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薬剤師×まちづくり【京丹後〜豊岡編】

まちに溶け込む薬剤師の先輩=船戸先生の紹介で見学させていただいた京丹後〜豊岡のまちにある素敵な拠点たち。そこには僕が今後目指していくまちづくりにかけがえのないヒントがいくつもありました。

ここでは2021年12月3日に見学させていただいたスペシャルツアー5施設のレポートを掲載します。

ゆう薬局

ツアーはじまりの地は、もちろんゆう薬局さんから。ゆう薬局は京都を中心に現在97店舗を運営する地域の一大グループです。こちらの薬局、船戸先生が取締役を勤めるグループだけあって、面白い取り組みがたくさんありました。
お話しで伺った薬局・イベントは盛りだくさんなのですが、ここでは実際に訪れた2店舗を紹介します。

河辺ゆう薬局

河辺ゆう薬局はまさに地域密着の薬局です。 広く開かれた待合いスペースでは定期的に地域の方を招いた交流会、勉強会が開催されています。また外来調剤では門前のDrとの連携も盛んでした。 お昼休みを長く取られるという門前医の特徴を活かし、その時間で個人宅への訪問薬剤管理も行なっているのだそう。ここでは現在自分が勤めている在宅特化型薬局との差を強く感じました。 まず言われたのは「在宅特化型薬局なんて地方にはない」でした。「ここでは外来の患者さんが次第に病院・薬局に来られなくなって、自然と在宅適応になるんだ」と聞かされ、当たり前のことですが改めて気付かされました。我々のような業態が自然ではないことを。そして同時にそのような、患者さんの変化に沿って柔軟に関わり方を変化させられる薬局像にとても惹かれました。例えば自身が歩けなくなった時、自分がこれまで通っていた病院の先生が家まで来てくれたらどんなに安心だろう…、信頼する薬剤師が薬を届けてくれたらどんなに心強いだろう…と。我々の薬局は在宅特化型薬局として運営されています。それ故に患者さんとの出逢いは、ほとんどが患者さんのご自宅です。初回訪問の挨拶ではじめてこれまでの経緯を聞かされることもあります。患者さんによっては介入時から寝たきりのような状態で我々のことは認識出来なかったり、認知症の方にはいつまで経っても知らない不審者扱いされることも。その点においては河辺ゆう薬局さんのような自然な介入が行える在宅医療はとても理想的だと感じました。(余談ですが、訪問先の患者さん宅の目の前が調剤薬局…なんてこともしばしばあり、なんだか釈然としないこともあったりします。)

峰山新町ゆう薬局

峰山町峰山町ゆう薬局は『InBody』という体組成計のある薬局です。オープンは今年7月。とても新しい薬局です。隣にあるクリニックとの一体感は(もはや敷地n…)大変美しい限りでした。(写真の掲載は遠慮しておきます)
僕は正直InBodyと薬局の親和性についてはほとんど想像ができていませんでした。整形外科の門前ならともかく、ここのクリニックは耳鼻科・皮膚科です。(全然わからない!)
連携先は思わぬ場所でした。そこは管理薬剤師御用達のジム。ジム帰りあるいはジムの前にそこの利用者さんたちが薬局で体組成を測定していきます。意外にもジムにはこんなに立派な体組成計は無いのだそう。薬局業界は現在どれだけ気軽に処方箋なしでも入店していただけるかに奔走中ですが、思わぬ一手に驚かされました。増してや対象がジム利用者なら高齢者ばかりでなく若年層の来局のきっかけになる。しかもその門前は耳鼻科・皮膚科。

患者さんの流れが…逆??
この流れはなかなか作れませんよね…。すごい!

まちまち案内所

まちまち案内所は町の案内所であり、地域コミュニティへの入り口となっています。地元の人やモノ、情報が集まったこの場所では、ゆったりとそれらが混ざり合い、自然と結びついてしまう。繋がれる場所になっているようでした。
どんなに魅力的な地域でも個人的にハードルが高いと感じてしまうのは「ちゃんと地域に馴染めるだろうか」という問題があるから。僕は割とどこでも暮らしていけるタイプ…とは思っていますが、それでもやはり心配はしてしまいます。そんな新規移住者の不安な気持ちが、このコミュニティの入り口によってどれだけ救われるのでしょうか。少なくとも僕はこんな仕組みがあるなら暮らしてみたいと思ってしまいました。

「そうやって移住者やUIターン者、地元で暮らし続ける人々に寄り添ったまちづくr…」
『違うんです。それ嫌いなんです。』

まちまち案内所を紹介してくださった創設者の一人、小林さんはそう言いました。

『寄り添うでもなく、まちづくりでもなく、ただ自分が欲しいものを作っているだけです。』

なるほど、、、咀嚼に時間がかかってしまいましたが、これは大きなヒントになりました。
実は小林さん自身も丹後移住者の一人。引越してきたばかりの自分が欲しかったもの、そしていまやコミュニティの中心にいる自分が現在求めている場所をつくっている。それが結果的に同じような誰かのためになっているけど、そこを目指して歩んできたわけではない。
…そうは言ってなかったかもしれませんが、僕はそのように感じ取りました。僕も「だれも寂しくないまちをつくる」…なんて言ってはいるけど、実は誰よりも寂しがりな自分が将来寂しい思いをしたくないだけだし、自分が一問一答の受け答えから全てを知ったような口振りで健康指導をされたくないから調剤喫茶がやりたいんだと。
小林さん、良い問いをありがとうございました!

