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『柊と南天』6号

地下ふかく生命体のあることを 預かりものを返す日が来る 永野千尋 不穏な印象の一連から。何となく核廃棄物処理のようなことを想像した。地下深くに存在する生命体を脅かし、地上にも影響を与えずにはおかない。そんな預かりものを返す日が来る。しかし、どこへ?

かみさまはどなたでもよい ぽたぽたと零れる地図を素手で支えよ 永野千尋 救ってくれるならどんな神様でもいい。人間の都合で国境線が引かれた地図を神の手で支えてほしい。現実には違う神を信じる者、違う地図を持つ者が殺し合う。「ぽたぽたと零れる」がいい。

Tシャツが茜色 ねえこの夏が何回だって来ればいいのに 乙部真実 二句の句割れは、誰かに呼びかけるように、間を空けて読みたい。茜色は夕焼け色。夏が終わりかけていることを暗示する。同じ夏に何回も来てほしい。現実には時はすべるように通り過ぎていくのだが。

2023.11.15. Twitterより編集再掲


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