『少年H・上』言えなくなってしまうこと
青い鳥文庫を嗜む
毎週土曜日は、図書館に出かけることにしています。
最近は物語以外にも、経済や歴史、生活の知恵だったりと、いろいろなジャンルにも興味が湧いてきて、あちこち手を出しています。
先日ふらーっと児童向けのコーナーに入ったところ、絵本やかいけつゾロリなど、懐かしく再開する本たちが勢ぞろいしていて、久しぶりの雰囲気にとてもわくわくとしました。
そんな中でも充実のラインナップを見せてくれたのは、そう、青い鳥文庫。
表紙の主人公と思わしき少年少女がとんでもなく美少女とイケメンになっている。そうかぁ…最近の少年少女はこういう絵に憧れるね。
私もはやみねかおる先生のあのキラッキラしたイラストの怪盗クイーン大好きだったよな…と思い出して懐かしみました。
それはそうと、ここは図書館のため、昔からの本だってきちんと置いてあります。青い鳥文庫の書棚を眺めていると、名犬ラッシーだったりといわゆる昔からの「名作」がしっかりと並んでいることに気が付きました。
そして私、読んでない名作がまだまだたくさんある。
名作っていうと、なかなか取り掛かるのに勇気のいる気がするけれど、児童用の本として出してもらえているのであれば、大人でも気軽に読み始めやすい気がします。
ということで、これからちまちまと読んでいこうかなと思った第一作目がこちら。
妹尾河童著『少年H』
社会が戦争に向かって進んでいき、翻弄されながらも少年H(肇君)が成長していく様子が描かれています。
読んでいて結構気持ちは重くなってしまった。
戦争を題材にしている時点でそれはまぁ当然なのだろうけれども、徴兵から逃れるために、優しく美しかったお兄さんが自死するところなど、まったく美化せず記されていてショックでした。
実際に体験した出来事だけにその状況が生々しい。きっとこんな風に、社会に殺されてしまった人は知らないだけで沢山いたんだろうな。
この話はもちろん、少年時代に書いたものではなく、妹尾河童さんが少年時代を思い起こし描いたものであるから、正直結論ありきだからこそなのでは…?と思ってしまう点はいくつかありました。
それでも、ジャズや映画、これまで親しく交流していた外国人から自分の意志とは全く関係なく切り離されてしまった辛さは、まさに少年時代感じたそのままであったろうし、やるせない腹立たしさをひしひしと感じた。
そして読んでいて、1番印象に残ったのはご近所の方々の社会に対する反応。
あまりにも理不尽で全く意味をなさない横暴な命令にも、「おかしい」とは反応しなくなっている。
おかしいと言いたいのに言えない、という前に、「こういう事をいうと捕まる、ひどい目に遭う」→「そんな事をいうな」→「非国民」の図式が無意識にできて、おかしいとすら感じなくなっていってることが、こわかった。
おそらくこれって、おかしいとすら思わなくなることは今だって存分にあり得る。
命令が出た後ではもう手遅れなんだろうな。
じゃあどうするんだよ!って話ですよね。
全然答えはわかりません。
どれだけ効果があるのか分からないけれど、好きなものに「好き!」ときちんと言って、表明し続けて、その為なら噛みついてでも守り抜く気持ちを持つ事だと思いました。
国民の不断の努力ですかね。
好きなものに好きをし続けるのって、難しいですよね!
下巻も今度読んでみたいと思います。
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