実際にこの場所がどんな場所でどんなことが行われているのかはホームページやリンク先の記事で見てみてください♪
町の案内所、移住相談、カフェ、図書館、コワーキングスペース、ミーティングスペース、ものづくりスペース…ワクワク妄想しかありません。

まちまち案内所のショップカード

だいかい文庫

だいかい文庫は兵庫県豊岡市にあるブックカフェ。
ここにある本棚の多くは、まちに暮らすだれかが持ち寄った一箱本棚で作られています。一箱一箱にオーナーさんの個性が垣間見える、そんな図書館であり、また気に入った本があれば(一部は)新書で購入もできる本屋さんでもあります。
運営されているのは、YATAI CAFE-モバイル屋台de健康カフェ-で地域に働きかけを行ってきた家庭医の守本陽一先生。実際に引いて歩いている屋台もこのだいかい文庫に置かれていました。
お仕事の合間を縫って、守本先生にもお時間割いていただき、少しでしたがお話しさせていただけました。ありがとうございました。

YATAI CAFE-モバイル屋台de健康カフェ-で使用されているオリジナル屋台

この日店員をされていたのは看護師のアベさん。彼女も移住者の一人で、熱い想いを抱えてそこにいるようでした。行動力凄まじい彼女の話ももっと聞きたかったのですが、ここに現れた一人のおばあちゃんがこの日のハイライト

「ずっとここが気になっていたの。」
「いつも歩いて通るんだけど勇気がなくて…今日は友達と一緒に来ました。」

そういって入ってくると、同伴したご友人はすぐに帰っていきました。どうやら本当にこの方が勇気を振り絞るために付き添って来てくれた様子。
「なんか若者の世界にこんな年寄りが来てごめんなさいね」と言いながら、おばあちゃんは辺りを見回し、居合わせた方々に話しかけ始めました。
「ここにはどんな方がいるの?」「私もここにいていいの?」
どうやらここへは居場所を求めて辿り着いた様子。帰る場所があっても、一緒に商店街を歩く友達がいても、新しい居場所を求めている人はいるんだなぁ…。それでもどこかに寂しさを感じているのかなぁ…。そんなふうに感じさせられました。
帰り際、滞在時間は10分もなかったと思うのですが、それでもこの場所への感謝を丁寧に伝えながら、おばあちゃんは少し目をうるうるさせて笑顔で帰っていきました。
こんな素敵な出逢いが、このだいかい文庫では日常的に交わされているのでしょうか?偶然にしては出来すぎた、最高に良いタイミングに居合わせられ、僕も幸せでした。
また月に2回ほど行われている居場所の相談室も素敵な取り組みです。今回のおばあちゃんのような方や、まちまち案内所にくる移住者の方など、さまざまな居場所を求める人々にどんな話が繰り広げられているのか…。是非またその機会にも見学がしたいと思いました。

豊岡劇場

守本先生に紹介され、船戸先生に連れてきていただいたのはだいかい文庫から徒歩5分程度のところにあるミニシアター。豊岡劇場です。
1927年(昭和2年)開業のこの劇場は、2012年に一度閉業。その後地元の方々からの熱い支援のもと、クラウドファンディングで有志を募り、2014年に見事復活しました。
丹波地方唯一の映画館であったこともあり、地元の方にとってここはみんなの思い出の地であり、そして今尚地元の映画館として必要とされている場所です。
まちぐるみで自分たちの居場所を作り、守っていく。そしてその場を活用していく。とても大切なことだと思いました。また守るだけではなく、進化させていくことも大切です。ここには伝統的なだけではなく、今っぽいお洒落な雰囲気も漂っていました。

YATAI CAFEとのコラボ写真
守本先生のTwitterより https://twitter.com/lackooon
豊岡劇場HPより https://toyogeki.jp


roots

最後に訪れたのはrootsさん。
ここの働きは僕にとって新しいものでした。
rootsは高校生たちの本気の「やりたい」がみつかる場所であり、その「やりたい」が表現され、伝わる場所でもあります。伝わった想いは地元の仲間・大人達を突き動かしてチームを作る…。ここにはたくさんの高校生主体のプロジェクトがありました。
リアルな大人の社会が高校生の想いを軸にベクトルを形成していく、この力強さは他に見たことがありません。
大人になって少しずつ夢の叶え方が見えてきた…けれど、あの時あの瞬間、あの純粋無垢な自分にこれらが見えていれば…こんな仲間たち、大人たちが一緒にいてくれたら…そう思うのは僕だけではないはず。
「それには進学して大学で専門分野を学んだ方がいいね」…本当に???今この瞬間に動ける何かについてどれだけの議論がされただろう。進学以外の選択肢についてどれだけ視野を広げてからその道を選んだだろう。そう考えてみると今の凝り固まったフツウの進路相談には疑問を感じざるを得ません。
rootsは若者たちの想いに応えて、たくさんの選択肢が見出される場所でした。そしてその中から今自分が出来ること、したいことを選ぶのは自分自身。ここの大人たちは無闇に世の中のセイカイを提示しません。それを決めるのは迷える若者たちの特権だから。シッパイをさせないことが彼らのためになるとは限らないことを知っているからなのだろうと思います。
最後にrootsに集まるたくさんの「やりたい」の中に自分の夢も仲間入りさせていただきました。掲げられた壁一面の夢や希望。見ているだけで思わずニコっとしてしまいます。

rootsに掲げられたたくさんの夢

まとめ

『待つことも必要ですよ』
この日一番胸に刺さった言葉でした。

何もかも巻き込んで、自分事として考え、
自分の価値観で答えらしきものを決めてしまう。
これは僕の悪い癖。耳の痛い言葉でした。

この日得た学びをヒントに、
僕らしいまちづくりを再考してみようと思います。
誰かのためではなく、自分が一番求める未来のために。
そして走り続けようと思います。種をまきながら。
いつかその種が芽吹くのを待とうと思います。

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