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アルルの太陽、種まくゴッホ

「アルルの太陽」。
私だったら、そう題したかもしれない。
絵画全体を満たす眩い太陽の光は、そのくらい印象的です。

1888年、温暖な南仏のプロヴァンス地方にあるアルルで、フィンセント・ファン・ゴッホにより描かれた「種まく人」。
ゴッホが敬愛していた偉大な師、ジャン=フランソワ・ミレーによる「種まく人」の模写から生まれた作品です。


まず、ミレーの作品がこちら。
岩波書店のロゴマークとしても知られています。

ジャン=フランソワ・ミレー「種まく人」
1850年/メトロポリタン美術館
(画像はアプリ「PINTOR」より保存)


そして、ゴッホの作品がこちら。

色彩がよくわかるもの(上)と、巧みな筆致がわかるもの(下)、二つの画像を貼付しました。

フィンセント・ファン・ゴッホ「種まく人」
1888年/クレラー・ミュラー美術館
(画像はアプリ「PINTOR」より保存)
(画像は添付URLより引用)

それほど大きく描かれていないにも関わらず圧倒的な存在感を放つ太陽と、遠くで黄金色に輝く麦畑、
そして手前に青々と広がる生き生きとした麦畑。
どこに焦点を当てて見ても、"ゴッホの魂がそこにある"と感じます。

そう感じるのは、この絵の中で力強い生命力の大合唱が起きているから。
この溢れんばかりの生命力は、色彩の鮮やかさからももちろん感じられますが、筆触の力強さにこそ表れていると思います。


2021年9月に、東京都美術館で開催されていた「ゴッホ展ーー響きあう魂 へレーネとフィンセント」に足を運び、私はそこで初めてこの作品にお目にかかりました。
実はこの一枚こそが、私の心に火をつけ、「そうだ、アートだ…!」と閃かせた傑作。
この絵が放つ見る者を惹きつける力の強烈さに、文字通り息をのんだのを覚えています。

細やかに、激しく、波打つように、踊るように塗り重ねられてできた表面の凹凸を見て、そこにこそゴッホの絵画への情熱や欲求が込められていると感じました。


彼が弟のテオドルスに宛てて書いた手紙には、彼がその当時身を置いていたアルルの太陽に心を奪われたこと、そしてこの作品においては、輝く麦畑の黄色の諧調とそれを表現する筆触に絵の主役を見いだしたことが書かれています。

彼のみずみずしい感性が、アルルの明るい太陽に刺激を受けて、自然の風景を色とりどりに生まれ変わらせたのでしょう。


最後に、聖書において「神の言葉をまく人」を意味する「種まく人」の姿に、かつて伝道師を志していたゴッホはその時の自分や、はたまた画家としての自分を重ね合わせたように思います。

"画家の道のりは果てしなく、未だ自分は地道に種をまき続けている段階だ、
しかし、アルルの太陽に力強く背中を押され、ひたすら絵を描くことに励んでいる"
という、決意にも似た思いを込めたのではないかなと、私は思っています。

 ◯


初めてアートについての記事を書いてみました。

あくまでも私の鑑賞メモの程度ですが、できる限りアートの魅力を文章いっぱいにしたためて、ささやかにでも伝えられたらという思いでこれからも書いていこうと思います。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました!
(^.^)🌷

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