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十六夜荘ノート

 【さよならの夜食カフェ】を読んで、かなり感動したので、同じ作者の違う本も読んでみようといざ図書館へ。

 そこで出会ったのが今回感想を書こうとしている【十六夜荘ノート】という本でした。

ーあれはいざよいだ。十六の夜と書いて、いざよい。昨日の十五夜より少しかけているから、なんだかきまりが悪くて、十六夜はなかなか出てこられない。これから月はどんどん欠けて、益々出てこなくなるんだよ。

『十六夜荘ノート』古内一絵 中公文庫 P.8 L.7-9

 この物語の主人公は、30代の会社員男性です。早くに母親を亡くし、父親は働きに出ている時間が長く、彼は祖父母に育てられました。
寝る間も惜しんで仕事に勤しんでいたある日、彼のもとに、大伯母・玉青が英国で亡くなったことや、その遺言に遺産である【十六夜荘】の相続人として彼の名があるという知らせが舞い込んできます。
 
主人公が生きる現代と、大伯母である玉青が生きた昭和とをクロスオーバーしながら進んでいく物語の中で、大伯母である玉青がどんな人物だったのかや、人と人との間にある愛、そして繋がり、更には、自分自身や家系のルーツというものを主人公は見出していきます。

 この物語を通して、思い込みを捨てて視野を広く持つことが、物事の本質を見抜くために必要なことなのではないかと、私は考えました。

 それから、噂話や偏見という表層の部分に惑わされずに、一人一人の人間に対して、ありのままの個として接すること。

 決めつけて切り捨てるのではなく、その人やものに対して、興味を持って掘り下げてみること。

 そうしたことによって、隠れていた愛情や縁というものに気づくことが出来る。

この物語を読んで、私はそう感じました。

なにかとてつもない困難に直面した時、私たちは視野が狭くなり、自分は孤独で無価値な存在のように思ってしまうことがあります。

 しかし、意外と身の回りには自分を心配してくれている人や、見守ってくれる存在がいるものですし、本人からしたらほんの些細なことでも、相手にとってはものすごく心が救われるような価値のある出来事だったりするんですよね。

私は、かなり小さなことでも気にして落ち込むタイプですし、落ち込むとどんどん視野が狭くなり『自分なんて、どうせ…』と思ってしまう人間なので、そういう時こそ一人で抱え込まないで、幸せだった時を思い出して前へ進もうと思いました。

 では、また。


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