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移動式実家。 ロンドン、Kings Cross編

実家が移動する。実家はどこか。

18歳の時母がイギリスに拠点を置くことによって私の実家と呼べる場所がロンドンになりました。それまで実家と呼んだ家は空っぽになり、訪ねても、もう実家とは呼べない、なんだか心にぽっかり穴が空いた気がして悲しい気持ちになったことを思い出します。

実家がずっと同じ人もいれば、実家が転々とする人もいる。

私の実家は後者でした。

もうすでにKings Crossから実家が移動しているので、今だから書けることを書き残していきます。

ロンドンのハブ、Kings Cross

Kings Crossと聞いて、ハリーポッターを思い浮かべない人はいないと思います。一般世界と魔法学校をつなぐ駅がKings Crossは、イギリスのその他の都市、スッコトランドを繋ぐ大きな駅でありながら、観光名所でもある駅。

Kings Cross の真横にはSt Pancras。こちらはヨーロッパとロンドンを繋ぐ駅です。この二つの駅があれば、ロンドン市内、ロンドン郊外、ヨーロッパへの移動が可能になり、個人的には最強の駅だと思います。

そんな駅から徒歩5分の地に私の実家はありました。小さいFlatでしたが、最強の立地。世界が動いていくのを肌で感じられる地です。

現在は再開発が進み、ショッピングが楽しめる施設があったり、Googleのイギリス本社などの大企業参入によって土地の価値が高騰した印象にありますが、それまでは、各地へ行くための移動地点のイメージがある地でした。

Kings Crossでの生活。

ロンドン市内、イギリス郊外、ヨーロッパとどこへでも徒歩5分で行ける最強の立地で大変満足だったし、実際電車を使わなくてもSoho, Covent Garden, Oxford Streetなどロンドン中心地へ歩いて行ける地での暮らしはかなり充実していたと思います。

が、再開発がすすむ前も今も正直治安は悪かったです。昼間と夜間で大きく雰囲気が変わります。

路地裏をはいるとホームレスの方が路上で生活を送っていたり、違法(?)薬物の匂いがプンプン漂っていて、金曜日の夜なんかはベロンベロンに酔った皆さんがいます。

お財布を擦られ、カードを不正利用された思い出もあります。

夜になると部屋の中から、上記に挙げた人たちが大きな声でFxxk Yxx!!! Yxx xxxx! と叫んでる声が聞こえたりして、逆に笑えてきます。

Kings Crossでの思い出。

かなりクセの強い地だったな。と振り返ると治安が悪かった思い出がたくさん蘇りますが、とても素敵な思い出ももちろんあります。

Kings Crossの駅方面には行かず、Bloomsburyの方へと歩いていくと、UCLやSOASといった大学がある学生街になります。カフェや本屋さんが複数あり、私のお気に入りのエリアです。1人で過ごすに丁度いいカフェです。勉強したり、日記を書いたり、読書が捗ったり。

彼と付き合い出した頃デートを沢山したのもこのエリアでした。小さなギャラリーがBloomsburyとSohoの間にはいくつもあったのでそれらをお散歩がてら巡って仲を深めました。

実家での可笑しな思い出は山ほどあります。ユーモアとセンスの塊な父の話はいつも面白く、ロックダウン中は親子3人でゲームやクイズ、映画を見たりする何気ない生活がとても穏やかで平和でした。(外で誰か叫んでても笑い話に)

Kings Crossからの引越し。

フィンランドから戻ってすぐ、Kings Crossから引越しする日が決定しました。もう2年くらい引っ越す引っ越す詐欺を繰り返していた母と父でしたが、いよいよ現実になりました。母がロンドンに来た時点でいつかイギリスの田舎に引っ越すことは決めていたもののなかなか踏ん切りが付かなかったようです。

20年以上この地で過ごした父はなんだかとても寂しそうでしたが、移動に慣れてる母はとても前向きでそのポジティブさに救われました。空っぽになった部屋を見て、再び実家が移動することを実感。18歳の時に感じた寂しさを感じることはなくスッと受け入れられたように思えます。

実家は家族がいるところ。

18歳で実家が移動した時、私の実家は一体どこなのかを悩んだことがありました。長年いたところが帰る場所ではなくなったことがうまく頭の中で処理しきれなかったからかと思います。

実家が移動していくことがきちんと理解できた今、実家は家族(両親)がいるところ家の立ってる地ではないなと思ったりしていて、「実家」という言葉の定義は難しいなと感じます。

どんな環境でも帰る場所があることだけでもありがたいものです。

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