けれども、当時の流行りからはおよそ離れすぎたわたしの下手っぴな「純文学もどき」などを出版したいと申し出る編集者なんて、当然いるはずもなかった。
18歳の夏ごろ、やっとそれに気がついて、わたしはブログを畳んだ。

iPhoneが発売されてスマホが普及し出したこともあり、「ケータイ小説」はすでに廃れ出していた。
その代わり、web上では、今でもよく見かけるような「異世界転生もの」だったりのファンタジー路線が中心の、いわゆるライトノベルが台頭してきた。

ライトノベルはせいぜい『キノの旅』くらいしか読んだことがなく、あまり明るくはないけれど、こちらは「ケータイ小説」とは違っておもしろいにはおもしろい。
だが、やはりわたしの書く小説とはあまりにジャンルが異なっていた。

わたしは19歳の1年間、浪人生活のために小説執筆を休んだのち、20歳以降から出版社の開催する新人賞に応募し始めた。
もっと早くからそうしていれば、と今でも悔やまれる。

正確な回数は覚えていないが、たぶん今まで5回ほど応募していると思う。
一次や二次、三次は通過したことがあるが、未だに情けないことに最終まで残ったことはない。

そしてなんでか文学新人賞の締切は春と秋に集中していて、しかもそのほとんどが1人につき1作品に限っているし、二重投稿を禁止している。
だから応募するチャンスは、実質年に2回しかない。
ちなみに、もし受賞しても二重投稿が発覚すれば受賞は取り消されるし、実際そういう例は少なくないらしい。

それに加えてわたしはだいたい1/2の確率で「なんか違う!」と頓挫する。
半年間こつこつ書いて5万字を超えたやつを、ある日突然「こんなんじゃだめだ!」と投げてしまうこともあるので、年に2回必ず出せるわけでもない。

でも今年の春は、すべてに納得がいったわけではないものの、とりあえず応募することができたのでほっとしている。
できれば30歳までにデビューしたいが、まあそんなうまくいくわけないだろうから、あまり期待せずに気長にこれからもやっていこうと思う。

最後に、ここ最近の切迫したつぶやきにスキをつけてくださったり、コメントをくださったり、応援してくれた方々、本当にありがとうございました。
わたしと実際に顔を合わせたことのある友人たちも、ありがとう。
ちょっと挫けそうでしたが、おかげで無事応募できました。
結果はどうあっても、ここに報告しようと思います。
ちなみに落選したら、ここで連載するつもりです。

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