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角川『短歌年鑑』令和6年度

①中島裕介「作品点描4」
反吐まみれのシドとナンシー知らざりし正気は鈍器わが手に重い 川本千栄 〈「正気は鈍器わが手に重い」のは現代の我々に共通する感覚でもあろう。〉
 4首あげて、評をいただきました。感謝です!この歌は『短歌研究年鑑』でも引かれました。

②中島裕介「作品点描4」
国境の橋潰えたり橋わたるとは大勢のひとが死ぬこと 小林幸子
〈橋は本来、生のために築かれるが、軍が橋をわたるとき、それは「大量の」死をまねく。橋というモノの二義性を描出している。〉
 この小林の歌は最新の歌集『日暈』に収録されており、歌集中でもとても印象深かった。私も最近十首評を書いてこの歌を鑑賞した。私は「ひと」が橋を渡って逃げたと取っていたのだが、中島の評を読んで、「軍」が橋を渡って街へ入った、と取る方が映像的に説得力があると思った。時間的なあとさきの問題かも知れないが。

③川本千栄「作品点描6」(し~た)21人の方の作品を鑑賞しました。 たくさんの良い歌に出会えました。
流星の降る夜降らぬ夜 筆箱のなかの草地をジョバンニが駆ける 鈴木加成太
眼にもラップをかけて野菜室の林檎のかげで眠る毎日 立花開

④「結社はどこへ向かうか」
とても興味深い座談会だった。結社に属する者として引き込まれて読んだ。最近思うのは結社とひとまとめに言っても、共通点もあれば相違点もある。その相違点については結社に属している歌人同士でも知らないことが多いのではないか。結社の規模にも左右されるとこれを読んで思った。はたから見たら微差なのかも知れない。
佐伯裕子〈当時は、全員新仮名遣いでした。戦後の短歌は新仮名でなきゃいけないっていうふうに。〉
 これは「未来」の話だが、「塔」も一緒。戦後は新仮名だけだった。こんな共通点を読むと和む。

2024.1.6. Twitterより編集再掲

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