見出し画像

AI時代において医師は目指すべき職業か

1. かつての医師の位置づけと最近の考え方の変化

医師とは、長い間、社会的に尊敬される存在で、高度な知識と技術、そして人間の命を直接的に救う能力を持つことから高い評価を受けてきました。しかし近年では、医師の役割が大きく変わりつつあります。社会的に見ても、医師への尊敬は依然としてありますが、医師が保有する知識やスキルが、情報化社会により一般化してきたことも影響しています。


2. AIの登場による医療環境の変化

AIの技術進歩は、医療界にも大きな影響を及ぼしています。特に診断支援AIは、画像認識技術の発展により、既にある種の疾患については医師と同等、あるいはそれ以上の精度で診断することが可能となっています。しかし、このことが医師の役割を完全に置き換えることにはならない理由がいくつかあります。

a. AIは決定的な診断を下すことは難しい:AIは大量のデータを学習し、パターンを見つけることが得意ですが、それが必ずしも100%正確な診断に結びつくわけではありません。特に稀な疾患や複雑な症例に対する診断は、依然として医師の臨床経験や直感が必要となります。

b. 医療は科学だけでなく芸術でもある:診断は医療の一部に過ぎません。患者とのコミュニケーション、患者の心理的なニーズに対応するなど、医療は科学だけでなく、人間性が求められる芸術でもあります。AIはまだこれらの非科学的な要素を持つ医療行為を理解、実行することはできません。

c. 倫理的な決断は人間が行うべき:医療行為には倫理的な判断がしばしば必要となります。たとえば、ある治療を選択するとき、その治療が患者にとって最善かどうかを判断するのは、技術的な問題だけでなく、倫理的、社会的な問題も含んでいます。これらの決定はAIではなく、人間が行うべきです。

以上のように、AIは確かに診断における助けとなることはありますが、医師の役割を完全に置き換えることはできません。


3. AIによる診断が可能となった後、医師は何に注力すべきか

AIが診断を支援することで、医師は診断にかける時間を大幅に節約することが可能となります。これにより、医師は患者とのコミュニケーションにより多くの時間を費やすことが可能となり、より個別化された治療計画を立てることができます。さらに、AIが診断を担当することで、医師はより専門的な知識を深め、疾患の治療方法の開発、研究に時間を割くことも可能になります。


4. 今後医師になることはメリットが大きいのか

技術の進歩は、医師の役割を変えることはありますが、それが医師の存在価値を下げることにはなりません。事実、AIの導入によって、医師の業務はより人間らしい、つまり患者の気持ちを理解し、対話を通じて最適な治療法を提案するという部分に注力するように変わる可能性があります。AIはまだまだ人間の感情を理解する能力には及びません。そのため、技術の進歩により診断の精度が上がっても、医師が患者と向き合うことの価値は依然として非常に高いです。また、AIが存在しなかった時代に比べ、医師が疾患に対する深い理解を得て新たな治療法を開発することも可能になります。医師には診断だけでなく、新たな治療法の開発や研究にも大きな役割があります。

5. AI時代において「よい医師」になるには

AIの発達により、医師に求められるスキルセットは変化しています。診断能力に加えて、患者とのコミュニケーション能力や、新たな治療法を学び、研究する能力がますます重要となっています。また、AIを効果的に活用するためには、新たな技術に適応し、それを理解し活用する能力も求められます。このような変化を捉えつつ、医師としての基本的な倫理観や、患者への敬意を忘れずに、最善の治療を提供し続けることが、AI時代の「よい医師」になるための条件でしょう。


AIの発展によって医師の役割は確かに変化するでしょう。しかし、その役割の変化は医師の価値を低下させるものではなく、患者への更なる貢献を可能にするものであり、未来の医師には新たなチャレンジが待っていると言えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?