女性歌人という分類(前半)【再録・青磁社週刊時評第八十一回2010.2.1.

女性歌人という分類(前半)          川本千栄

(青磁社のHPで2008年から2年間、川本千栄・松村由利子・広坂早苗の3人で週刊時評を担当しました。その時の川本が書いた分を公開しています。)

 角川『短歌』2月号の特集は「変わりゆく女の生き様と歌―女歌の現在(いま)」である。花山多佳子、今野寿美、栗木京子、小島ゆかり、米川千嘉子、俵万智、梅内美華子、駒田晶子、澤村斉美の9人の女性歌人に対して、それぞれ日置俊次、真中朋久、本多稜、内藤明、三枝浩樹、松村正直、山田富士郎、佐藤通雅、荻原裕幸が論じている。また「女流歌人はどう変化したか」という標題で小高賢、大島史洋、吉川宏志の3人が座談会を行っている。
 選ばれた9人の歌人は現歌壇の中でも実力ある歌人たちだと思うし、それを論じた文章も、論として面白いもの、読み応えのあるものも多くあった。例えば日置俊次花山多佳子を論じた文において次のように述べている。

  …鋭敏な眼差しが、奇妙な角度から全てを見通している感覚、しかし同時にその眼差しがどうしようもない死角を抱いて塞がれている感覚が、読者を心もとない宙吊りの奇妙な空間へ誘う。…

 また、佐藤通雅駒田晶子について次のように書く。

  …作者が、平凡・非ドラマに安閑としているわけでなく重々承知しながらも、他のものにすげ替えることのできない己を内に抱え込んでいると―。そこからしか、ことばを発火させることができないことに当惑しながらも、あたかも自然体であるかのごとく作るほかないのだと―。…

 それぞれ的確な比評であり、取り上げられた歌人に対する興味をそそられる。その他の論者も、各歌人の歌を引きながら、説得力のある論を展開している。
 しかし、内容はいいとしても、この特集の構造が気になる。何人かの女性歌人を選び、それを全て男性歌人が評する。また女性歌人の変化について、これも男性だけで座談をする。これらの構造に、ある種の古さを感じるのは私だけだろうか。さらに座談会の題である「女流歌人はどう変化したか」の「女流」も古い語だと思っていたので、少し驚いた。疑問を感じた論者もいるようで、論の中で山田富士郎は次のように述べている。

(続く)


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